ノイズサプレッションフィルタ (オーディオライン / LED照明)

ソリューションガイド

ノイズサプレッションフィルタによるオーディオラインのソリューションガイド

ノイズサプレッションフィルタによるオーディオラインのソリューションガイド 概要

スマートフォンのスピーカーやヘッドホンなどのオーディオライン(音声ライン)からは、無対策のままでは配線から電磁ノイズが放射されます。このノイズは内蔵アンテナに干渉して受信感度を低下させてしまうため、一般にノイズ対策としてチップビーズが挿入されます。しかし、チップビーズはノイズ抑制には効果的な反面、オーディオライン用としては音声歪みを起こすという問題をかかえていました。そこで、このソリューションとして、TDKが新たな製品コンセプトにより開発したのが、オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズです。セルラーバンドでのノイズ減衰効果にすぐれるため、受信感度を大幅に改善しつつ、従来の対策部品挿入による音質劣化の問題を解決します。スマートフォンなどに採用されているD級アンプの高調波対策としてもきわめて有効です。

 「オーディオラインのソリューションガイド」まとめはこちらをご覧ください。

オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズのご案内

タイプ \ 寸法L × W mm 1005mm(0402inch) 1608mm(0603inch)
Gタイプ
(セルラー受信感度対策)
MAF1005G MAF1608G
Fタイプ
(D級アンプ高調波対策)
MAF1608F

1.オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズの開発の背景

なぜ、オーディオラインのノイズ対策が重要か?

図1にスマートフォンのオーディオラインのブロック図を示します。スマートフォンでは、スピーカー用のパワーアンプに、デジタルアンプであるD級アンプ(クラスDアンプ)が使われています。D級アンプはスイッチングアンプとも呼ばれるように、スイッチング素子(MOSFETなど)を用いたPWM(パルス幅変調)技術により、オーディオ入力信号をパルス信号に変換して増幅してから、アナログ信号に戻してスピーカーに出力する方式です。しかし、パルス信号は多くの高調波成分をもつため、無対策のままではD級アンプとスピーカーを結ぶ配線がアンテナとなって電磁ノイズが放出され、内蔵アンテナに干渉して受信感度を劣化させてしまいます。いわゆる"自家中毒"問題です。D級アンプは小型できわめて電力効率にすぐれるため、多機能化とともに消費電力が大きくなっているスマートフォンなどにおいては、バッテリ持ち時間を少しでも延長させるために採用されているのです。この受信感度の劣化問題はヘッドホンラインからのノイズによっても発生します。
さらに、オーディオラインにおける従来のノイズ対策は、オーディオ信号波形を歪ませて、音声歪みを起こすという問題もかかえていました。"ハイレゾ"対応のスマートフォンやヘッドホンなど、Hi-Fiオーディオへの関心が高まる中で、オーディオラインにおける受信感度劣化問題と音声歪み問題の双方のソリューションが求められています。

図1:スマートフォンのオーディオラインのブロック図と"自家中毒"問題と音声歪み問題

図1:スマートフォンのオーディオラインのブロック図と
チップビーズによるノイズ対策の問題点

オーディオラインから放射されるノイズを抑制するために、D級アンプの出力段には、一般にチップビーズが挿入されます。これは積層工法などにより、フェライト素体の中にコイルを形成したチップ部品です。チップビーズのインピーダンスは、コイルのリアクタンス成分と交流抵抗成分で表されます。低い周波数領域では主にリアクタンス成分が機能してノイズを反射し、高い周波数領域では主に交流抵抗成分が機能して、ノイズを吸収して熱に変換します。チップビーズの特性に大きく関わるのはフェライトです。大電流が流れる電源系では、交流抵抗成分が大きなタイプのチップビーズが使用されます。スマートフォンのスピーカーラインも比較的大きな電流が流れます。しかし、交流抵抗成分の大きなチップビーズは、音声歪みが大きくなる傾向があり、従来のフェライト材を用いたチップビーズでは、ノイズ除去と音声の低歪み化を両立させることは困難だったのです。

独自の低歪みフェライト材により製品化したノイズサプレッションフィルタ

図2:ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズとチップビーズの特性の比較

図2:ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズとチップビーズの特性の比較

チップビーズでは解決困難な問題を打開するため、TDKでは蓄積した材料設計技術などを駆使し、ノイズ除去特性を維持しながら低歪み化を実現するフェライト材を新開発。さらには、新たな製品コンセプトのもと、スマートフォンなどのオーディオラインのノイズ対策に特化した積層チップ部品を誕生させました。これがオーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズです。
図2にノイズサプレッションフィルタMAFシリーズとチップビーズの特性の比較を示します。ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズは、すぐれたノイズ除去効果と低歪み特性をあわせもつ位置づけのユニークな製品であることがわかります。

用途に応じて最適化したGタイプ、Fタイプをラインアップ

TDKのオーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズは、1608サイズ(L1.6×W0.8mm)のGタイプとFタイプ、1005サイズ(L1.0×W0.5mm)のGタイプを製品化して提供しています(2016年8月現在)。GタイプはLTEなどの主要セルラーバンド(700MHz~2GHz)で高減衰特性をもつ製品で、スピーカーラインやヘッドホンラインに挿入することで、受信感度を大幅に改善させる効果が得られます。Fタイプはスピーカーライン用で、D級アンプの出力段に挿入することで、高調波ノイズの除去にすぐれた効果を発揮します。

2.オーディオラインへの適用ガイド

1   ソリューション①
 受信感度の改善と音声品質の確保

オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズのすぐれた特性と適用例を以下に具体的に示してまいります。図3は、MAF1608FとMAF1608Gをスピーカーライン、MAF1608Gをレシーバー(ヘッドホン/イヤホン)ラインに使用したときのブロック図です。

図3:スマートフォンのオーディオラインへのMAF1608G/1608Fの使用例

図3:スマートフォンのオーディオラインへのMAF1608G/1608Fの使用例

まずセルラーバンドで高減衰特性をもつMAF1608Gの使用効果を図4左に示します。はフィルタなしの場合、はMAF1608Gを挿入した場合の受信感度-周波数特性です。900MHz帯での測定例ですが、フィルタなしの場合とくらべて約8dBも改善されていることが読み取れます。これは図5の挿入損失-周波数特性からわかるように、この周波数帯で挿入損失が大きく(=インピーダンスが高く)なるように最適設計されているからです。

図4:スピーカーラインへのMAF1608Gの挿入効果(受信感度の改善)①
受信感度-周波数特性

図4:スピーカーラインへのMAF1608Gの挿入効果(受信感度の改善)①受信感度-周波数特性

図5:スピーカーラインへのMAF1608Gの挿入効果(受信感度の改善)②
挿入損失-周波数特性

図5:スピーカーラインへのMAF1608Gの挿入効果(受信感度の改善)②挿入損失-周波数特性

このように、MAF1608Gのオーディオラインへの適用は、スマートフォンなどの受信感度劣化問題のソリューションとして、きわめて有効であることがわかります。では、挿入による音声歪みの問題についてはどうでしょうか。
オーディオラインにおける音声歪みの度合は、一般にTHD+N(全高調波歪み+ノイズ:Total Harmonic Distortion + Noise)という数値で表されます。これは高調波による歪み成分とその他のノイズ成分(全高調波歪+ノイズ)が元の信号成分に対して、どれだけの割合を占めているかを表す比率で(単位は[%])、数値が小さいほど音質がよいことを表します。

図6:MAF1608GのTHD+N特性

図6:MAF1608GのTHD+N特性

図6は、チップビーズ(TDK MPZ1608D)とMAF1608Gとの対出力THD+N特性を比較したグラフです(周波数1kHz、負荷RL=8Ω+33μFで測定)。チップビーズでは出力が200mWあたりから、THD+N値が急激に大きくなります。一方、MAF1608Gは1000mWの出力でも、フィルタなしの場合とほとんど変わらない特性となっています。これはスピーカーラインに挿入してもチップビーズのような音声歪みを起こさないことを意味します。また、MAF1608Gの定格電流は1.6Aと大きく、大電流が必要なスピーカーラインに最適です。

直流抵抗(RDC)も重要な特性です。直流抵抗が高いと消費電力は大きくなるうえに、信号レベルも低下してしまうからです。MAF1608Gにおいては、0.06Ω(典型値)という低抵抗を実現しました。このため挿入による音量低下が小さく、またバッテリ持ち時間の延長にも貢献します。

2   ソリューション②
 スピーカーラインへのMAF1608Fの適用

THD+N特性がより顕著なのはMAF1608Fです。図7は、チップビーズ(TDK MPZ1608S)とMAF1608Fとの対出力THD+N特性を比較したグラフです(周波数1kHz、負荷RL=8Ω+33μFで測定)。
チップビーズMPZ1608Sの場合、THD+N値はほぼ1[%]で横ばいですが、MAF1608Fは1000mW近くまで、すぐれた特性を維持しています。
MPZ1608SのSは、使用されるフェライト材のタイプを表しており、S材は一般的なフェライトと似た周波数-インピーダンス特性をもつスタンダードタイプです。
MAFシリーズに採用した新開発の低歪みフェライト材が、すぐれた音声品質の確保に寄与していることがグラフからわかります。
MAF1608FによるD級アンプの放射ノイズの抑制効果を図8に示します。MAF1608Fは100~400MHzの周波数帯で高いインピーダンス値を示すように設計されているため、この周波数帯ですぐれたノイズ抑制効果を発揮します。

図7:スピーカーラインへのMAF1608Fの挿入効果①
対出力THD+N特性の比較

図7:スピーカーラインへのMAF1608Fの挿入効果①対出力THD+N特性の比較

図8:スピーカーラインへのMAF1608Fの挿入効果②
MAF1608FによるD級アンプの放射ノイズの抑制効果

図8:スピーカーラインへのMAF1608Fの挿入効果②MAF1608FによるD級アンプの放射ノイズの抑制効果

3   ソリューション③
 ヘッドホンラインへの適用

図9はヘッドホンラインへのMAF1005Gの適用例です。900MHz帯におけるフィルタなしの場合との受信感度の比較を図10に示します(品番の末尾の三桁の数字はインピーダンスを表します)。フィルタなしの場合とくらべて、受信感度は約6dB改善しています。

図9:ヘッドホンラインへのMAF1005Gの挿入効果①

図9:ヘッドホンラインへのMAF1005Gの挿入効果①

図10:ヘッドホンラインへのMAF1005Gの挿入効果②
受信感度-周波数特性

図10:ヘッドホンラインへのMAF1005Gの挿入効果②受信感度-周波数特性

同じ1005サイズ(L1.0×W0.5mm)のチップビーズ(TDK MMZ1005A)との対出力THD+N特性の比較を図11に示します。チップビーズでは0.2mWあたりが限界で、それ以上、出力を上げるとTHD+N値は急激に増大します。つまり、高音量になると音質の劣化は避けられません。かたやMAF1005Gは数10mWの大きな出力でもフィルタなしの特性と同等です。
対出力THD+N特性をFFTスペクトラム解析したのが図12です。チップビーズの場合、測定周波数(1kHz)の整数倍の高調波が大きく立ち上がっていて、そのTHD+N値は0.035%に及びます。一方、MAF1005Gにおいては、高調波は大幅に抑制され、THD+N値は0.00022%と、ほぼゼロに近い数値となっています。

図11:MAF1005GのTHD+N特性①
対出力THD+N特性の比較

図11:MAF1005GのTHD+N特性①対出力THD+N特性の比較

図12:MAF1005GのTHD+N特性②
FFTアナライザによる周波数スペクトラム解析

図12:MAF1005GのTHD+N特性②FFTアナライザによる周波数スペクトラム解析

まとめ

スマートフォンやタブレットなど、通信機能をもつモバイル機器においては、スピーカー、ヘッドホン/イヤホン、マイクロホンなどのオーディオラインへ挿入されるノイズ対策部品には、受信感度の改善(受信感度低下の原因となるノイズを抑制する)とともに、音質への影響ができるだけ小さいことが求められます。TDKの新製品オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズは、セルラーバンドで高減衰特性をもち、挿入することにより受信感度が大幅に改善されます。また、独自の低歪みフェライト材を用いることで、音声歪みの指標であるTHD+N(全高調波歪み+ノイズ)が、実用出力帯域においてゼロに近い極限まで抑制され、Hi-Fiオーディオなど、高音質が求められる機器に最適なノイズ対策部品となっています。さらにはスマートフォンなどに使用されているD級アンプの高調波ノイズ対策として高い効果を発揮します。
このようにMAFシリーズはチップビーズでは実現できないすぐれた特性をもちますが、オーディオラインではチップビーズでも対応可能な箇所もあります。チップビーズと組み合わせた適材適所の使用により、スマートフォンやタブレットばかりでなく、ポータブルゲーム機などのオーディオラインにおいても、各種のすぐれたソリューションを提供します(図13)。

図13:推奨されるHi-Fiオーディオラインへのノイズ対策部品の適用

図13:推奨されるHi-Fiオーディオラインへのノイズ対策部品の適用
《オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズの主な特長・用途》
【主な特長】
  • 小型で大電流に対応したオーディオライン用のノイズ対策部品
  • 新開発の低歪みフェライト材の採用により、オーディオラインへの挿入時の音声歪みが大幅に低減
  • 低抵抗のため音量低下が小さく、音声歪みの発生が抑制されるため、高音質が求められる機器に最適
  • セルラーバンドで高減衰特性のため、受信感度劣化対策にすぐれた効果を発揮
【主な用途】
  • スマートフォン、タブレットなどのオーディオライン(スピーカー、ヘッドホン/イヤホン、マイク)
  • ポータブルゲーム機のオーディオライン
  • その他

【オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズ】製品情報およびサンプル購入

※お客様の用途に応じたタイプ/品番をお選びいただき、お客様の製品の信頼性向上にお役立てください。

オーディオライン用ノイズサプレッションフィルタMAFシリーズ 製品ラインアップ (2016年8月現在)

品番 寸法 [mm] インピーダンス at 900MHz[Ω] typ. 直流抵抗[Ω] typ. 定格電流 [A] THD+N[1W,1KHz]Resistor:8ohm カタログ
MAF1608GAD471C 1608 470 0.06 1.6 -86dB/0.005%
[231KB]
品番 寸法 [mm] インピーダンス at 900MHz[Ω] typ. 直流抵抗[Ω] typ. 定格電流 [mA] THD+N[10mW,1KHz]Resistor:32ohm カタログ
MAF1005GAD152A 1005 1500 0.55 400 -114dB/0.0002%
[258KB]
MAF1005GAD262A 1005 2600 1.00 300 -114dB/0.0002%
MAF1005GAD352A 1005 3500 1.30 270 -114dB/0.0002%
品番 寸法 [mm] インピーダンス at 100MHz [Ω] typ. 直流抵抗[Ω] typ. 定格電流 [A] THD+N[1W,1KHz]Resistor:8ohm カタログ
MAF1608FAD121C 1608 120 0.085 1.35 -86dB/0.005%
[242KB]
MAF1608FAD151C 1608 150 0.090 1.25 -84dB/0.006%