インダクタ(コイル)

テックノート

漏れ磁束(漏洩磁束)を考慮したパワーインダクタの選定ガイド

パワーインダクタの漏れ磁束を低減する磁気シールド特性

電子機器の電源に使用される小型SMDコイルはパワーインダクタと呼ばれます。その製品の主流は、フェライトのドラムコアに銅線を巻いた巻線型と、金属一体成型タイプの金属コイルです。積層型とくらべて太い銅線を使うことができ、より大電流に対応できます。
磁性体のトロイダルコア(ドーナツ状コア)に巻線して電流を流すと、磁束はコア内部を還流します。このよう磁気回路を閉磁路といいます。棒状やドラム状のコアを用いた場合は、磁束はコア内部から外部に出て、漏れ磁束(リーケージ・フラックス)となり、再びコアに戻るループを描きます。これを開磁路といいます。
電子機器において、インダクタの漏れ磁束が他のコイルや配線パターンなどと磁気結合すると、インダクタンスが変化したり、ノイズの原因となったりします。とりわけ大電流が流れるパワーインダクタでは漏れ磁束も多くなるので、磁束をできるだけ外部に漏らさないような各種の磁気シールド構造が採用されています。
磁気シールドの面から、パワーインダクタは以下のようなタイプに分類されます。

表1 磁気シールドの面からみたパワーインダクタのタイプ
ノンシールドタイプ ドラムコアに巻線しただけで、磁気シールドをほどこさないタイプ。
レジンシールド(セミシールド)タイプ 巻線したドラムコアの周囲をフェライトや軟磁性金属などの磁性粉を混練したレジン(樹脂)でモールドしたタイプ。磁気シールド効果は限定的ですが、コストを低減できるメリットがあります。
フルシールドタイプ ドラムコアの周囲をフェライトのシールドコアで覆うことで閉磁路に近い構造としたタイプ。ただし、磁気シールドは完全ではなく、シールドコアとドラムコアとの接合部のエアギャップや端子部から漏れ磁束が発生します。シールドコアは、リング型、L型など、さまざまな形状があり、構造によって漏れ磁束の強さや分布のほか、コストも異なってきます。
金属一体成型タイプ ドラムコアを用いた巻線型はなく、空芯コイルをつくり、これをバインダ(結合材)と混ぜた軟磁性金属粉に埋設して一体成型したタイプです。エアギャップがないので、フルシールドタイプより漏れ磁束を低減できます。しかし、表面などから、わずかながら漏れ磁束が発生します。

図1 開磁路構造および閉磁路構造のパワーインダクタ

図1 開磁路構造および閉磁路構造のパワーインダクタ

近傍磁界解析によりパワーインダクタの漏れ磁束を3Dグラフィックス化

コストと性能、サイズなどとの兼ね合いで、どのタイプのパワーインダクタを選択するかは、設計者を悩ます問題です。TDKでは、近傍磁界測定システムを用いたパワーインダクタの漏れ磁束の測定と、その可視化により、お客様に最適なパワーインダクタをご選択いただけるようにお手伝いしています。

図2に、そのシステムの基本構成を示します。
DC-DCコンバータの評価ボードに実装したパワーインダクタを、微小ループアンテナを格納した磁界プローブがパワーインダクタ半分の高さで走査し、パワーインダクタ周辺の磁界強度を測定します。得られた時間波形のデータはスペクトラム・アナライザでスペクトラム波形に変換され、これを3Dグラフィックスにしてモニタに表示します。

図2 パワーインダクタ周辺の近傍磁界の測定・可視化システムの構成

図2 パワーインダクタ周辺の近傍磁界の測定・可視化システムの構成

漏れ磁束がきわめて少ない金属一体成型SPMシリーズ

TDKのパワーインダクタの代表的製品であるVLS-EXシリーズ、CLF-NIシリーズ、SPMシリーズの漏れ磁束を可視化した3Dグラフィックスを図3に示します。

図3 TDKパワーインダクタ3製品の近傍磁界の3Dグラフィックス

図3 TDKパワーインダクタ3製品の近傍磁界の3Dグラフィックス

VLS-EXシリーズはレジンシールド(セミシールド)、CLF-NIシリーズはフルシールド、SPMシリーズは金属一体成型のパワーインダクタです。ほぼ同じサイズのもので測定しました。
水平磁界は方向性があり、ループアンテナ面と磁束が直交するときに、ループアンテナの起電力は最大になります。そこで、水平磁界については、プローブを4方向(45°ごと)に回転して、最大電圧を測定しています。
赤い色ほど磁界強度が高く、青い色ほど低いことを表しています。VLS-EX品よりもCLF-NI品、CLF-NIよりもSPM品のほうが、水平方向・垂直方向ともに、磁界強度が低く、漏れ磁束が少ないことがわかります。

パワーインダクタの漏れ磁束対策のポイント

閉磁路構造の磁気シールドタイプであっても、漏れ磁束がないわけではありません。漏れ磁束はコイルの構造に依存します。また、縦巻きコイルでは極性も関係し、信号に対して強めあう方向と、弱めあう方向などで、漏れ磁束の影響は異なってきます。ノンシールドタイプ、セミシールドタイプはもちろん、フルシールドタイプのパワーインダクタでも、周辺の信号ラインの配線には注意が必要です。

慎重に設計してもなお、パワーインダクタからの漏れ磁束による影響が軽減されない場合、次のような対策を試みてください。

  • ●コイルの極性を変えてみる
  • ●配線パターンを変えてみる
  • ●よりシールド効果の高い製品に変えてみる
  • ●より小型の製品に変えてみる(漏れ磁束の影響を小さくできます)
 

TDKの金属一体成型タイプSPMシリーズは、漏れ磁束が少ないパワーインダクタで、信号ライン近傍に配置しなければならない場合や、樹脂ケースの採用などで筐体からのノイズが問題となる場合に適しています。またフルシールドタイプとくらべてコアの組み合わせがない一体成型構造のため、うなり音の低減にも効果的です。
フェライトコアを用いたパワーインダクタは、インダクタンスのバリエーションが広く、高いインダクタンス値まで対応できるのが特長です。量産性にもすぐれ、さまざまな機器に多用されています。
パワーインダクタの各種タイプには、それぞれの持ち味と使用メリットがあります。適材適所に使い分けて、製品づくりにお役立てください。

パワーインダクタ製品一覧

TDKのウェブサイトではコストと性能、サイズなど、様々な条件で製品を検索いただけます。
下記のリンク先から検索パラメータを調整し、最適なパワーインダクタをご選択ください。

製品一覧