Attracting Tomorrow TDK
TDK Developing Technologies

先進のμ-PD法(マイクロ引き下げ法)による形状制御単結晶
単結晶の常識をくつがえす
“スマートクリスタル™/Smart Crystal”

TDKは先進のμ-PD法(マイクロ引き下げ法)による形状制御単結晶製品“スマートクリスタル™/Smart Crystal”を開発しております。この単結晶の育成技術は、東北大学の協力を得てTDKが開発したもので、断面が任意形状の単結晶を、高速・低原料ロス・低加工ロスかつ完成品に近いニアネット・シェイプで育成できるのが特長です。細径化やファイバ化、複数の単結晶のマルチ育成なども可能で、半導体技術やオプトエレクトロニクスのみならず、医療、自動車、計測・検査分野などにおける新たな機能性デバイスの創出など、単結晶の応用可能性を大きく広げます。

μ-PD法によるTDKの形状制御単結晶
“スマートクリスタル™/Smart Crystal”育成技術の特長

CONTENTS

技術背景

エレクトロニクスと結晶工学

歴史的に鉱物の結晶は、エレクトロニクスの発展をもたらす材料として重要な役割をはたしてきました。たとえば、半導体ダイオードのルーツは初期の無線電話やラジオで使われた鉱石検波器であり、また、クォーツ時計は石英(クォーツ)の結晶である水晶の圧電効果を振動子として利用したものです。水晶は二酸化ケイ素(SiO2)を成分とする鉱物で、これを原料として半導体材料のシリコン(ケイ素)が得られます。シリコンが半導体デバイスに不可欠な材料となったのは、99.999999999%(イレブン・ナイン)というきわめて高純度のシリコンを製造する技術と、それを原料としてウエハ用のシリコン単結晶のインゴットを製造する技術とによるものです。単結晶には従来の材料にはない特異な性質を発現するものが多く、エレクトロニクスはじめ、医療や産業など、さまざまな分野での応用が拡大しています。

単結晶の基礎

単結晶、多結晶、非晶質(アモルファス)

固体の物質は、構成する原子や分子の配列の仕方により、配列が規則正しい周期性をもつ結晶と、規則性をもたない非晶質(アモルファス)のものに大別されます。

この規則正しい周期性は、結晶学において空間格子(結晶格子)といいます。空間格子には結晶の種類に応じて、結晶軸と呼ばれる一定の向きがあります。結晶軸がどの部分をとっても同じ向きであるもの、つまり同じ結晶構造が3次元的に連続しているものを単結晶といい、微細な単結晶の粒子が集合した物質を多結晶といいます。たとえば、フェライトなどの電子セラミックスは、多数の単結晶微粒子からなる多結晶体です。

非晶質は構成する原子や分子が不規則に配置した状態をいい、「無(a-)定形の(morphous)」という意味の英語からアモルファス(amorphous)ともいいます。もともとは”形”を意味するギリシャ語の”morpho-”に由来するもので、結晶が形づくられていく結晶成長を研究する学問分野は”モルフォロジー”と呼ばれています。

《原子や分子の配列からみた固体の種類》

単結晶に求められる新機能と応用分野

さまざまな応用に期待がかかる機能性結晶

宝石として珍重されてきたダイヤモンドは炭素の結晶、コランダム(鋼玉)と総称されるサファイアやルビーはアルミナ(酸化アルミニウム)の結晶です。これらは理想的には完全結晶の単結晶のはずですが、実際には空間格子の一部に転移と呼ばれる乱れがあったり、空孔や微小ボイド(空洞)が存在したります。これらを格子欠陥といいます。人工結晶である単結晶は、こうした格子欠陥や不純物を極限まで排除した材料です。

半導体シリコンやガリウム・ヒ素半導体などの化合物半導体が、エレクトロニクスを大きく進化させたように、単結晶とすることで、従来の材料にはないさまざまな新機能が出現することがあります。これらは導電性高分子や超格子材料といった機能性材料の仲間で、機能性結晶などとも呼ばれます。単結晶ならではの光学的特性、電気的特性、機械的特性などを応用した製品・技術は、さまざまな分野で実用化されています。単結晶の主な種類と応用および関連技術分野を表1に示します。

表1 主な単結晶の種類と応用および関連技術分野
単結晶の種類 主な応用 関連分野
光学単結晶 マイクロ波デバイス、光情報通信など
  • オプトエレクトロニクス
  • ICT
  • スピントロニクス
  • 医療
  • ライフサイエンス
  • 環境
  • エネルギー
  • 交通・輸送
  • 産業機器
  • ロボット/メカトロニクス
  • 検査・計測
  • 研究・開発
非線形光学単結晶 医療用レーザ、高輝度ディスプレイ用光源 テラヘルツ利用機器など
蛍光体単結晶 シンチレータ結晶*、高輝度レーザ光源など
圧電単結晶 燃焼圧センサ、超音波プローブ、非破壊検査、アクチュエータ
磁性単結晶 光アイソレータ、光磁石・光磁気記録(カイラル磁性体)など
半導体単結晶 電子デバイス(化合物半導体、ダイヤモンド半導体)など
強誘電体単結晶 全固体化レーザ、波長変換素子など
有機単結晶 ファイバーレーザ、シンチレータ結晶、テラヘルツ波利用機器
金属単結晶 超合金など

*シンチレータ結晶:PET(ポジトロン断層撮影)装置、SPECT(単一光子放射断層撮影)装置、
放射線検出器、資源探査などにおけるシンチレーション検出用単結晶。

μ-PD法の特長と優位性

大口径単結晶の育成法では形状制御が困難

単結晶の製造法は数多くありますが(表2)、大口径のシリコン単結晶などの量産には、液相から育成する融液法の1種であるCz法(チョクラルスキー法)が主流です。

Cz法は引き上げ法とも呼ばれます。原料をるつぼ(坩堝)の中で溶融させ、その融液の表面にワイヤで固定した種結晶(単結晶の小片)を接触させ、ゆっくり回転させながら引き上げて所定の直径のインゴットを得る育成法です。

インゴットの直径を一定に保ちながら単結晶を育成するには、融液の温度、回転速度、引き上げ速度の精密な制御が必要です。また、ウエハ用としての量産には向いていますが、原理的に円筒形のものしかできず、形状を自由に制御することはできません。したがって、所望の形状の単結晶製品を得るには、インゴットを切断・研磨して加工するしかなく、きわめてロスが大きくなります。

プレート状、ロッド状など、断面形状を制御できる単結晶育成法として、EFG法という方法があります。所望の形状の空隙をもつダイ(型)を融液に接触させ、融液の毛細管現象を利用して結晶を引き上げる方法です。しかし、この方法はダイと融液との”濡れ性”がきわめて良好であることが求められ、実用化されているのはサファイアなどの一部の材料にかぎられています。

表2 主な単結晶育成法
気相からの育成法 PVD法(蒸着法、昇華法、スパッタ法)、CVD法など
液相からの育成法 融液法 るつぼの中で固化させる:ブリッジマン法など
るつぼから引き上げる:Cz(チョクラルスキー)法、EFG法など
るつぼから引き下げる:μ-PD法など
るつぼを使わない:ベルヌーイ法、FZ(浮遊帯域溶融)法など
融液法 水溶液法、水熱合成法、フラックス(溶剤)法など
固相からの育成法 再結晶法、高圧合成法、固相エピタキシャル成長法、ゾルゲル法など

従来育成法の限界をブレイクスルーしたμ-PD法

この技術課題をブレイクスルーしたのが、東北大学で研究されていたμ-PD法です。PDとは、”pulling down”の略語で、るつぼ(坩堝)の底にダイ(型)を取り付け、融液をるつぼの底のノズルからダイに濡れ広がらせ、重力方向に単結晶を育成する方法です。μ-PD法においても、るつぼ(坩堝)やダイ(型)と融液との”濡れ性”が重要になります。Cz法とμ-PD法の育成装置の概略図を図1に、それぞれの特長の比較を表3に示します。

図1 Cz法とμ-PD法の単結晶育成装置の概略図
Cz法(チョクラルスキー法)
Cz法(チョクラルスキー法)
μ-PD法(マイクロ引き下げ法)
μ-PD法(マイクロ引き下げ法)
表3 Cz法とμ-PD法の特長の比較
Cz法(チョクラルスキー法) μ-PD法(マイクロ引き下げ法)

長所

  • 大口径単結晶の量産に向く。
  • 結晶歪みが小さい。

短所

  • 作製速度が遅い。
  • 必要な形状を得るには、切断・加工ロスが多い。

長所

  • ダイ(型)の形に応じた自由な断面形状で作製できる。
  • 作製速度が速い。
  • 完成品に近いニアネット・シェイプで作製できるので、切断・加工ロスが少ない。
  • 複数の単結晶を同時育成できる(マルチ育成)。

短所

  • 大口径単結晶の作製には不向き。
  • るつぼ(坩堝)やダイ(型)の材料には、原料融液との最適な濡れ性が求められる。

独自開発の育成装置によるTDKの“スマートクリスタル™/Smart Crystal”

蓄積した生産技術を駆使して開発したμ-PD法単結晶育成装置

TDKでは東北大学の協力のもと、μ-PD法による形状制御単結晶育成技術の開発を進めてきました。μ-PD法の大きな特長は、断面が丸や四角といった形状だけでなく、丸チューブや角チューブなどの中空形状、コの字型や星型などの特殊な断面形状、さらにはファイバ化などにも対応できることです。この先進のμ-PD法とTDKの生産技術を駆使して製造されるのが、形状制御単結晶“スマートクリスタル™/Smart Crystal”です。すぐれた生産性とともに、バラツキを低減した高品質のさまざまな単結晶の育成を実現します。そのサンプル例のいくつかを以下にご紹介いたします(写真1)。

写真1 TDKの形状制御単結晶”Smart Crystal”のサンプル例

自由な断面形状

ロッド状(円柱、角柱)、チューブ状など、自由な断面形状で育成可能
ロッド状(円柱、角柱)、チューブ状など、自由な断面形状で育成可能
角チューブ
角チューブ
コの字断面
コの字断面
星形断面
星形断面

細径・ファイバ化

細長い単結晶、ファイバ単結晶の育成も実現
細長い単結晶、ファイバ単結晶の育成も実現
直径0.06mm・長さ10mmのファイバ単結晶
直径0.06mm・長さ10mmのファイバ単結晶

マルチ育成

複数の単結晶の同時育成が可能
複数の単結晶の同時育成が可能

さまざまな材質

ブラックライト(紫外線)照射により蛍光を発する各種シンチレータ結晶
ブラックライト(紫外線)照射により
蛍光を発する各種シンチレータ結晶
A:サファイア(特殊断面)B:Ce:YAGシンチレータ結晶
A:サファイア(特殊断面)
B:Ce:YAGシンチレータ結晶
A:CNGS電圧結晶 B:YAGシンチレータファイバ結晶
A:CNGS圧電結晶
B:Ce:YAGシンチレータファイバ結晶

まとめ

スマートクリスタル™/Smart Crystalが拓く単結晶利用の新たなステージ

μ-PD法は形状制御を特徴とする単結晶育成技術です。大型バルク結晶を育成して切り出すのではなく、融液成長プロセスにおいて形状制御して、完成品に近いニアネット・シェイプで作製する新技術です。TDKが開発した形状制御単結晶育成技術により作製される“スマートクリスタル™/Smart Crystal”は、ロッド状、プレート状、ファイバ状はじめ、断面が角形や星形など、特殊形状の単結晶を高い生産性とバラツキの少ない品質で実現するのが特長です。スピーディでフレキシブル、かつ無駄のない育成法なので、新機能の探究や応用、次世代の製品開発ほか、測定・検査、研究開発などを強力にサポートします。

サンプル提供およびサンプル作製について

お客様のさまざまなニーズに対応いたします

「こんな形状でも作れるか?」「極細の単結晶は育成できるか?」「利用できる材質は?」など、
ご質問・ご要望にもお応えいたします。下記のお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。

TDKでは先進のμ-PD法による形状制御単結晶育成技術を開発し、お客様のご要望に応える先進の技術とソリューションを提供しております。
さまざまな材質・形状のサンプルもご提供いたします。

サンプル作製までの主な流れ

  1. 1.お客様からのお問い合わせ
  2. 2.お客様との打ち合わせ・確認(材質、形状、スペック、精度など)
  3. 3.お見積もり
  4. 4.サンプル作製、測定・計測
  5. 5.納品
  6. 6.お客様への技術支援など

お問い合わせ先のご案内

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