Attracting Tomorrow TDK
TDK Developing Technologies

磁界共鳴方式の産業機器用ワイヤレス電力伝送技術
移動体へのワイヤレス電力伝送を高効率で実現
ロボットアームなどの回転体にも適用可能

TDKは“未来を引き寄せる”技術の一つとして、ワイヤレス電力伝送技術の開発に取り組んでいます。 無線通信技術やICT技術が情報通信革命を起こしたように、ワイヤレスの電力伝送が普及すれば、産業や社会インフラ、ライフスタイルなどに大革新がもたらされます。

コードレス/無接点で電力を伝送するワイヤレス給電(WPT:Wireless Power Transfer)の利用が、スマートフォンなどのモバイル機器やEV(電気自動車)のバッテリ充電ほか、産業機器の分野でも進んでいます。TDKはQi規格をはじめとする電磁誘導方式のワイヤレス給電とともに、近年、注目を集めている磁界共鳴方式(磁界共振方式)の技術開発にもいちはやく取り組んできました。

本記事でご紹介するのは、各種産業機器や産業ロボット向けとして、TDKが新開発した磁界共鳴方式のワイヤレス電力伝送技術です。1kW、200W、50Wの3つのプラットフォームを取り揃えており、自動搬送車(AGV)やエレベータなどの移動体への電力伝送はじめ、ロボットアームや監視カメラなどの回転体への電力伝送など、用途に応じたフレキシブルなシステム構築を可能にします。電源ケーブルを不要にする産業機器用ワイヤレス給電は、安全・安心な自動充電、作業環境の改善、生産効率の向上、コスト削減などとともに、人が近づけないような過酷環境での電力伝送も可能にします。

TDKの産業機器用ワイヤレス電力伝送技術の特長

ワイヤレス電力伝送技術採用のメリット

CONTENTS

背景 さまざまなワイヤレス給電技術

ワイヤレスで電力を伝送する構想そのものは古くからあり、交流技術の確立などに偉大な業績を残したアメリカの電気工学者N・テスラは、1880年代、電磁波によるワイヤレスの送電実験を追究したことでも知られます。ワイヤレス給電の代表的な方式を表1にまとめました。

表1 ワイヤレス給電の代表的な方式
原理・方式 伝送距離  
非放射型
効率○
距離×
電界結合 電界共鳴 ~数cm  
磁界結合 電磁誘導
~数cm 1990年代頃から多くの分野で実用化。TDKでも開発。
磁界共鳴
~数10cm 2006年にMITで研究論文発表。世界的に開発が進められている方式。
TDKでも開発(本稿で紹介)。
放射型
効率×
距離○
マイクロ波 ~数m  
レーザ ~数m  

※伝送距離は一般的なシステムの例

ワイヤレス給電は電波(マイクロ波)やレーザなどでエネルギーを伝送する放射型と、電界や磁界でエネルギーを伝送する非放射型に大別されます。放射型は遠方まで伝送できるのが利点ですが、漏洩するエネルギーロスが大きく伝送効率があまりよくありません。これに対して、非放射型は基本的にエネルギーロスをできるだけ低減するように設計されるので、放射型とくらべて伝送効率はよいものの、伝送距離に制限があるのが短所です。

非放射型のワイヤレス給電としては、磁界結合型と電界結合型があります。このうち磁界結合型の電磁誘導方式のワイヤレス給電は、1990年代頃から、コードレス電話や電気シェーバ、電動歯ブラシなどのバッテリ充電に広く利用されてきました。電磁誘導方式によりワイヤレスでバッテリ充電して走行する電動バスは、すでに一部で実用化されています。また、スマートフォンなどのモバイル機器のバッテリをワイヤレスで充電する電磁誘導方式(Qi規格など)の充電台パッドや充電スタンドは、さまざまなタイプのものが市販されています。

磁界共鳴方式のワイヤレス給電は、2006年にMIT(マサチューセッツ工科大学)で研究論文が発表され、翌2007年に実証実験が行われたことをきっかけに注目され、世界的に開発が進められている方式です。TDKでは、電磁誘導方式とともに磁界共鳴方式のワイヤレス給電システムの開発もいちはやく進めてきました。

電磁誘導方式から磁界共鳴方式へ

原理・方式 伝送距離  
非放射型
効率○
距離×
磁界結合 電磁誘導
~数cm
  • アンプユニット、送電コイル、受電コイル、受電ユニットなどで構成
  • 低コスト
  • 送電/受電コイルの距離を大きくすると、伝送効率が急激に低下
磁界共鳴
~数10cm
  • 送電側と受電側のそれぞれにコンデンサを挿入してLC共振回路を形成
  • 送電側と受電側の共振周波数を一致させて電力伝送
  • 距離による伝送効率の低下が少ない

電磁誘導方式と磁界共鳴方式の違いを、スイッチング電源などで使用されるトランス(変圧器)の原理をベースとして説明します(図1)。トランスは磁性体のコア(磁心)に1次巻線と2次巻線をほどこした構造のデバイスです。1次巻線と2次巻線は電気的に絶縁されていますが、1次巻線に流される電流(励磁電流)によって発生する磁束変化は、磁性体のコアを通じて2次側に伝わり、電磁誘導作用により起電力が発生して2次巻線に電流(誘導電流)が流れます。

電磁誘導方式

電磁誘導方式のワイヤレス給電は、アンプユニット、送電コイル、受電コイル、受電ユニットからなるシステムで、送電/受電コイル部は、トランスのコアを分断して空隙を設けた構造と同等です。電磁誘導方式のワイヤレス給電は、システムがシンプルなため低コストで実現できるのが長所ですが、送電/受電コイルの距離を大きくすると、伝送効率が急激に低下してしまいます。これはコイルが離れるにつれ、磁束の一部が漏れ磁束(リーケージフラックス)となり、コイル間の磁気的な結合が弱まっていくからです。

図1 光通信ネットワークの構成

図1 トランスと磁界結合方式ワイヤレス給電システムの基本原理

磁界共鳴方式

送電/受電コイルの距離による効率低下を克服する新方式として登場したのが、磁界共鳴方式のワイヤレス給電です。
送電側と受電側の磁気的な結合の度合は、結合係数という数値で表されます。送電コイルおよび受電コイルのインダクタンスをそれぞれL1、L2、相互インダクタンスをMとして、結合係数kは次の式で表されます。

結合係数は0≦k≦1の範囲の値で、漏れ磁束がない理想的な場合は1(=100%の伝送効率)となりますが、コイル間距離が大きくなるほど、またコイルの中心の位置ずれが大きいほど、漏れ磁束は多くなり結合係数は低下してしまいます。
磁界共鳴方式は送電側と受電側のそれぞれにコンデンサを挿入してLC共振回路を形成し、送電側と受電側の共振周波数を一致させて電力伝送する方式で、結合係数が低い状態でも高い伝送効率が得られるのが特長です(図2)。

図1 光通信ネットワークの構成

図2 磁界共鳴方式のワイヤレス給電の基本原理

距離によって伝送効率が低下しにくい磁界共鳴形式

電磁誘導方式と磁界共鳴方式の送電/受電コイル間距離と伝送効率の大まかな関係を図3に示します。40cm角の2つのコイルを対向させて、コイルの相対配置を変えていった場合の比較例です。コイル間距離(Z方向)をしだいに広げていくと、電磁誘導方式ではコイル径の半分ほどの距離で、伝送効率は約40%まで低下していますが、磁界共鳴方式では90%以上の伝送効率を維持しています。
また、コイル間距離を10cmに保ったまま横方向(X方向)にずらした場合、中心位置が20cmのずれで電磁誘導方式では伝送効率は約40%まで低下していますが、磁界共鳴方式では約90%の伝送効率を維持しています。

図3 電磁誘導方式と磁界共鳴方式のコイル間距離と伝送効率の比較

図3 電磁誘導方式と磁界共鳴方式のコイル間距離と伝送効率の比較

電磁誘導方式と磁界共鳴方式は、いずれも磁界結合を利用したワイヤレス給電システムであり、高周波電源を用いて、高周波の磁界の変化を送電コイルから受電コイルに伝えて電力伝送します。高周波の磁界の変化とはいえ、これは電磁波ではありません。磁界の変化が電磁波として放出されるのは、発生源から波長の1/2π(約1/6)の距離以上の遠方界(ファーフィールド)の領域で、それ以下の近傍界(ニアフィールド)では磁界として振る舞い、その強度は距離の2乗に反比例します。電磁誘導方式の電力伝送距離が小さいのはこのためです。

磁界共鳴方式では回路の工夫などにより、コイル径の半分あるいはそれ以上離しても、高効率の電力伝送が可能です。また、磁界共鳴方式は1W未満の小電力から10kW以上の大電力まで、広い伝送電力に対応できるため、ワイヤレス給電の主流方式の1つとして、大きな期待がかけられています。

磁界共鳴方式の技術課題

磁界共鳴方式の最大伝送効率は、結合係数kとコイルのQの積(kQ積)の関数として表されます。結合係数が小さくても、Qを高めることで、高い伝送効率が得られます。これが電磁誘導方式との大きな違いです。
ただし、磁界共鳴方式のワイヤレス給電の実用化にあたっては数多くの課題を克服する必要があります。

コイルのQは、Q=2πfL/Rで表されます(fは共振周波数、Lはコイルのインダクタンス、Rはコイルの抵抗成分)。この式より、コイルの直径を大きくしたり、巻数を増やしたりしてインダクタンスを大きくすれば、原理的にはQは高くなります。しかし、そうするとコイルの抵抗成分も大きくなるため、コイルの設計にあたっては、双方の兼ね合いの中から、コイルの形状や大きさの最適化を図る必要があります。

また、共振周波数の変化への対応も求められます。磁界共鳴方式では、送電/受電コイルを最適な距離に置いたとき、最大の伝送効率が得られます。電磁誘導方式と違って、この距離を小さくすると、かえって伝送効率は低下してしまいます。これは最適距離からずれるにつれ、相互インダクタンスMが変化して結合係数が変わり、共振周波数も微妙にずれていくからです。また、コイルと周辺の物体との浮遊容量も、共振周波数に影響を与えます。

このため、磁界共鳴方式では最大効率を自動的に追従・同調する特殊な回路が必要になり、電磁誘導方式とくらべてシステムが複雑になります。この共振周波数の変動の補償には、さまざまな手法がありますが、コイル設計技術とともに、磁界共鳴方式における最も重要な技術ポイントです。

TDKの産業機器用ワイヤレス給電システム開発ポートフォリオ

ICT、自動車、産業機器・エネルギーを重点3分野として注力しているTDKでは、モバイル機器やEVへのワイヤレス給電とともに、自動搬送車や物流ロボット、移動ロボットなどの産業機器のワイヤレス給電システムの開発も積極的に進めています。TDKのワイヤレス給電システムの開発ポートフォリオを以下に示します。

図4 TDKのワイヤレス給電システムの開発ポートフォリオ

図4 TDKのワイヤレス給電システムの開発ポートフォリオ

産業機器へのワイヤレス給電システムの導入は、次のようなメリットがあります。

TDKでは磁界共鳴方式による産業機器用ワイヤレス給電システム向けとして、出力1kW、200W、50Wの3つのプラットフォームを新開発しました。以下に、それらのシステム構成と特長について概説します。

自動搬送車・物流ロボットなどに最適な1kWシステム

アプリケーション例 ソリューション
自動搬送車(AGV)
  • 交換にともなう手間と時間、交換用バッテリのコスト削減
  • 荷物の搭載などの短い停止時間を利用した逐次充電
  • 伝送距離は20~40mm、ズレ許容±30mm

FA工場の生産ラインや自動倉庫などでは、コンピュータ制御された自動搬送車(AGV)が物品の搬送に多用されています。台車タイプ、リフトアップタイプなど、さまざまなタイプがありますが、いずれもバッテリを搭載して走行するため、頻繁なバッテリ交換(あるいは充電)が必要です。

搬送荷重100kg程度の自動搬送車で、連続使用時間は約8時間程度です。交換にともなう手間と時間ばかりでなく、交換用のバッテリを用意しておかねばならず費用がかさみます。また、クリーンルーム内での人手によるバッテリ交換は、クリーン度を下げるという問題もあります。

自動充電を実現するワイヤレス給電ならば、こうした問題のソリューションとなり、省人化・省時間化というメリットももたらします。また、荷物の上げ下ろしなど、停止時を利用した逐次充電により、搭載バッテリは比較的小容量のものですみ、大幅なコスト削減効果も得られます。

自動搬送車や物流ロボットなどに向けたTDKの1kWシステムの基本構成を図5に示します。送電側システムはアンプユニットとTxコイルユニット、受電側システムはRxコイルユニットと受電ユニットで構成されます。対向するTxコイルとRxコイルの伝送距離は20~40mm、ズレ許容±30mmで、高効率なワイヤレス給電を実現します。受電側システムはきわめてコンパクトなのが特長で、自動搬送車でも特に小型化が要求されるタイプに最適です。

図5 TDKの産業機器用ワイヤレス給電システム(1kW)の基本構成

図5 TDKの産業機器用ワイヤレス給電システム(1kW)の基本構成

移動ロボットなどに最適な200Wシステム

アプリケーション例 ソリューション
産業ロボット
  • 床ケーブル(ケーブル破損)の解消
  • 移動距離の長距離化
  • 送電距離10~30mm、ズレ許容±10mm、システム効率88%

移動しながら作業する産業ロボットなどへのアプリケーションを想定して開発したのは、200Wシステムです。このタイプの産業ロボットでは、床に這う電源ケーブルは作業環境を悪くするとともに、ケーブル破損という問題をかかえています。さらに電源ケーブルでは移動できる距離もかぎられます。

TDKの200Wシステムは、アンプユニットとコイルユニットをコンパクトに一体化させたため、車輪型、キャタピラ型など、さまざまな移動ロボットに適用可能です。送電距離10~30mm、ズレ許容±10mm、システム効率88%を実現しています(図6)。

図6 TDKの産業機器用ワイヤレス給電システム(200W)の基本構成

ワイヤレス給電の移動ロボットは、施設の検査や監視、過酷環境での作業にも適しています。 2014年から2017年にかけて、フランスの国立研究機構(ANR)主催の「ARGOS CHALLENGE」というロボットコンテストが行われました。これは酷寒の極地や不毛な砂漠地帯など、過酷環境で行われる石油・ガスの探査や生産活動に資するための自律型ロボットの開発を目的としたものです。世界から5つのチームが選抜され、日本のTeam Air-Kのロボットには、TDKの200Wワイヤレス給電システムが採用されました(図7)。

図7 「ARGOS CHALLENGE」のロボットに採用されたTDKのワイヤレス給電システム(写真提供:移動ロボット研究所)

ロボットアームなどの回転体用50Wシステム

アプリケーション例 ソリューション
ロボットアーム
監視カメラ
さまざまな回転体
  • ケーブルのねじれ、断線の解消
  • 回転角度の制限解消
  • 接点の摩耗、劣化の解消
  • 金属の近くでも過電流が発生せず、発熱は効率低下を起こさない
  • コイルユニット一体化でシンプルかつコンパクト

50Wシステムは、ロボットアームや監視カメラなど、回転体へのアプリケーション向けに開発したワイヤレス給電システムです。
図8に示すように、電源ケーブルで接続する方式は、ケーブルがねじれたり、シャフトにからまって断線したりするおそれがあり、回転角度に制限がありました。スリップリングを使用することで、この問題は解決できますが、回転体の集電環へ電力を送るブラシの接点部の摩耗・劣化という問題が発生します。

図7 従来方式の回転体への電力伝送システムの問題点

図8 従来方式の回転体への電力伝送システムの問題点

回転体へのワイヤレス給電は、こうした問題のソリューションとなりますが、従来のような方式(図8右)では別の問題が発生します。高周波の磁界によって電力伝送するため、シャフトが金属の場合、渦電流が発生して発熱し、効率を低下させてしまうのです。こうしたさまざまな問題を解決して開発したのがTDKの50W回転体ワイヤレス給電システムです(図9)。

図9 TDKの50W回転体用ワイヤレス給電システム

図9 TDKの50W回転体用ワイヤレス給電システム

その内部構造を図10に示します。送電コイルユニットを搭載した円筒状ケースを、受電コイルユニットを搭載した一回り大きい円筒状ケースでかぶせたような構造となっていて、送電コイルと受電コイルはそれぞれのケースの内壁面に配置されています。このため、ケーブルが巻きつくようなことはなく、回転体へのワイヤレスの電力伝送が可能で、回転角の制限もありません。

また、送電側ケースの内側/受電側ケースの外側には、コイルの磁束を集めるためのフェライトシートが取り付けられています。コイルから発生する磁束は、フェライトシートの内部を閉磁路で還流するため、外部に漏れることがありません。したがって、シャフトが金属製であったり、近くに金属の物体がある場合でも、渦電流による発熱や効率低下といった問題を起こしません。また、回路基板はコイルユニット一体化されているので、シンプルかつコンパクト(外径75mm、高さ45mm)であることも特長です。ロボットアームや監視カメラなど、回転体へのワイヤレス給電システムとして最適です。

図10 50W回転体用ワイヤレス給電システムの内部構造

図10 50W回転体用ワイヤレス給電システムの内部構造

TDK独自開発のワイヤレス電力伝送技術開発

独自開発の低コアロス・フェライトの採用

電磁誘導方式のワイヤレス給電はもとより、磁界共鳴方式においても、その伝送効率には送電/受電コイルのコア材の特性が大きく関わります。コイルが発生する磁束の一部は、コアロスとなり熱として放出されるからです。TDKのコアテクノロジーの原点であるフェライト技術が、ワイヤレス給電システムにも大きく生かされています。

図11に示すように、スイッチング電源のトランスコアなどで多用されるMn-Zn系フェライトは、一般に谷型のコアロス-温度特性を示します、民生機器などでは使用時の温度を勘案して、その温度でコアロスが極小となるようなフェライト材が選択されます。

しかし、ロボットや産業機器では、酷寒や灼熱など、屋外の過酷環境での使用も考慮に入れる必要があります。そこで、TDKでは独自開発したさまざまな材質から、EV/HEVのDC-DCコンバータのトランスコアなどにも使われているMn-Zn系フェライトPC95材を採用しました。
PC95材は、材料設計の最適化、焼成温度や焼成雰囲気の厳密な管理などにより、きわめて均一で高密度の焼結体を実現し、広い温度範囲できわめてフラットな低コアロス特性をもつフェライトです。産業機器用ワイヤレス給電システムの小型化とともに消費電力の低減にも寄与します。

図11 Mn-Zn系フェライトPC95材のコアロス-温度特性(@100kHz、200mT)

図11 Mn-Zn系フェライトPC95材のコアロス-温度特性(@100kHz、200mT)

共振コンデンサに最適なコンデンサの開発

磁界共鳴方式のワイヤレス給電において、コイルとともに重要な役割をになうのが共振コンデンサです。共振コンデンサとしては、一般にフィルムコンデンサが使われます。耐電圧特性と比較的高い静電容量をバランスよく備え、価格面でも有利だからです。フィルムコンデンサも誘電体の違いにより各種ありますが、共振用としては、PP(ポリプロピレン)を誘電体とするタイプが、tanδ(タンジェントデルタ:誘電正接)が低く、大電流にも対応できるため、特に適しています(表2)。

tanδはコンデンサの性能を示す指標で、その逆数がコンデンサのQ(品質係数)です。コンデンサに加えられた電圧の電流に対する位相差は基本的に90°ですが、誘電損失や電極のインダクタ成分などにより、90°から遅れてきます。この遅れの角度δを損失角といい、三角関数のtan(正接)で表したものがtanδ で、その数値が小さいほど、損失(発熱)の少ないすぐれたコンデンサとなります。PET(ポリエチレン・テレフタレート)のtanδ は0.3~1%程度であるのに対して、PPはそれより1桁ほど小さく、温度変化に対して安定しているのが特長です。

表2 誘電体別フィルムコンデンサの特性比較

誘電体 耐熱性 静電容量の温度特性 tanδ AC破壊電圧 小型化 価格
PET ポリエチレン・
テレフタレート
PP ポリプロピレン
PPS ポリフェニレン・
スルフィド
PEN ポリエチレン・
ナフタレート

◎:すぐれる ○:良好 △:やや劣る

tanδ (誘電正接)が小さいほど、損失(発熱)の少ないすぐれたコンデンサとなる。
PETのtanδ は0.3~1%程度であるのに対して、PPはそれより1桁ほど小さく、
温度変化に対しても安定しているのが特長。

図12 TDKのワイヤレス給電システムを支える要素技術と各種製品

tanδの温度特性の傾向

小型化の面からはMLCC(積層セラミックチップコンデンサ)も、共振コンデンサとして有力な選択肢となります。MLCCは誘電体の違いにより、種類1(温度補償用)と種類2(高誘電率系)に大別されます。種類1のMLCCは、温度による静電容量の変化率やヒステリシス損失が小さく、また周波数特性にもすぐれるため、共振回路、温度補償回路など、高い精度が求められる回路などで使用されます。

近年、種類1のMLCCにおいても、フィルムコンデンサの領域に迫る特性の製品が開発され、車載機器や産業機器において、フィルムコンデンサからの置き換えニーズが高まっています。なかでも、-55~+125℃の温度範囲において、温度係数は0ppm/℃、許容差は±30ppm/℃というきわめて厳格な規格であるC0G特性品が、共振コンデンサとして特に適しています。基板たわみなどへの耐性にすぐれる樹脂電極品や金属端子付き(製品名メガキャップ)への対応も可能です。

産業機器用ワイヤレス給電を支えるTDKの要素技術と製品群

TDKが長年にわたって培ってきた素材技術、プロセス技術、評価・シミュレーション技術などをベースとする各種の要素技術が、ワイヤレス給電システムにも最大限に生かされています。フェライトやコンデンサばかりでなく、バリスタやサーミスタなどの保護素子、電流センサ、リチウムポリマーイオン電池など、さまざまなTDKの電子部品・デバイスが、ワイヤレス給電システムに多用されています (図12)。

図12 TDKのワイヤレス給電システムを支える要素技術と各種製品

図12 TDKのワイヤレス給電システムを支える要素技術と各種製品

まとめ

利便性や安全性、信頼性の向上、自動充電による省人化やコスト低減などの面から、自動搬送車やロボットなどの産業機器の分野においても、ワイヤレス給電システムの導入に期待が寄せられています。TDKでは、さまざまなアプリケーションを想定して、先進のワイヤレス給電システムの構築を可能にする3つのプラットフォーム(1kW、200W、50W回転体用)を新開発しました。

小電力から中電力、大電力まで、用途に応じたさまざまなワイヤレス給電システムを、最適な電子部品・デバイスとともにご提案できるのは、TDKの総合的な技術力ならでの強みです。磁界共鳴方式のワイヤレス給電の可能性を広げるため、TDKはさらなる努力とチャレンジを続けてまいります。本記事でご紹介したTDKの技術・製品により、お役立てできる案件がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

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