TDK Developing Technologies
TDK Developing Technologies

Ag積層型(Agスタック)透明導電性フィルム新開発
省エネ・創エネルギーにも貢献する機能性フィルム

TDKではプラスチックフィルム基材に透明導電膜となるAg合金薄膜を形成したAg積層型(Agスタック)フィルムを新開発しました。ITOフィルムと同等の高透過率を維持しつつ、さらなる低抵抗化を達成するとともに、優れた屈曲性を実現。フレキシブルなディスプレイや照明、ウェアラブル端末の透明電極をはじめ、調光窓(スマートウインドウ)やOPV(有機薄膜太陽電池)など、省エネ・創エネにも貢献できる新タイプの透明導電性フィルムです。

TDKのAgスタックフィルムの特長

CONTENTS

技術背景

ITO代替フィルムの製品化に向けて研究開発が加速

プラスチックフィルム基材に、さまざまな特性を付与した機能性フィルムの需要が拡大しています。なかでも透明でありながら電気を通す性質をもつ透明導電性フィルムは、スマートフォンやタブレット端末のタッチパネルや太陽電池などの透明電極に不可欠の部材として多用されています。

透明導電膜は、透明であることと導電性が高いという2つの性質をあわせもつことが要求されます。しかし、ガラスやプラスチックなど、一般に透明な物質は絶縁体であるように、透明であることと導電性をもたせることは両立しがたいトレードオフの関係にあります。

従来、透明電極材料の主流として使われてきたのは、酸化インジウムにスズを10%程度(重量)ドープしたITO(酸化インジウム・スズ)膜です。ITO膜は可視光領域において透明であることと、比較的導電性が高いことを特長としますが、光透過性を高めるために膜厚を薄くすると、表面抵抗率(シート抵抗)が高くなって導電性が悪くなるというジレンマがあります。たとえば、タッチパネルの用途では90%程度の透過率が求められるため、ITO膜の表面抵抗率を100Ω/sq.以下にするのが困難です。また、ITOの主原料であるインジウムは産地が偏在したレアメタルであり、価格高騰という問題のほか、安定供給面でのリスクも抱えています。透明導電性フィルムの需要が急増する中で、ITO代替の透明電極材料が模索され、製品化に向けた研究開発がますます活発化しています。

透明導電性フィルムのタイプ

Ag薄膜を利用したTDKのソリューション

代替ITO膜としては、レアメタルを使わない酸化物系(酸化亜鉛など)、導電性ポリマー系、グラフェンやカーボンナノチューブ(CNT)などの新素材系などがあります。もう一つは、金属そのものの導電性を利用したタイプです。

ITO膜の限界を克服する新たなソリューションとして、TDKでは金属中で最も導電率が高いAg(銀)に着目しました。Agを利用する方式としては、細いAgワイヤをマトリクス状に基板に形成したメタルメッシュや、針状のAgワイヤをインクに混ぜて基板に塗布・印刷した透明導電性フィルムもありますが、TDKのAgスタックフィルムは基板表面に均一なAg薄膜を形成させるところが大きな特長となっています。

金属の高い導電性は自由電子によるもので、また自由電子は光を内部に侵入させず表面で反射させます。実際、膜厚が約100nm以上のAgの薄膜は、高級な鏡や液晶ディスプレイの反射電極などにも用いられているように、高い光反射性をもちますが、膜厚が20~30nm以下になると、可視光の透過性が高くなり、高い導電率と光透過性を両立させた透明導電膜としての利用が可能になります。こうして開発されたのがTDKのAgスタックフィルムです。

TDKのAgスタックフィルムの特長と優位性

ITO膜と同等の高透過率を維持しつつ抵抗率は10分の1以下に低減

TDKのAgスタックフィルムの膜構造を図1に示します。Agの薄膜が20nm以下にもなると、対策なしでは酸素、水蒸気、熱などにより不安定となり、光学特性や電気特性が劣化してしまいます。そこで、TDKではAg合金材料と透明度の高い独自の保護膜材料を採用、先進のスパッタ法を駆使し、プラスチックフィルム基材の上に、「保護膜/Ag合金膜/保護膜」という積層構造の透明導電膜を形成しました。メタルメッシュやAgワイヤインク方式のような凹凸のある導電膜と異なり、面内均一な連続膜であることが特長です。

また、ナノオーダーで膜厚を最適制御することで、ITOフィルムと同等の高透過率を維持しながら、タッチパネル(タッチセンサ)で用いられるITOフィルムの10分の1以下という低抵抗化を実現しました。さらには、独自の保護膜材料により高い保存信頼性と熱安定性、および優れた繰り返し屈曲性を有するとともに、スパッタ法による面内均一な連続膜は、高い表面平滑性の確保にも大きく寄与しています。

図1 TDKのAgスタックフィルムの膜構造

Cz法(チョクラルスキー法)

Agスタックフィルムの基本特性を表1に示します。全光線透過率90%で表面抵抗値9Ω/sq.が得られており、高透過率と低抵抗とが両立していることがわかります。また、膜表面は非常に平滑のため、ヘイズ値(曇り度)も小さく、非常にクリアな透明性を有しています。さらに、表面が平滑な連続膜構造であるため、40°C90%RHの水蒸気透過率が1.0×10-2[g/m2/day]以下の優れた水蒸気バリア性をも有しています。

表1 Agスタックフィルムの基本特性
表面抵抗値 [ Ω/sq. ] 9
全光線透過率 [ % ] 90
ヘイズ [ % ] 0.5
表面粗さ:Ra [ nm ] < 1.0
仕事関数 [ eV ] 4.7 ~ 5.1
水蒸気透過率 [ g/m2/day ] ≦1.0×10-2

フレキシブルなデバイスにも使用できる優れた耐屈曲性

ITOは結晶性の金属酸化物であり、低抵抗化のために厚膜化すると屈曲性に劣るという短所もあります。図2は繰り返し屈曲性試験の結果を比較したグラフです。ITOフィルムでは屈曲回数が100回を超えるあたりから、膜にクラックが発生して抵抗値が急増していますが、Agスタックフィルムでは10000回まで低い抵抗値を安定して保っているのがわかります。また、AgスタックフィルムはITOフィルムでは困難な屈曲径(Φ)10mm未満を達成しているため、フレキシブルなウェアラブル端末やより複雑な曲面などへの取り付けにも適しています。

図2 繰り返し屈曲特性

Cz法(チョクラルスキー法)

フレキシブルデバイス用電極としてのAgスタックフィルムと、既存のITOフィルムの特性比較を表2に示します。ITOフィルムでは結晶性を高めて特性向上を図るためには、アニール処理(特殊熱処理)が必要とされますが、Agスタックフィルムでは不要です。

表2 AgスタックフィルムとITOフィルムとの特性比較
  Agスタックフィルム ITOフィルム
結晶化条件   結晶化不要 140°C30min
表面抵抗値 [ Ω/sq. ] 9 31
全光線透過率 [ % ] 90 82
b*(黄色味)   1.3 5.5
日射反射率 [ % ] 22 10
遮へい係数 - 0.76 0.90
限界屈曲直径 [ mm ] Φ8 Φ12
繰り返し屈曲係数 [ 回 ] >10000 240

可視光領域で高い透過率、赤外線領域で高い反射率

さらには、図3に示すように、Agスタックフィルムの分光特性は、可視光領域(約380~780nm)で高い透過率を示しながら、赤外線領域では高い反射率を示し、高い遮熱効果を有しています。したがって、窓ガラスや自動車のウインドウやサンルーフなどで電極として用いる場合には、熱線カットによる省エネ効果が得られます。また、透明な配線や透明アンテナなどとしても活用が可能です。

図3 Agスタックフィルムの分光特性
Agスタックフィルムの分光特性
Agスタックフィルムの分光特性

エネルギー分野にも広がる応用可能性

ZEB(ゼロエネルギービル)など、エネルギー分野での利用にも期待

TDKのAgスタックフィルムは、エネルギー分野においても、従来とは異なるさまざまなアプリケーションに適用可能です。たとえば、近年、注目されているZEB(ゼロエネルギービル)/ZEH(ゼロエネルギーハウス)への応用にも期待できます。ZEBとは建築構造や建築材料などの見直しで省エネを推進するとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを積極利用することで、年間の電力消費量をかぎりなくゼロに近づけようというコンセプトの建築物のことです。

調光フィルムをZEBの窓ガラスに利用する調光窓(スマートウインドウ)による省エネも検討されています(図4)。ビルの窓ガラスは主に採光の機能を果たしていますが、可視光だけでなく赤外線も透過してしまうので、室内温度が上昇し、夏季には冷房が必要になります。かといって窓ガラスの面積を減らすと、余計な照明が必要になります。そこで、季節や時間帯、天候などに応じて、採光量をコンロールできるようにするのが調光窓(スマートウインドウ)です。この調光窓に、遮光性を有する透明導電性フィルムを調光フィルムの駆動電極として用いることができます。

Agスタックフィルムは、日射反射率が高いため、遮へい係数を小さくでき、優れた遮熱効果が得られます。そのため、高い可視光透過率や十分に低い低抵抗とともに、優れた遮熱性の実現も可能にしています。

図4 調光窓(スマートウインドウ)のイメージ

調光窓(スマートウインドウ)のイメージ

ZEBではOPV(有機薄膜太陽電池)による窓ガラスでの発電も期待されています(図5)。OPVはプラスチックフィルム基材に発電層となる有機薄膜を形成した新タイプの太陽電池です。発電効率はシリコン系より低いものの、有機薄膜は塗布やスピンコートなどの工法で成膜できるため、低コストで量産できるのがメリット。フレキシブルなフィルムタイプなので、透明導電性フィルムと組み合わせることで、曲面ガラスにも対応できます。

図5 OPV(有機薄膜太陽電池)の基本構造

OPV(有機薄膜太陽電池)の基本構造

TDKのAgスタックフィルムは、有機EL照明などの有機デバイスにおける利用にも適しています。有機EL照明は面発光タイプなので、影ができないという長所に加え、演色性や曲面対応など、LED照明にはない特長を有しており、今後、市場の拡大が期待されています。とりわけ、透明な樹脂基材が用いられるフレキシブルな有機EL照明においては、有機層の水分劣化を防ぐために、高い水蒸気バリア性を有するバリア膜が必要です。さらに、フレキシブル性を確保するためには、屈曲性に優れた透明電極が求められます。TDKのAgスタックフィルムは、優れた水蒸気バリア性や屈曲性などの特長から、有機EL照明などのフレキシブルな有機デバイスの透明電極に用いることが可能です(図6)。

図6 想定されるAgスタックフィルムのアプリケーション例

図6 想定されるAgスタックフィルムのアプリケーション例

まとめ

透明導電膜として多用されているITOは、資源的にも特性的にも限界があり、新たな代替材料が求められています。TDKのAgスタックフィルムは、ITOと同等の高い透過率を維持しながら、ITOの10分の1以下の低抵抗化を実現した製品です。独自の保護膜材料を用いた連続膜構造により、保存信頼性や熱安定性、屈曲性にもすぐれ、フレキシブルなディスプレイやウェアラブル端末や照明、OPV(有機薄膜太陽電池)、調光ガラスや調光フィルム、透明アンテナなど、さまざまなアプリケーションに利用可能です。TDKではさらなる低抵抗化を図った1Ω/sq.品の開発も進めています。

想定される主な用途

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