小型で低消費電力なCO₂ガスセンサ (開発中)
目次
CO₂センシングのニーズの高まり
換気が十分でない部屋に長時間いると、集中力が低下したり、眠たくなったりした経験はないでしょうか。その原因はCO₂にあるのかもしれません。室内でCO₂の濃度が高くなると、頭痛や眠気、倦怠感など人の身体にさまざまな影響を与えることから、CO₂濃度は、空気汚染を評価する指標としても用いられています。ニューヨーク州立大学などが行ったCO₂が人の生産性に与える影響についての研究によると、室内のCO₂濃度が400ppm上昇するごとに、認知機能が20%低下すると報告されています。また、500ppmでのスコアを基準にし、CO₂濃度が2,500ppmまで上昇した場合、意思決定のパフォーマンスは大幅に低下してしまいます。最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるために、空間のCO₂濃度を換気の目安として採用するケースも増えています。また、地球温暖化対策のため、工場や産業機器、自動車などから排出されるCO₂量を検知する機器のニーズも高まるなど、日々の健康から地球規模の問題まで、CO₂のセンシングはますます重要になってきています。
これまでのCO₂センシングの課題
CO₂をはじめ、空気中の化学物質を測定するニーズは高まっているものの、これまでのCO₂センサには技術的な課題が多くありました。一般的なセンサは、気体中に存在する分子の量を光学的に測定する方式のため、センサのパッケージが大きいだけでなく消費電力も高く、高価なために、搭載できる機器が限られていました。また、eCO₂*1を測定するセンサは、小型で消費電力が低いという利点はあるものの、空気中のCO₂を直接測定するのではなく、CO₂に相当する物質の量を測定する方式のため、検出精度が低いという課題がありました。
*1 eCO₂:二酸化炭素相当物。
現在のCO₂ガスセンサの課題
- 光学式センサ:サイズが大きい、消費電力が高い、高価
- eCO₂ベースのセンサ:CO₂の測定精度が高くない
TDKのCO₂ガスセンサの特長と優位性
CO₂ガスセンサのコア技術は新しい材料開発とMEMS*2プロセス技術を使用したセンサチップ、オンボードマイコンとアナログの混合設計を採用した制御回路(ASIC)、TDKのMEMSマイクの技術とプロセスを活用したパッケージ、独自の校正と補正機能を備えたソフトウェアです。
これらの技術により、CO₂ガスの検知(400-5,000ppm)、小型・薄型(5.0×5.0×1.2mm)、低消費電力(1.8mW / 測定サイクル60秒)を実現します。
*2 MEMS:Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)。電気回路と機械要素部品を集積化したデバイスのこと。製品の小型化、低消費電力化を実現する。
✓CO₂を直接検出 | 400-5,000ppm |
✓小型低背 | 5.0×5.0×1.2mm |
✓低消費電力 | 1.8mW(測定サイクル60秒) |
小型CO₂ガスセンサがひらくアプリケーションの可能性
TDKのCO₂センサは、従来の方式と比べて小型化と低消費電力化を実現し、これまで搭載できなかった機器にも応用が可能になります。例えば、気軽に部屋の空気環境を測定できるモバイル空気質モニタや、長距離運転中の安全運転をサポートする車載用空気環境モニタ、スマートビルディングやスマートホームにおいて、CO₂濃度に合わせて冷暖房空調設備(HVAC)をコントロールするシステムなどがあります。将来的には、ウェアラブルデバイスへの展開も期待されています。
温度や湿度に合わせて空調をコントロールするシステムは、いまや一般的なものとなりました。今後、CO₂をはじめとするさまざまなガスセンサが進化することで、さらに高度な空気環境のモニタリングが可能になり、より多くの人の健康維持に役立つことが期待されます。
室内空気質モニタリング(IAQ)
換気システム(DCV)
車室内空気質モニタリング
ウェアラブルデバイス
まとめ
TDKのCO₂ガスセンサは、サイズを大幅に小型化し、低消費電力を実現する製品になります。TDKの薄膜サーミスタを使用したMEMS構造センサ素子、センサを制御するASIC、MEMS構造対応のパッケージ、ソフトウェア技術などを駆使して開発しています。TDKのCO₂ガスセンサは、これまで搭載できなかったさまざまな機器への応用展開が出来ると考えています。TDKはCO₂センサをはじめとするガスセンサ技術のさまざまな応用展開に取り組んでまいります。本記事の製品・技術により、お役立てできる案件がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。