プロダクトオーバービュー高周波用低損失フェライト材 PC200
高周波駆動できるパワー半導体「GaN」の普及にともない、スイッチング電源の高周波化が現実的になってきています。トランス製品にはフェライト材料が使われますが、駆動する周波数によってコアの損失(鉄損)が大きく変わり、トランスの設計のキーポイントとなります。本記事ではGaN用に開発されたPC200材の特徴や使用する際のポイントについてご紹介します。目次
高周波対応材の特徴とラインナップ
TDKの高周波対応のMn-Zn系フェライトはPC95材を量産対応をしています。
PC200材は周波数700kHz~4MHzにおいて低損失、1.8MHz~約2MHzで電力変換能力が最大のフェライト材料です。
例えば、自動車のECUはバッテリ電圧の電圧変動を抑えるために必ずDC-DCコンバータを搭載していますが、EMI対策のためにスイッチング周波数がAM帯を避ける周波数(1.8~2.2MHz)に上がってきています。PC200材はこの様な高周波で駆動させるトランスに最適な材料といえます。p>
*1 周波数範囲は目安です。実機での動作検証が必要です。
*2 PC200は対応できるサイズと数量は問い合わせをお願いします。
高周波の動作時の従来のフェライト材料に対する優位性
材料特性比較
公差指定なき場合は、代表値
PC95 (Mn-Zn) |
PC50 (Mn-Zn) |
PC200 (Mn-Zn) |
||
---|---|---|---|---|
初透磁率 : μi @25℃ | 3300±25% | 1400±25% | 800(Typ.) | |
コアロス @80℃ / kW/m³ |
@500kHz, 50mT | 215 | 80 | 40 |
@1MHz, 50mT | 880 | 480 | 150 | |
@2MHz, 30mT | - | 850 | 160 | |
飽和磁束密度 : Bs(mT) @100℃ | 410 | 380 | 410 | |
キュリー温度 : Tc / ℃ | 215 | 240 | 280 |
Performance Factor (f×B)
Performance Factor (f×B)のグラフから駆動する周波数で使える磁束密度ΔBを算出することができます。
動作磁束密度はコアロス(コアの発熱)に関係します。
動作磁束密度は以下の式で算出されますが、飽和磁束密度もしくはコアロスのどちらかで制限される値が設計値となります。
磁束密度:B 動作電圧:E 巻き数:N コアの断面積:A スイッチのオン時間:τ
フライバック、フォワードコンバータで300KHz以下で動作するものは飽和磁束、LLC共振やフルブリッジなどの磁束密度を第一第三象限で使う回路はコアロスで制限されます。
特に動作周波数が200KHz以上の場合、f×B曲線を参考に動作磁束密度を設定してください。
コアの温度の参考実験
PC200材のフェライトコアは高周波動作の場合において発熱を抑えることが可能です。
材質によって最適動作周波数が変化します。
サーモビュアーによる使用条件別のコア温度比較
Frequency (MHz) |
0.3 | 1 | 2 | |
---|---|---|---|---|
B (mT) |
80 (PC200 : 66) |
50 | 30 | |
f×B (MHz・mT) |
24 (PC200:20) |
50 | 60 | |
PC95 | - | |||
PC50 | ||||
PC200 |
PC200とPC95の温度上昇比較動画
ご視聴にはmyTDKの登録が必要です。
PC200材を使うときの注意点
図6に示すようにPC200材は大きな磁束で動作させた場合にμiで20%、コアロスで130%増加します。
PC200材を用いて製品設計する際は、Hdc=50(A/m)以下でのご使用を推奨いたします。
図7はHdc=50(A/m)を超える事例になります。
①第一第三象限で動作させた場合、片側で超える。
②直流重畳させて超える。