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[2023年07月] プロダクトオーバービューパワーインダクタ VLSシリーズ

パワーインダクタVLSシリーズは、TDKがこれまで蓄積してきた材料技術や製造工法などを駆使して開発した巻線・磁気シールド(樹脂)タイプのインダクタです。大きく分けるとVLS-HBX/HBUシリーズ、VLS-CX/CX-Hシリーズ、VLS-EX/AF/EX-H/EX-Dシリーズの3つに分類でき、それぞれ優れた特徴を持っています。本記事ではその構造や特徴、用途など皆様に役立つ情報を解りやすく解説します。

製品の概要

VLS-HBX/HBUシリーズはコアに金属磁性材料を、VLS-CX/CX-Hシリーズ、VLS-EX/AF/EX-H/EX-Dシリーズはフェライト材料を採用した巻線タイプのインダクタです。
どのシリーズも磁性体入りの樹脂で巻線部分を覆うことにより、漏れ磁束を低減しています。

図1:製品の概要
シリーズ VLS-HBX
VLS-HBU
VLS-CX
VLS-CX-H
VLS-EX
VLS-AF
VLS-EX-H
VLS-EX-D
製品概要 金属磁性材料を使用した
巻線・磁気シールドタイプのインダクタ

金属材料を採用し、
大電流・低RDCを実現
巻線を磁性体入りの樹脂で覆い、
漏れ磁束を低減
フェライト材料を使用した
巻線・磁気シールドタイプのインダクタ

従来品からコア形状を最適化し、
電気的特性を向上
巻線を磁性体入りの樹脂で覆い、
漏れ磁束を低減
フェライト材料を使用した巻線・磁気シールドタイプのインダクタ

最適構造設計により、大電流・低RDCを実現
巻線を磁性体入りの樹脂で覆い、漏れ磁束を低減
特徴 金属コアによる大電流対応
端子に銀電極を採用した小型・低背
HBUシリーズは、
高耐圧仕様で、昇圧回路向け
フェライト材料を使用し、高耐圧を実現
端子に銀電極を採用した小型・低背
CX-Hシリーズは、
125℃保証の車載対応品
金属端子を採用した5~6mm角の中型サイズ
AFシリーズは、音質改善用途向け
EX-Hシリーズは125℃保証、EX-Dシリーズは150℃保証の車載対応品
用途 VLS-HBXシリーズ VLS-HBUシリーズ VLS-CXシリーズ VLS-CX-Hシリーズ VLS-EXシリーズ VLS-AFシリーズ VLS-EX-Hシリーズ VLS-EX-Dシリーズ
スマートフォン
タブレット端末
その他携帯機器
ディスプレイ等の昇圧回路
スマートフォン
タブレット端末
その他携帯機器
スマートフォン
タブレット端末
その他携帯機器
車載用機器(~125℃)
PoCフィルタ
TV、STB、ゲーム機器
その他AV機器
TV、STB、ゲーム機器
その他AV機器
車載用機器(~125℃)
PoCフィルタ
車載用機器(~150℃)
エンジンルーム
PoCフィルタ

製品の構造

VLSシリーズの製品構造は、大きく2つに分けられます。VLS-HBX/HBUシリーズ、VLS-CX/CX-Hシリーズは端子電極構造により小型、薄型化を図っています。
VLS-EX/AF/EX-H/EX-Dシリーズは金属端子を採用し、5mm角、6mm角の中型サイズの製品です。

図2:製品の構造
シリーズ VLS-HBX
VLS-HBU
VLS-CX
VLS-CX-H
VLS-EX
VLS-AF
VLS-EX-H
VLS-EX-D
製品構造
VLS-HBXシリーズ VLS-HBUシリーズ VLS-CXシリーズ
VLS-EXシリーズ VLS-AFシリーズ VLS-EX-Hシリーズ

製品の特徴

VLS各シリーズの特徴を図3に示します。VLS-HBUシリーズは金属コアをコーティングする事により高耐圧を実現しています。
VLS-CX-H/EX-Hシリーズは使用温度範囲125℃、VLS-EX-Dシリーズは使用温度範囲150℃に対応した車載向け製品です。

図3:製品特徴一覧
シリーズ VLS-HBX VLS-HBU VLS-CX VLS-CX-H VLS-EX VLS-AF VLS-EX-H VLS-EX-D
外観
VLS-HBX シリーズ
VLS-HBU シリーズ
VLS-CX シリーズ
VLS-EX シリーズ
VLS-AF シリーズ
VLS-EX-H シリーズ
コア 金属 金属+コーティング フェライト
外装樹脂の磁性材料 金属 フェライト 金属
端子電極仕様 銀電極+めっき 金属端子+めっき
捺印仕様/工法 極性/レーザー 極性+L値/レーザー L値/レーザー 極性+L値+製造密番/レーザー
用途
使用温度範囲
(自己温度上昇含む)
-40℃~105℃ -40℃~125℃ -40℃~105℃ -40℃~125℃ -40℃~150℃
特徴 金属コアによる
大電流対応
高さ~1.2mmの低背
金属コアのコーティングによる高耐圧 フェライトコアによる
高耐圧
低RDC
銀電極構造による
小型・低背
0.47~680uHの
幅広いラインナップ
音質改善仕様 金属端子を採用した
5~6mmの中型サイズ
金属系外装樹脂による大電流対応
150℃対応
サイズ 2016~4mm角 252010,252012 2016~4mm角 3~4mm角 5~6mm角 6mm角 5~6mm角 5mm角

車載仕様品では、弊社樹脂シールドインダクタとしては初めての、150℃の高温環境下でも使用可能なVLS5030EX-Dシリーズをラインアップに追加しました。
コアボリュームを最大限に生かした樹脂シールド構造を採用し、また樹脂シールド機能に金属磁性材料を用いることで、同等サイズの弊社フェライトシールドコイルと比べて
優れた電気的特性を実現しています。

図4:車載仕様品VLS5030EX-Dシリーズ

アプリケーション

各アプリケーション回路毎に最適なVLSシリーズを図5に示します。
VLS-HBUシリーズは昇圧型DC-DCコンバータに、VLS-AFシリーズはDアンプのローパスフィルタ回路に適した製品です。
車載グレードのVLS-EX-Dシリーズは、エンジンルームをはじめとした150℃の高温環境下でお使い頂けます。

図5:アプリケーションと製品
アプリケーション DC-DCコンバータ(降圧タイプ) DC-DCコンバータ(昇圧タイプ) Dアンプ ローパスフィルタ
DC-DCコンバータ(降圧タイプ)
DC-DCコンバータ(昇圧タイプ)
Dアンプ ローパスフィルタ
製品シリーズ
VLS-HBX
VLS-CX
VLS-EX
VLS-HBU
VLS-AF
VLS-CX-H (~125℃)
VLS-EX-H (~125℃)
VLS-EX-D (~150℃)

また近年、車体重量や材料コストの低減を目的として、カメラとECUの間で1本の同軸ケーブルに信号と電源を重畳させるPoCが採用されるケースが増えていますが、
VLS-CX-H/EX-H/EX-Dシリーズは、PoCの回路で必要な信号と電源を分離するPoCフィルタとしてもお使い頂けます。

図6:アプリケーション(PoCフィルタ)と製品

製品一覧

各シリーズ、形状毎の製品一覧を図7に示します。タイプ名をクリックすると詳細な情報を見たりサンプルを購入する事ができます。

図7:製品一覧
  • 一般グレード
    一般グレード
  • 車載グレード
    車載グレード
サイズ
(mm)
高さ
(mm)
VLS-HBX VLS-HBU VLS-CX VLS-CX-H VLS-EX VLS-AF VLS-EX-H VLS-EX-D
2.0x1.6 1.0 Max.
VLS201610HBX-1
VLS201610HBX-1
 
VLS201610CX-1
VLS201610CX-1
         
1.2 Max.
VLS201612HBX-1
VLS201612HBX-1
 
VLS201612CX-1
VLS201612CX-1
         
2.5x2.0 1.0 Max.
VLS252010HBX-1
VLS252010HBX-1
VLS252010HBU
VLS252010HBU
VLS252010CX-1
VLS252010CX-1
         
1.2 Max.
VLS252012HBX-1
VLS252012HBX-1
VLS252012HBU
VLS252012HBU
VLS252012CX-1
VLS252012CX-1
         
3.0x3.0 1.0 Max.     VLS3010CX-1          
1.2 Max.
VLS3012HBX
VLS3012HBX
 
VLS3012CX-1
VLS3012CX-1
         
1.5 Max.     VLS3015CX-1 VLS3015CX-H        
4.0x4.0 1.2 Max.
VLS4012HBX
VLS4012HBX
  VLS4012CX-1          
1.5 Max.       VLS4015CX-H        
2.0 Max.       VLS4020CX-H        
5.0x5.0 3.0 Max.               VLS5030EX-D
4.5 Max.        
VLS5045EX
VLS5045EX
 
VLS5045EX-H
VLS5045EX-H
 
6.0x6.0 4.5 Max.        
VLS6045EX
VLS6045EX
VLS6045AF
VLS6045AF
VLS6045EX-H
VLS6045EX-H
 

パワーインダクタとは?

パワーインダクタとはDC-DCコンバータなどの電源回路で使用されるインダクタのことで、パワーコイル、パワーチョークなどと呼ばれることもあります。インダクタは自己誘導作用によりエネルギーを蓄える性質をもっており、チョッパ方式のDC-DCコンバータなどは、このインダクタとスイッチング素子を組み合わせることにより、電圧の変換を行っています。(図8参照)
インダクタは工法によって積層タイプ、薄膜タイプ、巻線タイプに分けられますが、パワーインダクタには大電流を流せる巻線タイプが主流で、これにフェライトや軟磁性金属のコアを組み合わせた様々な製品があります。また小型、薄型化が可能な積層タイプ、薄膜タイプも近年では大電流化が進んできています。

図8:DC-DCコンバータ(チョッパ方式・降圧型)とインダクタ

デューティ比(スイッチング周期に対するON時間の比)
の設定により必要な電圧に降下させる。

スイッチングを繰り返す