偏心モーターとの違いは? 超薄型ピエゾ(圧電)ハプティクスデバイス
振動を使ったハプティクス(触覚技術)・触覚フィードバックなど、VRの活用可能性を広げる薄型振動ユニット、「PiezoHapt™アクチュエータ」
動画 PiezoHapt™アクチュエータ PHUシリーズ イメージ
ハプティクス(Haptics)とは、力や振動などの皮膚感覚フィードバックで情報を伝達するテクノロジーです。
「バーチャル・リアリティ(VR)」という言葉をよく耳にするようになりましたが、VRでは従来の視覚・聴覚だけでなく、タッチ感などの触覚を通じて情報を伝達するハプティクス技術が要求されます。
TDKの PiezoHapt™アクチュエータは、積層圧電素子と振動板から成る薄型振動ユニットで、低電圧駆動ながら多彩な振動パターンに対応することができます。従来、デバイスの振動に用いられてきた偏心モータやリニアアクチュエータ(リニアバイブレータ)と比較して本製品は取付の制約がなく、皮膚感覚を通じたフィードバックを必要とする様々なアプリケーションにご使用いただけます。
消費電力を低減しながら 高効率な振動を実現する、PiezoHapt™アクチュエータの原理と構造
PiezoHapt™アクチュエータは、両面に電極を取り付けたセラミックスの圧電素子を金属板の片面に貼り合わせたユニモルフ構造のアクチュエータです。電極に交流電圧を加えると圧電素子(ピエゾ素子)が伸び縮みするため、接着されている金属板に反りが生じます。それを表したのが以下の図です。印加電圧の向きを交互に変えることで、金属板は山反り・谷反りを繰り返し、振動します。このユニモルフ構造の採用によって、金属板全体が効率よく振動します。
圧電素子には単板のものと積層のものがありますが、PiezoHapt™アクチュエータの圧電素子は積層タイプであるため、同じ厚みの単板タイプの素子よりも大きな変位を生成できます。そのため、一般的に圧電式のハプティクス技術には高電圧が必要なのに対し、TDKのPiezoHapt™アクチュエータは24Vという低電圧でも振動の感覚を皮膚に伝えることができます。
また、素子へのワイヤーによるはんだ接合が不要になったことで、積層素子に負荷が掛からず振幅効率が向上しています。
立ち上がりスピードは偏心モータの1/25、既存のアクチュエータでは対応できない多彩な振動パターンも
偏心モータよりも消費電力量が少なく、リアルタイムで細やかな振動を表現
一般的にバイブレータに用いられるアクチュエータは、偏心モータやリニアアクチュエータです。しかし、これらには応答速度の遅さという共通したデメリットがあります。例えば、ディスプレイを指で撫でると凹凸を感じるようなデバイスを作るには、既存のアクチュエータよりも反応速度が速くなくてはなりません。そのため、より進化したハプティクスの実現には課題を抱えています。
TDKのPiezoHapt™アクチュエータは、圧電の特性から瞬時に反応することができます。以下のグラフは、偏心モータとPiezoHapt™の駆動を比較したものです。偏心モータが立ち上がりまで0.1秒以上かかるのに対し、PiezoHapt™アクチュエータはその1/25のスピードで立ち上がります。
また、偏心モータと比較して短時間の通電で動作することができるため、消費電力量が少ないこともPiezoHapt™アクチュエータの特徴のひとつです。入力する周波数や電圧が高くなれば、それだけ消費電力は大きくなりますが、形成する振動を最適化することによって省電力が実現できます。
以下のグラフで示すように駆動電圧により振幅を変化させることができるPiezoHapt™アクチュエータは、多彩な振動パターンを細やかに表現することが可能です。
これは、設計によって振幅が決まる偏心モータでは不可能なことです。
このような応答のすばやさと振幅の自由な変化によって、PiezoHapt™アクチュエータは指先への振動でのフィードバックを様々なパターンや変位で形成することができ、触覚フィードバックの活用可能性を広げます。
PiezoHapt™アクチュエータは振動を離れた場所まで均一に伝達
偏心モータでは取付位置から離れた場所に振動を伝えることが難しかったのに対し、PiezoHapt™アクチュエータは均一な振動を全体に伝えることが可能になります。この特長により、ディスプレイやタッチパッドの全面に強い振動を伝えることができます。以下のアニメーションは振動の分布を表したものですが、PiezoHapt™ アクチュエータが取付位置の周囲だけでなく、より広い範囲を動かしていることがわかります。均一な振動の形成以外にも、タッチした指先の位置を検出し、その位置によって振動を変えることも可能です。
偏心モータとTDK PiezoHapt™アクチュエータの比較
これらの比較をまとめたものが、以下の表です。圧電式の難点であった駆動電圧の高さも積層素子を使用することによって克服したTDKのPiezoHapt™アクチュエータであれば、偏心モータでは実現できなかったことを可能にし、振動を用いたハプティックフィードバックの活用の可能性がさらに広がります。
偏心モータ | TDK PiezoHapt™アクチュエータ | |
---|---|---|
立ち上がり* | 0.116秒 | 0.004秒以下 |
反応 | 遅い | 速い |
振動の均一性 | 部分的な振動を伝える | 振動させたいエリアを均一に振動 |
変位 | 中 | 大 |
振動のパターン | 単調 | パルス制御で振動を形成 |
消費電力量 | 15mWs | 5mWs |
主な用途
ウェアラブルデバイス、タッチパッド、ディスプレイ、コントローラなど、分野を問わずハプティックフィードバックが求められる様々なデバイスにご使用いただけます。