圧電粉体レベルセンサ TSPシリーズ

かすかな気配に反応する鋭利な感受性

圧電粉体レベルセンサは粉体あるいは粉末と呼ばれる微粒子状の物質で、木粉、鉱物粉、金属粉、樹脂粉、繊維フィラー粉、シリカ微粒子、セラミック微粒子、各種コーティング粉体など、TSPシリーズのセンサ面を損傷あるいは変質させる物質でないかぎり、その「ある・なし」を高精度かつ安定した電圧出力で知らせます*。
* 検知面(ユニモルフ振動子の金属プレート)に銅合金を使用しているため、日本国内においては食品衛生管理法の規定により、検知面に食材が触れる用途には原則的に適用いただけません。

とくにご注目いただきたいポイントは、粒子間に空気を取り込んだ、きわめて軽いふわふわのパウダーでも、その「ある・なし」をしっかり感じ分ける鋭利な感受性です。
微小・軽量パウダーを原料とする塗料、印刷用インク、染料、化粧品などの製造プロセスにおける粉体ストッカーの残量管理など、その他の圧電タイプ残量センサと一線を画す鋭利な感受性は、さまざまなメリットをもたらします。
以下、その感受性に寄与するTDKの技術について、駆動原理、作り込み技術(構造設計)、駆動方式・回路技術の流れに沿って説明いたします。

駆動原理・構造

圧電振動型センサの基本的な駆動原理および構造は、圧電発音体と同様です。円板状の圧電セラミックスを薄い金属板に接着したユニモルフ構造の振動子を採用しています(図2)。

図2 圧電ユニモルフの構造
図2 圧電ユニモルフの構造

圧電ユニモルフの駆動原理

圧電セラミックスにはあらかじめ厚み方向に分極処理を施しているので、図3に示すように、外部から分極方向に電圧が加えられると、素子全体が分極方向に伸縮し、厚みが増減します。もちろん体積は変化しないため、厚み方向(分極方向)に伸長すると分極方向と直角方向(直径方向)に収縮し、反対に厚み方向に収縮した場合は、直角方向に伸長します。

図3 圧電セラミックスの伸縮
図3 圧電セラミックスの伸縮

ところが、圧電セラミックスは金属板に強固に接着されているため、図4に示すとおり直径方向への伸縮はユニモルフ振動子全体をたわませる力となります。
したがって、交流電圧を印加すると、圧電発音体と同様の原理でユニモルフが振動することになります。

図4 圧電ユニモルフのたわみ運動
図4 圧電ユニモルフのたわみ運動

圧電振動型センサへの応用

TDKの圧電粉体レベルセンサTSPシリーズは、後述するように、ふわふわとしたクラウド状態にある粉体がユニモルフの振動面に接触すると、その度合いにより位相特性が変化する現象を利用し、粉体の存在を検知する仕組みです。
周辺支持強度のバラツキは、センサの検知特性に大きく影響するため、接合には弾性シリコン樹脂を使用し、接着幅、接着厚の均一性を高度なレベルで制御しています(図5)。

図5 圧電ユニモルフの保持方法および周辺支持構造
圧電ユニモルフの保持方法
図5 圧電ユニモルフの保持方法および周辺支持構造 圧電ユニモルフの保持方法
周辺支持構造
図5 圧電ユニモルフの保持方法および周辺支持構造 周辺支持構造

圧電ユニモルフの駆動方式

前述したとおり、圧電ユニモルフは圧電セラミックスの両面に全面電極を設け、この両面の電極に外部から交流信号を印加し駆動する他励発振方式です。 また、センサ面の負荷の有無を判別する信号にはユニモルフの位相特性変化を利用しています。
圧電ユニモルフの等価回路とインピーダンス周波数特性を図6に示します。

図6 圧電ユニモルフの等価回路とインピーダンス周波数特性
等価回路
図6 圧電ユニモルフの等価回路とインピーダンス周波数特性 等価回路
インピーダンス周波数特性
図6 圧電ユニモルフの等価回路とインピーダンス周波数特性 インピーダンス周波数特性

Cdは静電容量、Loは等価重量、Coは等価スティフネスの逆数、Roは等価機械抵抗です。周波数特性におけるインピーダンス最小のポイントは等価回路Lo、Co、Roの直列共振点です。
このとき、ユニモルフは、無負荷時に共振点近傍で誘導性を示し、それ以外では容量性を示します。しかし、検知面に加わる負荷が増していくにつれ、その位相特性は徐々に変化し、一定以上の負荷が加わると、全周波数領域にて容量性となります。
そこで、ユニモルフの共振点近傍の位相をチェックし、それが誘導性であればセンサ面は無負荷であり、容量性であれば負荷が加わっていることが明白となり、すなわち、粉体の有無を検知できます(図7)。

図7 紛体量と位相特性の変化
図7 紛体量と位相特性の変化
図7 紛体量と位相特性の変化
図7 紛体量と位相特性の変化

圧電粉体レベルセンサTSPシリーズの駆動回路

TSPシリーズは、掃引発振回路、波形増幅整形回路、位相検出回路、デジタル処理回路などを集積したTDKのカスタムICを搭載し、安定した駆動・ 検知性能を実現しています。
このICは、ユニモルフの共振周波数6kHz近傍を中心に、4~8kHzの帯域を掃引し、ユニモルフからの入力信号が誘導性であるか、容量性であるかを判別。1回の掃引間に誘導性が検知されれば「負荷なし」、誘導性が検知されなければ「負荷あり」とするHigh-Lowレベルの2値を出力します。

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