ソリューションガイド

フィルムコンデンサからMLCC(積層セラミックチップコンデンサ)への置き換えガイド

Vol.3 EVのプラグイン充電システムへの応用 概要

MLCC(積層セラミックチップコンデンサ)の大容量化や高耐圧化などにより、従来、主にフィルムコンデンサが使われていた分野においても、MLCCへの置き換えが可能になっています。とりわけ温度特性にすぐれる温度補償用(種類1)C0G特性のMLCCは、高精度・高信頼性が求められる用途において、大幅な省スペースとともに、さまざまな置き換えメリットをもたらします。
C0G特性は、-55~+125°Cの温度範囲において、温度係数は0ppm/°C、許容差は±30ppm/°Cというきわめて厳格な規格です。TDKのC0G特性・高耐圧MLCCは、C0G特性で1000Vの耐電圧を業界最高クラスの広い静電容量範囲(1nF~33nF)で実現した製品です。ソリューションガイド「フィルムコンデンサからMLCCへの置き換えガイド Vol.2」では、EVのワイヤレス給電システムについて解説しましたが、当面、EVの普及の牽引役になるのは、家庭用AC電源からEV(BEV/PHV)の駆動用バッテリを充電するプラグイン方式であることはまちがいありません。
そこで、プラグイン充電システムの車載充電器(OBC:オンボードチャージャー)におけるフィルムコンデンサからMLCCへの置き換えと、そのメリットなどを中心に解説いたします。

プラグイン充電には車載充電器が必要

HEVとEV(BEV)の違いを図1にまとめてみました。

図1 HEVとEV(BEV)の比較

図1 HEVとEV(BEV)の比較

最も大きな違いはHEVが燃料式エンジンと電気モータを併用して走行するのに対して、EVは電気モータのみで走行するところです。したがって、EVは外部電源から駆動用バッテリを充電するシステムが不可欠です。
バッテリは容量が大きいほど航続距離は延長します。このため、EVのバッテリサイズは大きくなる傾向があります。また、充電時間を短縮するため、バッテリ電圧は高まる傾向にあります。

《EV(BEV)の特徴》

  • バッテリサイズはHEVよりも大きく、航続距離延長のために、さらに大きくなる傾向があります。
  • バッテリ電圧はHEVでは約150~300Vであるのに対して、EVでは約400~600V超の高電圧です。
  • 商用交流からの充電用に、車載充電器が必要です。
  • 数kWの大電力を処理するBMS(バッテリマネジメントシステム)も必要です。
車載充電器の基本構成と役割

EVのプラグイン充電システムには、急速充電と普通充電の2種類があります。高速道路のSA/PAや大型商業施設などに設置されている充電スタンドは急速充電です。高圧受電設備から送られる三相交流を利用しているので、充電時間が短いのがメリットですが、専用の充電インフラが必要になり、コストがかかります。
普通充電は商用交流を利用する方式で、家庭の屋外コンセントなどを利用してEVをケーブルでつないで充電します。急速充電とくらべて時間はかかるものの、充電スタンドに行く手間もなく、いつでも家庭で安く充電できるというメリットがあります。ただし、プラグイン充電においては、交流のままではバッテリを充電できないため、車載充電器によって直流に変換する必要があります。車載充電器の基本構成を図2に示します。

図2 車載充電器(OBC:オンボードチャージャー)の基本構成

図2 車載充電器(OBC:オンボードチャージャー)の基本構成

車載充電器において、商用交流はまずACブロックで整流・平滑されてから、PFC(力率改善・高調波抑制回路)ブロックを経て、DC-DCコンバータに送られます。DC-DCコンバータは入力電圧を適切な出力電圧に変換して、駆動用バッテリを充電する役割を担います。
一般的な電子機器に搭載されているDC-DCコンバータとくらべて、車載充電器のDC-DCコンバータは高電圧で使用され、また航続距離を延長するためにも高い変換効率が求められます。このため、LLC共振型DC-DCコンバータ(以下、LLCコンバータ)を採用するメーカーが増えています。

MLCCへの置き換え事例 LLCコンバータの共振コンデンサ

図3に車載充電器に採用されている電流共振型のLLCコンバータの回路例(フルブリッジ型)を示します。

図3 電流共振型 LLCコンバータの回路例(フルブリッジ型)

図3 電流共振型 LLCコンバータの回路例(フルブリッジ型)

Lr、Lmはトランスの漏れインダクタンスと励磁インダクタンスで、コンデンサCrと共振回路を構成します。2つのインダクタンス(L・L)とコンデンサ(C)からになるので、LLCコンバータと呼ばれます。この回路は共振コンデンサがトランスに直列接続されているため、直列共振型あるいは電流共振型と呼ばれるタイプです。
一般的なDC-DCコンバータは、一定のスイッチング周波数でトランスに送るパルス電流の幅を制御することで、必要な出力電圧を得るPWM(パルス幅変調)方式が採用されています。かたやLLCコンバータは、パルス幅は一定のままスイッチング周波数を制御するPFM(パルス周波数変調)方式です。このため、共振コンデンサにはすぐれた特性が要求されます。

静電容量やtanδのバラツキが少なく、共振コンデンサとして最適

LLCコンバータは、LC共振を利用したPFM方式の電源であるため、トランスとともに共振コンデンサも、きわめて重要な部品となります。車載充電器のLLCコンバータに使われる共振コンデンサには、次のような特性が求められます。

《LLCコンバータの共振コンデンサに求められる特性》

  • 温度特性にすぐれること
    共振回路で用いられるため、温度変化による静電容量変化が小さいことがきわめて重要です。
  • 耐電圧特性にすぐれること
    LLCコンバータは比較的大電力の用途に適した電源ですが、一般の電子機器とくらべて大きな電圧矩形波が印加されるので、高い耐電圧(定格電圧)特性が求められます。
  • ESR特性にすぐれること
    大きな電流が流れるため、すぐれたESR特性も求められます。

従来、車載充電器のLLCコンバータの共振コンデンサとしては、一般的にフィルムコンデンサが使われてきました。耐電圧特性と比較的高い静電容量をバランスよく備えていたからです。しかし、近年、フィルムコンデンサの領域に迫る特性のMLCCが開発され、車載用電子機器において、フィルムコンデンサからの置き換えニーズが高まっています。
MLCCは誘電体の違いにより、種類1(温度補償用)と種類2(高誘電率系)に大別されます。種類1のMLCCは、温度による静電容量の変化率が小さく、また周波数特性にもすぐれるため、高い精度が求められる回路などで使用されます。このうち、温度特性にきわめてすぐれるC0G特性のMLCCが、共振コンデンサとして適しています。フィルムコンデンサとくらべて小型であることも、省スペースのうえでメリットです。

車載グレードMLCC(積層セラミックチップコンデンサ)CGAシリーズ C0G特性/NP0特性

TDKでは中耐圧MLCC(定格電圧100~630V)、高耐圧MLCC(定格電圧1000V以上)などの各種MLCCを車載グレード・CGAシリーズとして提供しています。このうち、定格電圧1000V、温度特性がC0G特性/NP0特性、静電容量が1nF~33nFの製品として、以下のようなタイプを取りそろえています。磁界共鳴式のワイヤレス給電の共振コンデンサほか、時定数回路、フィルタ回路、発振回路など、高精度が要求される用途において、小型化とSMT化を目的としたフィルムコンデンサからの置き換えが可能です。また、さらなる信頼性の向上を目的に、基板たわみによる素体クラック、熱衝撃によるはんだクラックや振動などの外部環境要因に強いメガキャップ(金属端子付き)や樹脂電極品シリーズも取りそろえています。
EVや自動運転など、次世代のオートモーティブの発展の鍵となるのは、バッテリを効率的に充電するワイヤレス給電技術です。磁界共鳴式のワイヤレス給電においては、共振コンデンサの特性が電力の伝送効率に大きく関係してきます。耐電圧1000Vを実現したTDKのC0G特性・高耐圧MLCCは、EVのワイヤレス給電における共振コンデンサとして最適の特性を備えた温度補償用(種類1)MLCCです。またESRがきわめて低いことも、C0G特性・高耐圧MLCCの見逃してはならない重要な要素です。TDKでは耐電圧や静電容量範囲の拡大など、製品ラインアップのさらなる充実を図ってまいります。

シリーズ 外形寸法(L×W) 温度特性 定格電圧 静電容量
CGA6
CGA6
3.2×2.5mm
(EIA 1210)
C0G* 1000V 1nF~22nF
CGA9
CGA9
5.7×5.0mm
(EIA 2220)
C0G、
NP0**
1000V 10nF~33nF

* C0G:–55~+125°Cにおいて、温度係数が0±30ppm/°C以内
** NP0:–55~+150°Cにおいて、温度係数が0±30ppm/°C以内