高信頼性MLCCによるたわみクラック対策 Vol.1
TDKは基板たわみによるショート発生リスクを低減し、機器の信頼性を向上するために設計された高信頼性MLCC 5シリーズを提供しています。本ガイドVol.1では樹脂電極を活用した3シリーズについて紹介します。各シリーズから用途に適合する製品をお選びいただき、製品の信頼性向上にお役立てください。
たわみクラック対策用:高信頼性MLCC 5シリーズ
TDKでは様々な製品に対してソリューションを準備しております。
たわみクラックの主な要因と信頼性への影響
たわみクラックが発生する最も大きな要因は基板たわみ応力によるものであり、基板たわみの要因としては様々なケースが考えられます。
- 製造時の取り扱い:吸着ノズルによる応力、不適切な量のはんだによる応力、MLCCとの熱膨張差が大きい基板による応力、PCB割板時の応力、ビス止めによる応力、過剰な基板曲げによる応力など
- 使用時の取り扱い:落下衝撃による応力、振動による応力など
セラミック素体は圧縮応力には強い一方、引っ張り応力には弱い性質があり、はんだ実装されたMLCCに基板方向から過剰な応力が加わると、素体クラックが発生する要因となります。その際、対向する内部電極が導通すると、ショートモード故障が発生します。
また、クラック発生当初はオープンモードであっても、市場で使用される間にショートモードに進行する危険性があります。ショートモードは異常発熱や発火などを引き起こす可能性があるため、対策が不可欠です。
基板たわみの原因
- 吸着ノズルによる応力
- 不適切なはんだ量
- PCBの割板
- 過剰な基板曲げ、など
たわみクラック対策が効果的なアプリケーション
部品実装からセット組立工程の間に発生した微細なクラックが、市場で使用される間にセラミック素体クラックへ進行する危険性があります。特に、下記のようなアプリケーションでは注意が必要です。
- 常に振動や衝撃にさらされる機器:車載電装機器、鉄道車両用機器、産業機器など
- 落下衝撃が頻繁に起こりえる機器:モバイル機器、スマートキーなど
また、多湿な環境で使用される機器では、結露による水分が素体クラック内部に侵入することで、オープンモードからショートモードに進行する危険性が高まります。
たわみクラック対策が効果的なアプリケーション
| 使用環境 | アプリケーション | |
|---|---|---|
| 常に振動や衝撃にさらされる | 車載、ロボット、鉄道 | アプリケーションガイドはこちら |
| 落下衝撃が頻繁に起こりえる | スマートフォン、スマートウォッチ、スマートキー | |
| 多湿な環境で使用される | 車載、産業機器 |
樹脂電極品
樹脂電極品は端子電極の構造が通常端子品と異なる製品です。通常端子品は銅、ニッケル、スズの3層構造ですが、樹脂電極品は銅とニッケルの間に導電性樹脂層を設けた4層構造となっています。この樹脂層が応力を緩和することでセラミック素体をクラックから守ります。
基板を10mm曲げても素体クラックは発生せず
基板曲げ量10mmの試験では、通常端子品の素体クラック発生率が100%であったのに対し、樹脂電極品では0%でした。樹脂電極品は、基板たわみによる応力を緩和し、MLCCの素体クラックリスクを低減する効果が示されています。
ただし、試験条件は右の図の通りです。
樹脂電極の剥離により素体クラックの発生を抑制
さらに加圧していくと、通常端子品ではセラミック素体にクラックが入ります。一方、樹脂電極品ではニッケル層と樹脂層の剥離が見られますが、素体クラックの発生は見られません。このことから、樹脂電極品には素体クラックを抑制する効果があることがわかります。
10,000回の落下試験でも素体クラックは発生せず(*保証項目ではありません)
モバイル用途を想定して落下試験を行いました。樹脂電極品は10,000回の落下後でも素体クラックは発生せず、衝撃が緩和されていることが解ります。
【樹脂電極品の特長】
- 樹脂電極構造による優れた機械的応力耐性/熱衝撃耐性
- 150℃まで使用可能なX8R/X8L品をラインアップ
- 温度変化やDCバイアスによる静電容量の変化が少ないC0G品をラインアップ
【主な用途】
- バッテリーライン用の安全設計
- 工程内での基板たわみ対策
- 熱衝撃によるはんだクラック対策
- モバイル機器やスマートキーなど、落下衝撃が加わる可能性の高いセット
低抵抗タイプ樹脂電極品
樹脂電極品は、樹脂層により機械的応力が緩和されますが、一方で、ESRなどの抵抗分が上昇するデメリットがあります。このデメリットを抑制するため、端子構造を一新し、抵抗分を抑えた新タイプの樹脂電極品を製品化しました。端子の構成材料は銅、樹脂層、ニッケル、スズで変わりませんが、低抵抗タイプでは、実装面側のみに樹脂層が塗布されています。
実装面側のみに塗布した樹脂層で基板たわみ応力を緩和
本製品の狙いを、基板たわみ応力の観点から説明します。基板たわみにより、基板実装面側にある端子電極下部に応力がかかります。端子電極全面ではなく、応力がかかる部分のみに樹脂層を集中的に塗布することで、応力を緩和します。
端子電極内における電流の通過イメージ
低抵抗タイプの端子構造によるメリットを、端子電極内を電流が通過する際の違いから説明します。従来の樹脂電極品では、樹脂層が端子電極全体を覆うため、電流は必ず樹脂層を通ることになります。樹脂層は銅などの金属よりも抵抗が高いため、通常端子品と比較して、若干ではありますが抵抗分が上昇します。
一方、低抵抗タイプでは、樹脂層を通らずに電流が通過できます。そのため、抵抗分を通常端子品と同等程度に抑えられます。
インピーダンス/ESRの低減
端子構造の違いは、インピーダンス/ESRの周波数特性に反映されます。従来の樹脂電極品(緑)の抵抗値は通常端子品(黒)より高くなっていますが、低抵抗タイプ(青)は通常端子品と同等レベルとなっています。また、共振点(SRF)で比較すると、低抵抗タイプは従来の樹脂電極品よりESRが約60%低減しており、発熱量も同程度低減されることが期待されます(発熱量はESRに比例)。さらに、インピーダンスやESRが通常端子品と同等であることは、通常端子品から変更する際のリスク低減につながり、樹脂電極品への置き換えが促進されることが期待されます。
従来の樹脂電極品と同等の基板たわみ耐性
次に、基板たわみ試験の結果を示します。樹脂電極品では、従来の樹脂電極品と低抵抗タイプのいずれにおいても、基板曲げ量10 mmでもクラックは確認されませんでした。
以上の結果から、低抵抗タイプの樹脂電極品は、たわみ耐性を有しながら、抵抗分を抑えられることが確認されました。
【低抵抗タイプの樹脂電極品の特長】
- 基板実装面側のみに樹脂層を設けることで、電流が樹脂層を通らずに流れるため、電気抵抗を抑えることが可能
【主な用途】
- バッテリーライン用の安全設計
- 工程内での基板たわみ対策
安全設計品
安全設計品は、1素子内に2個のコンデンサを直列に配置した内部構造(2連構造)を持つ製品です。
| 対向する内部電極が交互に積層される | 1素子内にコンデンサ2個を直列に配置した構造(2直構造) |
2直列構造の特長
一般品では、MLCCにクラックが発生すると、クラックが内部電極層を貫通し、内部電極間のショート不良につながる可能性があります。
一方、安全設計品では左側のコンデンサ構造部にクラックが発生した場合でも、2直列構造により右側のコンデンサ構造が残るため、ショートの発生を抑制できます。(下記例)
樹脂電極の採用
さらに、安全設計品は樹脂電極品と同様に、端子電極に導電性樹脂層を設けており、優れた機械的応力耐性・熱衝撃耐性を有します。このように、安全設計品は高信頼性MLCCとして非常に優れた製品です。
安全設計品への置き換え例
バッテリーラインでは、MLCCのクラックによるショートリスクを低減するため、2個のMLCCを直列に実装することがあります。安全設計品は、製品内部の2直構造がこの機能を果たすため、MLCCの員数削減にも貢献できます。
【安全設計品の特長】
- 2直構造により、クラック発生時のショートリスクを低減
- 樹脂電極構造による優れた機械的応力耐性・熱衝撃耐性



