車載充電器アプリケーションのDCリンク用アルミ電解コンデンサ
現在、このようなシステムは、最大800Vの動作電圧で、最大22kWの電力を供給します。OBCの機能は、外部電源からのAC電圧をBMS(バッテリマネジメントシステム)の要件に基づく特定のDC電圧に変換することです。これにより、バッテリーの節約と急速充電を実現することができます。特に、十分な急速充電インフラスがない遠隔地では、EVをより魅力的にするためにOBCが不可欠です。このようなシステムは複雑であるため、バッテリを充電する直流電圧を安定させるために、OBCには一定の静電容量が求められます。
アルミ電解コンデンサは、最大500Vの高定格電圧、最大820μFの大容量、-40℃~105℃の動作温度範囲での高いリプル電流耐量といった主要な要件を満たすことができる魅力的なソリューションです。
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車載充電器のアルミ電解コンデンサの課題
DCリンクコンデンサは、システムの静電容量要件を満たす必要があるだけでなく、OBC の電力密度が着実に向上しているため、継続的に増加するリプル電流にも耐える必要があります。その結果、電力損失が大きくなり、システム全体が過熱され、性能の低下や耐用年数の短縮を引き起こす可能性があります。したがって、競争力を高めるには、DCリンクコンデンサにも接続された冷却システムが必要になります。これらの要件を満たすために、TDKはコンデンサ底面からの冷却を最適化することにより上記全ての特性を完全に兼ね備えた、OBCアプリケーション用の大容量アルミ電解コンデンサB43652*シリーズを開発しました。
熱管理の理由
DCリンクコンデンサを正しく選択するには、いくつかのパラメータに依存します。定格電圧 (VR) は、OBCの動作電圧に起因し、平均+ピークリプル電圧をカバーするものでなければなりません。500V を超えるシステムの場合、コンデンサを直列に接続することが考えられます。定格リプル電流 IR、必要な耐用年数、動作温度範囲は、OBCのミッションプロファイルから生じます。動作温度範囲は、全耐用年数において予想される周囲温度をカバーしなければなりません。
いくつかのの要件は与えられていて、ほとんど変更することはできませんが、一部の特性はサプライヤーまたは顧客のどちらかが最適化することができます。アルミ電解コンデンサの耐用年数は、主にそのコア温度に影響されます。一般的に、高リプル電流、周囲温度の上昇によって、コンデンサが著しく加熱されると、耐用年数が短くなると言われています。アレニウスの式に基づくと、コア温度が10K上昇すると耐用年数が50%短縮すると考えることができます。同じ負荷条件下でコア温度を下げるには、部品のESRを下げ、熱管理を最適化します。TDKは低ESRと全寿命期間における改善された内部熱抵抗の両方を備えた、大型サイズのコンデンサ(B43652*シリーズ)を開発しました。コンデンサの缶底部とヒートシンクの間の熱伝達を効果的に行うにより、耐用寿命を大幅に延長するための高リプル電流耐量を実現しており、お客様はこれらのコンデンサを最大限に活用することができます。経済的な観点からも、このような最適化は、より多くのコンデンサを並列に使用することや、より長い定格寿命を持つコンデンサを設計することと比較しても好ましい方法です。
コンデンサの冷却に関連した内部設計
アルミ電解コンデンサの内部には箔が巻かれており、当然ながら、半径方向より軸方向の熱伝導率の方がはるかに高くなります。B43652シリーズでは、コンデンサ底面からの冷却オプションを得るために、この軸方向の熱伝導率をさらに向上しています。巻線要素と缶底が直で接触していることで、ホットスポットから缶への熱抵抗が減少し、また、缶自体の安定性が向上することで、熱的接続を損なう経年劣化に起因した缶の膨らみが回避されます。一般的なコンデンサのように缶底面に内圧上昇時のガス解放弁を配置するとヒートシンクが弁を塞いでしまうため、弁をコンデンサの側壁に移動させました。TDKの新しいB43652シリーズは、底面冷却オプションを備えたOBCアプリケーションを対象としたサイド弁タイプの大型コンデンサです。
これらの設計変更による改善結果を、図4に示します。標準的な35 x 40 mmコンデンサの場合、軸方向の内部熱抵抗は4.49 K/Wですが、B43652シリーズの改善されたサイドベント設計では0.6 K/Wに低減しています。コアから周囲までの全体的な熱抵抗も、巻回素子と缶底部の接触により、15.1 K/Wから12 K/Wへと20%低減しています。
図5に、自然接続を備えたボトムベント設計(左)と底面冷却を備えたサイドベント設計(右)の熱シミュレーション(温度と熱流束)の比較を示します。
周囲温度85℃でコンデンサ1個当たり1Wを印可すると、非冷却型のコア温度は106~109℃に達します。同じ条件でサイドベント設計と底面冷却を見てみると、ヒートシンク温度が85℃の場合、コンデンサのコア温度は3Kだけ上昇して88℃になります。これは、非冷却型より約20K低い温度で、耐用年数が約200%延びることを意味します。
熱流束シミュレーションを比較すると、底面冷却型(右)では主に缶底部を介して熱が伝達されることがわかります。軸方向に勾配が見られ、PCB 側では熱伝達が弱く、下側では熱伝達が強いことがわかります。非冷却型(左)は反対方向に勾配があり、熱伝達は主にPCBの方向で起こります。したがって、非冷却設計では、底面部を通る熱流束が弱く、さらに中央のコンデンサの熱流束も非対称になります。さらに非冷却型ではコア温度にばらつきがあり、中央のコンデンサが高温になるという熱的非対称性がありますが、底面冷却型にはそのようなばらつきがないため、エスカレーションのリスクが大幅に軽減します。
OBCアプリケーションで達成できる全体的な改善を図6に示します。同じサイズ、定格電圧、定格静電容量の2つのB43652コンデンサを比較すると、底面冷却コンデンサは、自然対流だけの同じ設計と比較して、85%多くリプル電流に耐えることができます。自然対流型コンデンサの最大リプル電流IAC,maxが6.11Aに対し、ベース冷却型は11.28Aに達します。さらに、同じ負荷条件の場合、2つの底面冷却型コンデンサは、4つの非冷却型コンデンサと比較して約2倍長くミッションプロファイルに耐えることができます。
これらの結果から、TDKのB43652*シリーズの大型コンデンサは、底面冷却オプションを備えたOBCアプリケーションに最適化されており、DCリンクコンデンサバンクの個数を大幅に削減できることが明らかで、本シリーズは技術的だけでなく経済的にも興味深いものとなっています。
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シリーズ B43649*とB43652*をクリックすると、詳細情報が得られます。