実装面積が半減する超小型サイズを実現
回路基板の省スペース化と設計自由度の向上をもたらすノイズ対策部品
スマートフォンやタブレットなどの電子機器の高機能化が加速度的に進んでいます。このため、機器に使用される部品点数が増加し、コモンモードフィルタなどのノイズ対策部品の使用数にも増加傾向がみられます。また、これらの機器は高機能化だけではなく小型・薄型化も進んでおり、部品の実装密度の増大が予測されます。さらには、機器設計の自由度向上のためにも、電子部品の小型化要求は、今後ますます高くなってくると考えられます。
TDKでは薄膜工法の改善や内部構造の最適設計により、既存製品(TCM0605シリーズ)の特性を維持しつつ、製品面積が1/2以下(41.5%)という業界最小クラスの超小型薄膜コモンモードフィルタTCM0403Rを製品化しました。
図1 既存製品(TCM0605シリーズ)と新製品(TCM0403R)とのサイズ比較
表1 TDKの薄膜コモンモードフィルタの製品サイズと導体形状の推移
製品サイズ | 1.0x1.25mm | 1.0x0.5mm | 0.65x0.5mm | 0.45x0.3mm |
Line幅 | 1 | 0.67 | 0.56 | 0.28 |
Aspect 比 | 1.0 | 1.2 | 1.0 | 2.8 |
*1 Line幅は1.0x1.25㎜品を1 とした比率で記載
*2 Aspect比
超小型化を実現したTDKの技術と取り組み
既存製品と比べて製品面積が1/2以下という超小型形状の実現のためには、製品設計と工法の最適化が必要不可欠でした。この工法とTDKの取り組みについて紹介します。
(1)コイル導体のファインパターン化
製品面積1/2という技術領域で既存製品と同等の特性を確保するためには、既存製品の2倍以上の導体のファイン化と導体アスペクト比*2が必要となります。TDKの薄膜コモンモードフィルタの過去の製品サイズと導体形状の推移を以下の表に示します。この導体のファインパターン化は、HDDヘッド製造における薄膜技術をベースとしつつ、電子部品に対応したフォトリソグラフィー技術の導入,電気めっき技術の改善などにより実現しました。
(2)ウエハ上で端子電極形成
一般的な受動部品はチップ状態での端子形成が主流ですが、薄膜コモンモードフィルタTCMシリーズなどの薄膜電子部品は、ウエハ上で端子を形成するプロセス・構造を取り入れています。コモンモードフィルタは端子が最低でも4端子となるため、チップ状態での端子形成は、小型化するほど精度の点で課題が多くなります。これに対して、TCMシリーズではウエハ上で端子形成を行う工法を導入しているため、薄膜工法ならではの高精度な端子形成が可能となり、既存製品と比べて製品面積1/2以下という超小型化が実現できました。
このようにTDKでは、先進の薄膜技術の応用により、他社に先行した電子部品の小型化を進めてきました。今後もこうした小型化への取り組みを継続・深化させつつ、機器の小型・薄型・軽量化や高機能化に貢献するとともに、環境負荷軽減にも積極的に対応してまいります。
図2 薄膜コモンモードフィルタTCM0403Rの特性例
既存製品TCM0605G-900と比較して、製品面積は1/2以下という小型化を実現しつつ、
コモンモード特性、ディファレンシャルモード特性ともに同等の特性を確保している。
主な特長・用途・仕様・電気的特性
主な特長
- 業薄膜工法による業界最小クラスのコモンモードフィルタ
- 既存製品TCM0605Gと比較して同等の特性を実現
主な用途
- スマートフォン、タブレットなどのモバイル機器のノイズ対策
主な電気的特性
Part No. | Common mode attenuation [Scc21] | Cutoff frequency (GHz)typ. | DC resistance[1 line](Ω) | Rated current(mA)max. | Rated voltage(V)max. | Insulation resistance (MΩ)min. |
---|---|---|---|---|---|---|
TCM0403R-900-2P | 27.5dB typ.@850MHz | 5.0 | 3.5±30% | 35 | 5 | 10 |
Operating temperature range: –25 to +85ºC