ノイズ抑制シート "フレキシールド" IFLシリーズ
スマートフォンなどの
小型電子機器への使用事例
フレキシールドは電子機器内EMC問題である"自家中毒"問題への簡便で効果的な解決法です。
回路基板の高密度化とともに小型電子機器のノイズ環境は悪化
TDKのノイズ抑制シート"フレキシールド"(以下、単に"フレキシールド"と表記します)の小型電子機器への使用事例とその効果についてご紹介いたします。
電子機器のノイズ対策は、各種EMC規格を満足するだけでは不十分です。とりわけ、スマートフォンをはじめとする通信機能をもった多機能な小型電子機器においては、回路基板の高密度化とともに、内部で発生した放射ノイズがアンテナに干渉して受信感度低下や画像・音声品質の劣化をもたらすなど、機器内EMC問題である"自家中毒"問題の解決が求められます。
スマートフォンのブロック図および内部の基本構造を図1に示します。アプリケーションプロセッサや電源管理ICなどのIC回路を搭載したメイン基板、ディスプレイなどにつながるサブ基板、カメラモジュールなどで構成され、これらはフレキシブルケーブル(FPC/FFC)で接続されています。
スマートフォン内部の放射ノイズの主な発生源
多機能化が進むスマートフォンの中枢であるアプリケーションプロセッサは、複数のICを統合したSoC(System-on-a-chip)です。このSoCや周辺回路(パワーインダクタなど)、そしてメイン基板とサブ基板などを接続するフレキシブルケーブル、コネクタ部などが、スマートフォンの"自家中毒"の原因となる放射ノイズの主な発生源となっています。
TDKのフレキシールドは、薄型でフレキシブルなノイズ抑制シートで、自由な形状に裁断して貼り付けることで、簡便ながら効果的な放射ノイズ対策が実現します(図2)。
シミュレーション技術を活用した先進のEMCソリューションを提供しています。
近傍電磁界測定により放射ノイズ強度の分布を可視化
放射ノイズは電界と磁界が相互に作用しながら空間を伝わる電磁波です。しかし、ノイズ放射源の近傍においては、電界と磁界がどちらかに偏りながら独立して存在します。この領域を近傍界(near field)といいます。具体的には、放射源からの距離が、λ/2π(λ:波長)より小さい領域が近傍界で、λ/2πより大きい領域を遠方界(far field)といいます。λ/2πの値は1GHzで約5cmなので、スマートフォンなどの小型電子機器では近傍界の電界や磁界の分布を把握する必要があります。そのために使用されるのが近傍界測定システムです。プリント基板などのDUT(被測定物)に電磁界プローブを近接させ、一定間隔(ギャップ)を保ちながら走査させ、得られたデータからノイズ強度の分布を可視化します(図3)。"自家中毒"問題をはじめとする各種ノイズ問題に対するソリューションとして、TDKのコアテクノロジーの1つであるシミュレーション技術が活用されています。
ICばかりでなく周辺回路を含めた広いエリアの放射ノイズを抑制します。
パワーインダクタも放射ノイズの発生源
近傍電磁界測定システムによって測定したスマートフォンのメイン基板のIC周辺回路の磁界強度の分布例を図4に示します。赤色はノイズレベルが高いエリア、青色は低いエリアを表しています。無対策のままでは、アプリケーションプロセッサや電源管理IC周辺に赤色のエリアが広く分布していますが、フレキシールドを装着することでノイズレベルが大幅に低下しています。放射ノイズはICばかりでなく、パワーインダクタなどからも発生するため、IC周辺回路に装着することが、きわめて効果的な放射ノイズ対策となります。
フレキシブルケーブルにおいても、フレキシールドはすぐれたノイズ抑制効果を発揮します。
ケーブルや配線パターンはノイズを放射するアンテナとして機能
高周波の電流が伝わるケーブルや基板の配線パターンは、ノイズを放射するアンテナとして機能します。図5はメイン基板とサブ基板を接続するフレキシブルケーブルへの使用した場合のノイズ抑制効果例です。無対策のままでは、きわめて高いレベルのノイズを放射していることが、近傍磁界測定からわかります。
フレキシールドは薄くフレキシブルなので、フレキシブルケーブルなどにも容易に貼り付けることができるのが特長です。フレキシールドの装着により、強烈なノイズが大幅に抑制されています。