アプリケーションノート

ESD/サージ保護デバイスの使い方:チップバリスタ

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積層セラミックス技術により製造されるSMDチップバリスタは、電圧依存性の抵抗素子です。ESD(静電気放電)やサージなど、過渡的な過電圧から電子回路を保護するために、通信機器や産業機器、車載機器などで広く使用されています。

積層セラミックス技術により製造されるSMDチップバリスタは、電圧依存性の抵抗素子です。ESD(静電気放電)やサージなど、過渡的な過電圧から電子回路を保護するために、通信機器や産業機器、車載機器などで広く使用されています。

チップバリスタの特長

チップバリスタは半導体セラミックスの性質を利用した電圧保護素子で、印加電圧がある値を超えると、急激に抵抗値を下げて電流を流すようになります。この特性により、チップバリスタを並列接続することで、電子デバイスをESDやサージから保護します。
チップバリスタによる効果的なESD/サージ保護例を以下にご紹介します。

目次

  • 特性値検索
  • アプリケーション、形状、バリスタ電圧などの特性値から製品の検索ができます。
 

応用例:スイッチ、キー、ボタン、接続端子などの入出力部のESD/サージ保護

スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器は、手に持って操作するため、人体からのESD(静電気放電)により、ICが破壊されたり誤動作を起こしたりします。とりわけ、スイッチ、キー、ボタン、接続端子などの入出力部は、ESDの発生個所となっており、対策は必須です。入出力部に並列にチップバリスタを接続することで、省スペースで効果的なESD対策となります。

図1 スイッチ/キー

図2 ボタン

応用例:オーディオ(音声)ラインのESD/サージ保護

スマートフォンのスピーカーやマイクロフォンは、電子機器へのオーディオ信号の入出力を行うインタフェースです。通常、機器の外側に配置されることが多いため、ESDの障害を受けやすく、しばしば故障や誤動作が問題となります。特にヘッドフォン/ヘッドセットのジャックはピンプラグを頻繁に抜き差しするため、帯電したピンプラグを挿入する際に、ESDが発生し機器内に気中放電される可能性が高く、保護素子による対策が必須です。

チップバリスタはアプリケーションによってはTVSダイオードにまさるメリットがあります。
小型サイズのTVSダイオードでは十分な静電容量が得られない場合、MLCCを並列に接続して使われますが、チップバリスタは1個ですみ、実装面積も削減できます。

図3 オーディオ(音声)ライン:スピーカ、マイクロフォン

図4 オーディオ(音声)ライン:ヘッドセット

回路図中のフェライトビーズは受信感度の劣化を防ぐために挿入されるノイズ対策部品です。TDKのオーディオライン用ノイズサプレッションフィルタを使用すると、挿入にともなう音声歪みを低減できて、より効果的です。

 

応用例:I/OインタフェースのESD/サージ保護 [RS-232C/RS-423]

RS-232C/RS-423はパソコン(ホスト)と周辺機器(デバイス)をつなぐシリアルポートのインタフェース規格です。コネクタの抜き差しの際にESD障害が発生するので、その対策として入出力のピンごとにチップバリスタを接続します。アレイタイプのチップバリスタを用いると省スペースでESD対策が実現します。

図5 I/Oインタフェース:RS-232C/RS-423

応用例:I/OインタフェースのESD/サージ保護 [RS-422/RS-485]

RS-422/RS-485はツイストペアケーブルを用いた差動伝送方式のインタフェースで、1km以上の遠距離伝送も可能にします。ただし、差動信号の電磁的な歪みはコモンモードノイズを発生するため、ESD対策のチップバリスタとともに、コモンモードフィルタが搭載されます。

図6 I/Oインタフェース:RS-422

図7 I/Oインタフェース:RS-485

応用例:I/OインタフェースのESD/サージ保護 [USB2.0/USB SS]

USB SS(SuperSpeed)は、USB3.0やUSB3.1など、USB2.0の上位規格です。データ転送速度は5Gbpsで、USB2.0の約10倍という超高速転送を実現しています。
USB2.0とUSB3.0におけるチップバリスタの使用例を以下に示します。アレイタイプの応用例も示しました。複数ポートに使用する場合、実装面積が削減できます。

図8 I/Oインタフェース:USB 2.0

図9  I/Oインタフェース:USB 2.0 (チップバリスタアレイの例)

図10 I/Oインタフェース:USB SS

応用例:I/OインタフェースのESD/サージ保護 [HDMI/LVDS]

HDMIはテレビとDVDレコーダーなど、AV機器どうしを接続する高速差動インタフェース、LVDSは電子機器内部で基板と基板を結ぶ高速差動インタフェースです。ラインの本数が多いので、小型でアレイタイプのチップバリスタが実装面積の削減に有効です。

図11 I/Oインタフェース:HDMI/LVDS

応用例:車載LANインタフェースのサージ/ノイズ対策 [LIN/CXPI、CAN/CAN-FD]

車載電子機器は共通のインタフェース規格によって接続され、車載ネットワークシステムである車載LANを構成しています。車載LANは通信速度の違いなどにより、さまざまな種類があります。
LINやCANはパワーミラーやパワーシートなど、ボディ系の車載LANの規格で、CXPIはLINを発展させた新規格です。いずれもチップバリスタがサージ対策として使われます。

LIN/CXPIはシングルエンド伝送であり、直列に接続されたコイル/ビーズは、ディファレンシャルモード(ノーマルモード)ノイズの抑制用です。CANは差動伝送なのでコモンモードノイズの抑制用にコモンモードフィルタが搭載されます。CAN-FDはCANの通信仕様を拡張した新規格です。

図12 車載LANインタフェース:LIN/CXPIのサージ/ノイズ対策

図13 車載LANインタフェース:CAN/CAN-FDのサージ/ノイズ対策

応用例:車載LANインタフェースのサージ/ノイズ対策 [MOST50]

MOSTはオーディオ、ビデオなどの車載マルチメディア機器を接続する車載LANです。MOST50は低価格で軽量なUTPケーブル(非シールドツイストペア線)が利用できるために広く採用されています。

図14 車載LANインタフェース:MOST50のサージ/ノイズ対策

応用例:車載LANインタフェースのサージ/ノイズ対策 [車載Ethernet(100Base-T1)]

自動車の周辺監視など、車載カメラからの映像などを安全・快適走行に利用するためのカメラ系の車載LANとして、車載Ethernetの採用が急速に進んでいます。100Base-T1は、UTPケーブル(非シールドツイストペア線)を用いてデータ転送速度100Mbpsの全二重通信を実現する車載Ethernetです。

図15 車載LANインタフェース:車載Ethernet(100Base-T1)のサージ/ノイズ対策

参考リンク

  • ■ ESD保護デバイス セレクションガイド

    一般グレードおよび車載グレードごとに、アプリケーションや形状寸法、回路電圧から最適なチップバリスタ、積層チッププロテクタを見つけることができます。
    一般グレード
    車載グレード

    セレクションガイド
  • ■ 特性値検索

    特性値から検索ができるサービスです。用途別に絞り込みが可能です。

    特性値検索