高速車載インタフェースに適した電源インダクタを開発
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プロダクトオーバービュー

高速車載インタフェースに適した電源インダクタを開発

車載インタフェースの高速化・高度化にともない、LVDS伝送の車載カメラシステムなどでは、1本のラインに信号と電源を重畳させるPoC(Power over Coax)化が進行しています。TDKの電源インダクタADL3225Vタイプは、PoCにおける伝送特性の確保を省スペースで実現する製品です。

信号ラインと電源ラインを同軸ケーブルに1本化したPoC(Power Over Coax)

安全支援走行や環境負荷の低減、快適性の向上などを目指し、自動車はとどまることなく進化を続けています。車載電子機器も、カーナビゲーションシステム、カーオーディオはもとより、近年、IVI(車載インフォテインメント)システムやADAS(先進運転支援システム)などを実現するために、センサ系やカメラ系の機器が増えるにつれ、多数のECU(電子制御ユニット)を結ぶ車載インタフェースの高速化の要求が高まっています。

そこで、こうした先進のマルチメディア・情報通信系の車載インタフェースとして、双方向の通信に対しては車載Ethernet(最大伝送速度100Mbps)が、また、カメラ(リアビューカメラ、サイドビューカメラなど)からメイン基板に映像信号を送るというような一方向の通信に対しては、多くの電子機器に採用されているLVDS(最大伝送速度1.5Gbps)が導入されるようになりました。さらにLVDS伝送においては、ワイヤハーネスの重量を軽減するため、1本の同軸ケーブルで信号伝送と電源供給を実現するPoC(Power over Coax)化も進められています。

PoCにおける電源インダクタの役割

LVDSにかぎらず、信号ライン(AC成分)と電源ライン(DC成分)は別々のラインで送るのが従来の一般的なデータ伝送方式でした。しかし、車載インタフェースの場合においては、ワイヤハーネスの重量が燃費に直接影響してきます。とりわけ、マルチメディア・情報通信系の車載インタフェースにおいては、リアだけでなく、サイド、フロントなど、多数のカメラモジュールが配置される可能性もあり、ケーブル数を減らすことによるワイヤハーネスの軽量化の効果が顕著に出てきます。そこで、注目されるようになったのが信号伝送と電源供給を1本の線に重複させる方式です。同軸ケーブルを利用する場合、PoCと呼ばれ、車載カメラシステムの例を図1に示します。従来方式では電源ラインと信号ラインが独立していますが、PoC方式では1本の同軸ケーブルの芯線に、メイン基板およびカメラモジュール側のそれぞれの電源ラインが接続されています。このため、PoC方式においては、負荷インピーダンスの低い電源ラインに高周波信号が流れていかないように、分岐点においてインピーダンスを高くする必要があり、インダクタが直列接続されます。インダクタは高周波において高インピーダンスになるので、信号の流入を阻止できるからです。一方、電源ラインのDC成分のドライバ側への流入に対しては、コンデンサの直列接続によって阻止します。

図1:従来方式とPoCとの比較、および PoCにおけるインダクタとコンデンサの役割

車載PoC用インダクタに要求される特性と構成

LVDSは一方向通信と前述しましたが、映像信号は送信側(Tx)から受信側(Rx)方向に一方向に送られるものの、コントロール信号(I2C:アイ・ツー・シー)がメイン基板側からカメラモジュール側に流れるため、厳密にいうと双方向に信号が流れています。このため、インダクタは映像信号(最大伝送速度1.5Gbps)とコントロール信号(数百kbps)の両方に対して、高インピーダンスである必要があり、数百kHzから1.5GHzまでの広帯域の特性が要求されます。しかし、従来の電源インダクタでは、インピーダンスがピークとなる自己共振周波数(SRF)が低く、図2に示すように、高L(インダクタンス)品と低L品のインダクタ複数個を組み合わせて広帯域を実現していたため、省スペース化が困難という問題がありました。また、カメラモジュールへの電源供給に数百mA程度の電流が流れるため、その電流でインダクタが磁気飽和しないような直流重畳特性も求められます(図3)。こうした要求特性のソリューションとして、従来の電源インダクタとは異なる独自の巻線設計と構造の採用により、自己共振周波数を高めるとともに、必要とされる直流重畳特性を実現した製品がADL3225Vタイプです。

図2:従来手法のPoCのインダクタ構成

図3:PoCのインダクタに要求される直流重畳特性

広帯域のインピーダンス特性と良好な直流重畳特性を実現

図4に示すように、従来製品(47μH)と比較してADL3225Vタイプの自己共振周波数(SRF)は高周波側にシフトしているのがわかります。また、複数の電源インダクタを使った従来手法のインピーダンス特性と同等レベルを、ADL3225Vタイプ1個で広帯域かつ高いインピーダンスを実現しました(図5)。さらには、材料技術と新構造の導入によって、カメラモジュールにおいて必要とされるすぐれた直流重畳特性(動作保証温度範囲-40°C~105°Cにおける)もあわせて実現しました。

図4:インダクタの自己共振周波数(SRF)の高周波側へのシフト

図5:ADL3225Vのインピーダンス-周波数特性

まとめ

車載カメラからの高画質映像などを自動車の安全・快適走行に利用するため、大容量データを高速伝送できる映像伝送のインタフェースとしてPoCの採用が急速に進んでいます。TDKが長年にわたり培ってきたフェライト技術、巻線技術、設計技術などを駆使して開発したのが、高速インタフェース電源重畳用インダクタADL3225Vタイプ。部品点数の削減により、同等特性を確保しながら省スペースの車載PoCを実現します。TDKはCAN/FlexRay/Ethernetなどの各種車載LAN規格に対応したコモンモードフィルタなども含め、車載LANの高速化・高度化をサポートする電子部品・デバイスの製品ラインアップをさらに充実させてまいります。

ADL3225Vシリーズ - 主な仕様・特長・用途・電気的特性

外観および等価回路

製品外観

等価回路

形状寸法図

主な特長

  • 小型・低背タイプ(実装面積3.2×2.5mm、高さ2.6mm max.)
  • 独自の巻線設計と独自構造により、広帯域のインピーダンス特性と良好な直流重畳特性を実現
  • 完全自動化された製造プロセスにより、一貫した高品質・高信頼性を確保
  • はんだレス設計
  • AEC-Q200準拠
  • RoHS指令、鉛フリーはんだ対応
  • 使用温度範囲(自己温度上昇含む) : -40~105°C

主な用途

  • 車載PoC(Power Over Coax)における信号ライン/電源ライン分離用インダクタ

シリーズラインナップと主な電気的特性

品番 インダクタンス
@100kHz[μH]
インダクタンス
許容差[%]
直流抵抗
Rdc max.
[Ω]
定格電流1
lsat typ.
[mA]
定格電流2
ltemp typ.
[mA]
ADL3225V-470MT-TL00047200.9300500

Isat:インダクタンス変化率に基づく場合(公称値から30%低下)
Itemp:温度上昇に基づく場合(自己発熱による温度上昇40°C)

その他のPoC向け製品(ADL3225VTシリーズ) - 主な仕様・特長・用途・電気的特性

外観および等価回路

製品外観

等価回路

形状寸法図

主な特長

  • 小型・低背タイプ(実装面積3.2×2.5mm、高さ2.5mm max.)
  • 独自の巻線設計と独自構造により、広帯域のインピーダンス特性と良好な直流重畳特性を実現
  • 完全自動化された製造プロセスにより、一貫した高品質・高信頼性を確保
  • はんだレス設計
  • AEC-Q200準拠
  • RoHS指令、鉛フリーはんだ対応
  • 使用温度範囲(自己温度上昇含む) : -40~150°C

主な用途

  • 車載PoC(Power Over Coax)における信号ライン/電源ライン分離用インダクタ

シリーズラインナップと主な電気的特性

品番 インダクタンス
@100kHz[μH]
インダクタンス
許容差[%]
直流抵抗
Rdc max.
[Ω]
定格電流1
lsat typ.
[mA]
定格電流2
ltemp typ.
[mA]
ADL3225VT-100M-TL00010200.154501300
ADL3225VT-4R7M-TL0004.7200.17201500

Isat:インダクタンス変化率に基づく場合(公称値から30%低下)
Itemp:温度上昇に基づく場合(自己発熱による温度上昇40°C)

∗本内容は弊社評価によるものです。