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車載・産業分野の高バースト圧要求に対応する圧力センサダイ - 「C43」「C44」シリーズ

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車載・産業用電子部品に求められる要件が年々厳しさを増すなか、絶対圧・ゲージ圧・差圧を高精度で計測できるピエゾ抵抗型圧力センサは、こうした分野の幅広いアプリケーションに好適です。圧力センサのコアとなる部品は、ダイ(die)と呼ばれる、圧力を電気出力に変換するセンシング素子です。

ピエゾ抵抗型圧力センシング

TDKは、高精度のピエゾ抵抗型圧力センシングMEMSダイを、様々な圧力範囲とフットプリントで幅広く提供しています。
TDKのダイは、高い感度と柔軟な設計が特長であり、媒体耐性の向上、扱いやすさ、製品寿命を通じた信頼性の高さと安定した信号出力に重点を置いた製品となっています。

図1 ピエゾ抵抗型圧力センシングの各種方法
絶対圧
 
ゲージ圧   差圧
 

「C43」「C44」製品ファミリーの説明

圧力センサダイ「C43」および「C44」は、ゲージ圧〔C43、C44〕と、前面〔C43〕・背面〔C44〕での絶対圧の計測が可能です。「C43」「C44」製品ファミリーは、ご好評をいただいている「C32」ダイシリーズをさらに高性能化したシリーズです。
計測圧力範囲は、0 … 10 bar~0 … 40 bar、温度範囲は-40 °C~+150 °Cとなっています。特に、「C44」の背面受圧による絶対圧測定では、流体やガスといった媒体の圧力がダイの背面に印加されるため、上面の電子回路構成面にこうした媒体が接触するのを完全に防ぐことができます。

図2 「C43」「C44」製品ファミリーの説明

「C43」「C44」ダイの大きな特長

1. 加圧限界の向上

「C43」「C44」シリーズは、加圧限界が最大150 barと大幅に向上しており、高圧アプリケーション向け圧力センサダイのラインアップを強力に拡充します。
加圧限界のこの著しい上昇は、ガラス台座の陽極接合面積を大きくし、空洞部の体積を減らしたことで可能になりました。

図3 加圧限界の向上

2. 長期安定性

信号出力の精度は耐用期間を通じて±0.1%以内(フルスケール)と、すぐれた長期安定性も大きな特長の一つです。
さらに、ダイの性能に対する電磁的・電気化学的影響を抑えるため、MEMSの層構造に直接、電気シールディングが施されています。

図4 長期安定性

長期安定性試験の手順:

試験 試験方法
スタート 実装後のオフセット電圧の測定
TL150 – 1 150 °C、15時間、バイアス印加なしの温度負荷により、試料をポストキュア
MR – 1 -40°C~135°Cの温度範囲での初期MR(出力特性の測定)
TCB -40 °C~135 °C、dT/dt = 1 K/min、VDD = 5V、10サイクルでの温度サイクルバイアス印加試験(測定レポート「TCB」を参照のこと)
TL150 – 2 150 °C、15時間、バイアス印加なしでの温度負荷
HTB 150 °C、168時間、バイアス印加10 Vでの温度負荷(測定レポート「HTB」を参照)
TL150 – 3 150 °C、15時間、バイアス印加なしでの温度負荷
KL – 40 -40 °C、15時間、バイアス印加なしでの温度負荷
MR – 2 -40°C~135°Cの温度範囲でのMR(出力特性の測定)

上記試験や「長期安定性」の定義の詳細については、当社ウェブサイトの「AS規格100001」をご参照ください。

3. 既存センサパッケージでのアップグレード

既存の「C32」をご使用で、加圧限界をさらに高めたいというお客様は、「C43」「C44」を現行の「C32」と同じセンサパッケージでご使用いただけます。
「C43」「C44」新シリーズは、ご好評の「C32」ファミリの後継品であり、ボンディングパッドの配置や高さ、実装面積はそのままに、加圧限界を向上させています。

図5 既存センサパッケージでのアップグレード

MEMSダイ「C44」の特別機能

図6 MEMSダイ「C44」の特別機能
1 はんだ付け可能な背面金属化絶対圧センシング素子
・圧力センシング素子とセンサパッケージとの堅牢なはんだ接合を得るためのダイ背面の金属化。
・これにより、すぐれた機械的堅牢性と媒体耐性を実現。
2 ゲージ圧測定
・ゲージ圧測定用のC44は、ガラス台座を使用しておらず、コスト効率に優れている。
・525µm厚シリコンによる堅牢な設計。
・小型パッケージ: 1.65 × 1.65 × 0.525 mm3

製品概要

図7 製品概要
シリーズ 圧力計測方式 ダイサイズ(mm3 測定媒体 製品情報
C43 絶対圧、前面受圧
(オープンブリッジ)
1.65 × 1.65 × 1.1 乾性・非刺激性ガス Link
ゲージ圧
(オープンブリッジ)
1.65 × 1.65 × 1.1 非刺激性ガス・流体、その他被測定圧力媒体(背面) Link
C44 絶対圧、背面受圧 1.65 × 1.65 × 1.5 非刺激性ガス・流体 Link
ゲージ圧(ガラス台座なし) 1.65 × 1.65 × 0.525 非刺激性ガス・流体、その他被測定圧力媒体(背面) Link

アプリケーション例

1. 車載アプリケーション

自動車分野では、センサはさまざまな媒体の圧力を測定して、パワートレインの管理や安全システムを支援するのに使用されます。
従来のガソリン内燃機関自動車の場合、燃費の向上には、センサを用いて精密なエンジン制御をおこなう必要があります。また、排気ガスを処理して有害なガスの排出を削減するのにもセンサが欠かせません。電動化車両の電動ドライブシステムや水素燃料電池アプリケーションでも、バッテリーや燃料電池の管理を支援するのにセンサが必要です。
ブレーキ、トランスミッション、エアサスペンション、暖房・換気・空調(heating, ventilating and air conditioning: HVAC)といった各種車載コンポーネントも、有効に機能するためには、さまざまな媒体の圧力の正確な監視が不可欠です。
油圧オイルなどの流体を含むシステムでは、圧力スパイクと呼ばれる局所的な圧力上昇が生じ、センサダイにダメージを与えるおそれがあります。加圧限界の高い「C43」「C44」シリーズは、こうしたピーク圧力下での運転にも充分に耐えうる堅牢性を備えており、ダイの故障リスクを低減します。
最新の車載システムの厳格な要件を満たすには、センサの長期安定性と高精度の圧力検知が不可欠です。

2. 産業アプリケーション

産業用機器・システムでは、水圧や空気圧で作動する機械や建物のHVACシステム、エネルギー管理や水管理などの制御・診断用途に圧力センサが使用されており、測定・制御技術に欠かせない重要なコンポーネントとなっています。
ガス充填システムよりも、流体を用いるアプリケーションのほうが、高い加圧限界を必要とします。圧力ピークは通例、ポンプやバルブ、アクチュエータの初期運転時に発生します。
「C43」「C44」シリーズは、高い加圧限界(バースト圧)が求められるこうしたアプリケーションで真価を発揮します。