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レゾルバよりも高コストパフォーマンス!電動モーターに適した角度検知ソリューション TMR角度センサ

電動モビリティにおいて求められるモーター制御技術

車両の動力源となる電動モーターは、効率性と性能の両立が求められ、電動モビリティの普及において重要な役割を果たしています。

高効率な電動モーターはエネルギー消費を抑え、バッテリーの持続時間を延ばします。これにより、1回の充電で長距離走行が可能となり、ユーザーの利便性が向上します。また低騒音・低振動の特性により、快適な乗り心地を提供し、運転音や振動を最小限に抑えることができます。

電動モーターにおいて求められる角度センサ技術

なかでも電動モーターの回転角度検出に使われる角度センサは、車両の制御システムの精度と効率を支える重要な役割を担っており、次のような要素が求められます。

高精度な角度測定: 激しい振動や-40°Cから150°Cに及ぶ厳しい温度変化の中でも、安定して正確に機能することが求められます。これにより、車両の精密なモーター制御システムが正確に動作し、安全性を確保しながら電力損失を抑えた効率的な運転を実現します。

低消費電力:角度センサ自身の消費電力を抑えることは、バッテリー駆動の車両において全体の電力消費を削減し、走行距離を延ばすことに貢献します。これは、車両のエネルギー効率を向上させる一因となり、特に電力リソースが限られているバッテリー駆動の車両において重要です。

小型化・軽量化:車両の設計自由度を高め、全体的な効率を改善します。これによりモーター設計の柔軟性が増し、スペースの有効活用が可能になります。

冗長化:1つの角度センサが故障しても、モーターを駆動し続けられるように二重、四重の冗長化が求められる場合があります。

コスト効率:価格競争の激しい電動モビリティ市場において、大量生産に適したコスト効率の高い設計および部品選定が求められます。

角度センサが抱える課題とは

現在はレゾルバやインダクティブ方式の角度センサが主流ですが、いくつかの課題を抱えています。

まず、レゾルバは高コストが大きな問題です。これらのセンサは設計が複雑で製造が難しく、材料費も高いため、全体的なコストが増加します。さらに、センサと併用するエンコーダのライセンス費用やR/DコンバータICに含まれる費用も予算に計上する必要があり、負担が大きくなります。

次に、サイズの問題です。レゾルバは、回転時に慣性の高い金属ターゲットが必要であり、コイルシステムを利用することでスペースをとります。インダクティブはPCB上に描かれた3つ以上のコイルとそれを覆うようにシャフトに取り付けられた金属板で構成されており、更なる小型化には限界があります。部品の点数が多いということは、故障率の観点からも不利と言えます。

他のソリューションとして磁気センサも使用されていますが、磁場ノイズ耐性の課題があります。磁気センサは磁気の強さや磁場方向に反応するため、ターゲット磁石以外の外乱磁場ノイズの影響を受けやすく、磁気シールドなしでは正確な検出が難しくなるケースがあります。

これらの課題は角度センサ技術の進化を妨げる要因となっており、新しいアプローチが求められています。

解決策としてのTMR角度センサ・比較表

これらの課題を解決する角度センサ技術としてふさわしいのがTMR*角度センサです。TMR角度センサは、磁石の磁場方向を検知する磁気センサの一種であり、モーターの回転角度を高精度に検出し、効率的な制御を可能にします。
*TMR (Tunnel Magneto Resistance): トンネル磁気抵抗効果

以下の表で従来の角度センサ技術との違いをご覧ください。

レゾルバ インダクティブ TMRセンサ
(On-axis配置)
TMR センサ
(Off-axis配置)
検出方式 電磁誘導 電磁誘導 TMR効果
コスト 高価格
(RDC IC & 励磁回路が必要)
中間 低価格
(複数個使いでも安い)
サイズ・重量 大きい・重い 中間 小さい・軽い
外乱磁場耐性 良い 良い ・複数個使用により回路側で補正可能
・磁気シールドで低減可能
精度 高精度 良い
ただし他センサと
比較すると劣る
高精度 複数個使用により
高精度可能
消費電力 大きい 大きい 小さい
冗長性 コスト増加影響が
大きい
対応可能 対応可能
レイアウト自由度 Off-axisのみ Off-axisのみ ・On-axis / Off-axis いずれか選択可能
・マグネット仕様によりセンサIC位置を調整可能
表 1: 角度センサ比較表
図 1: 角度センサ比較チャート

TMR角度センサのメリットは以下のようにまとめられます。

  • コスト:小型パッケージかつ小規模な回路構成や信号処理の要件が低いためシステムコストが非常に優れています。
  • サイズ・重量:IC以外に回転検知用のMagnetを含めても優位性があります。(レゾルバはステータ側の励磁コイル・出力コイルとロータ側に取り付ける電磁鋼板が必要で、サイズ・重量が大きくなる)
  • 外乱磁場耐性:磁場による角度検出であるため、外乱磁場の影響は受けてしまうものの、センサを複数個使用し補正計算を行うことで、外乱磁場耐性を改善させることが可能です。
  • 精度:Off-Axisで使用する場合は、ICを複数個使用することで精度を向上できます。
  • 消費電力:IC以外は電流印加不要です。(レゾルバは励磁コイル・出力コイルに流す電流が必要となるため、消費電力が大きい)
  • 冗長性:ICを複数個使用していただくことで、冗長性を容易に実現できます。

TDKのTMR角度センサの特長と優位性

なかでもTDKのTMR角度センサは、磁気センサ業界で最高クラスの角度精度を誇り、車載分野に特化した小型ラインナップをご用意しています。他の磁気センサソリューションと比較しても、広い温度範囲にわたって極めて安定した出力特性を持ち、温度補正処理が不要であるためシステム設計の簡素化にも貢献します。

角度精度 0.15°以下の高精度を実現:アナログ出力で±0.15度、デジタル出力で±0.05度の精度を実現し、設置直後から360度の絶対値を観測できます。この高い制御性により、位相ずれによるノイズや振動によるエネルギーロスを減少させます。

システム全体の小型化・軽量化・低コスト化 に貢献するパッケージ: TSSOP-8 (6.4 x 3.0mm) や QFN16 (3.0 x 3.0mm) といったコンパクトなサイズ。ターゲット磁石も非常に小型で軽量のため、スペースが限られた環境でも簡単に組み込むことができ、これにより設計の自由度が高まり、効率的な製品開発が可能になります。

ASIL対応を目的とした冗長設計:40~150℃の温度範囲で安定した性能を発揮し、信頼性試験をクリアした製品を提供します。冗長設計対応のアナログ・デジタル出力製品を持ち、超高速回転が求められるトラクションモーターに適しています。またデュアルMCUをサポートし、電気的ドメインが分かれているため、故障時動作をサポートし、モーターの高い稼働性を実現します。

独自の外乱磁場ノイズキャンセル手法:複数センサにより外乱磁場ノイズ信号を抑制する方法を提案しています。加えて磁気シールド手法のアドバイスも行っています。開発支援として評価基板サンプルが提供中も提供中です。

これらの特徴が評価され、2014年から車載向け製品の量産実績を保持しています。

製品ラインナップ

TDKでは、アナログ出力からデジタル出力まで多彩な製品ラインナップを取り揃えています。

※対応規格
機能安全:ISO26262(TAD214xはASIL-Bを、TAD4140はASIL-Dをそれぞれシステムレベルでサポート)
信頼性:AEC-Q100 グレード0, MSL1
アッセンブリ:AOI (Wettable flank)

まとめ

本記事では、電動モーターの高性能化と高効率化を支える角度センサの課題とその解決策について解説しました。TMR角度センサは、高精度でありながらコスト効率にも優れており、電動モビリティの普及において重要な役割を果たします。また当社製品は、再生可能エネルギー由来電力を100% 使用して生産されており、生産面からも持続可能な社会の実現に貢献しています。本記事内で紹介しきれなかった製品ラインナップもございますので、ご興味のある方は、下記のコンタクトフォームよりぜひお問い合わせください。

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