ソリューションガイド
電子機器の高速化・高周波化とともに、ノイズフィルタ用途やデカップリング用途に使用されるコンデンサや3端子貫通型フィルタには、さらなる低ESL(等価直列インダクタンス)特性が求められています。また、自動車の電装システムにおいても、安全・快適性の向上やインフォテインメント化に対応するため、低ESLタイプのニーズが高まっています。TDKの先進の低ESL部品による車載電子機器に向けた各種ソリューションをシリーズでご紹介します。
3端子貫通型フィルタのデカップリング用途におけるソリューション 概要
ICの電源ラインの電圧変動は、回路の動作を不安定にしたり、ノイズの原因となります。そこで、電源ラインとグランドの間にコンデンサを挿入し、負荷が急激に変化したときに、電流を一時的に供給して電圧変動を抑制します。これをデカップリングといい、使用されるコンデンサをデカップリングコンデンサといいます。 3端子貫通型フィルタYFF-AC/AHシリーズは、車載電子機器の電源ラインのデカップリング用としても、すぐれたパフォーマンスを発揮します。
ソリューション:シャントスルー接続によるデカップリング
3端子貫通型フィルタをデカップリング用として使用する場合は、シャントスルー接合という特殊な接続方法が効果的です。これは図1に示すように、電源ラインの配線パターンを切断することなく、3端子貫通型フィルタを電源ラインと並列に接続する実装方法です。
一般的なフィードスルー接合では、電源ラインに流れる電流が大きくなると、3端子貫通フィルタの内部の抵抗成分(Rdc)により、電圧降下も大きくなってしまいます。シャントスルー接続*では、電源ラインに流れる電流は、配線パターンのほうを本流として多く流れるため、3端子貫通型フィルタに既定されている定格電流よりも多くの電流が流れる回路でも使用できるというメリットがあります。
(シャントスルー接続*:TDKでは、3端子フィルタを電源ラインに直列に接続する実装方法をフィードスルー接続、並列に接続する実装方法をシャントスルー接続と呼んでいます)。
図1 :3端子貫通型フィルタのシャントスルー接続
デカップリングコンデンサとして、1005サイズの0.1μFのMLCC4個を用いた場合と、1608サイズ車載用3端子貫通型フィルタ0.47μF (開発中)1個を用いた場合のインピーダンス-周波数特性を図2に示します。3端子貫通型フィルタは20MHz以上の高周波領域でも、インピーダンスが低く、すぐれたデカップリング効果を示します。
図2 :デカップリング用MLCCと3端子貫通型フィルタのインピーダンス-周波数特性の比較例
ソリューション:デカップリングコンデンサの員数削減と省スペース化
3端子貫通型フィルタを用いることでデカップリングコンデンサの員数削減や省スペース化が図れるのも大きなメリットです。図3に示すように、1005サイズMLCC4素子を用いた場合の実装面積2.99mm2は、1608サイズ3端子貫通型フィルタYFF-ACでは1.28mm2にまで削減され、57.2%もの省スペース化が実現します。
図3 :3端子貫通型フィルタによるデカップリングコンデンサの員数削減と省スペース効果
TDKの車載用3端子貫通型フィルタYFF-AC/AHシリーズは、材料や設計の最適化などにより、車載電子機器向けに特化して開発した高信頼性・大電流対応のEMC対策部品です。小型ながら広帯域で良好な減衰特性をもつため、車載電子機器の電源ラインの放射ノイズ対策として、すぐれたパフォーマンスを発揮します。また、デカップリング用としても効果的で、複数のデカップリング用MLCCを3端子貫通型フィルタ1個で置き換えられるため、部品点数の削減による省コスト化とともに、大幅な省スペース化を実現します。
《車載用3端子貫通型フィルタYFF-AC/AHシリーズの主な特長・用途・電気的特性》
【主な特長】
- 車載用途に特化した小型・高性能のEMC対策部品。デカップリング用途でもすぐれた効果を発揮します。
- AEC-Q200対応。
- 広帯域で良好なノイズ減衰特性を実現します。
- 大電流(6~10A)に対応しています。
- 部品点数・実装コスト・実装スペースの削減し、基板レイアウトを簡素化します。
【主な用途】
- ECU、カーナビゲーションシステム、車載カメラシステム、ミリ波レーダーシステムなど、各種車載電子機器の電源ラインのEMC対策およびデカップリング用。
【製品ラインアップおよび主な電気的特性】
【車載用3端子貫通型フィルタYFF-AC/AHシリーズ】製品情報およびサンプル購入
※お客様の用途に応じたタイプ/品番をお選びいただき、お客様の製品の信頼性向上にお役立てください。