ソリューションガイド
MLCCのはんだクラック対策 概要
図1:はんだクラックの様子(切断面)
はんだクラックの主な発生原因
図2:はんだクラックの主な発生原因とその影響
MLCCのはんだクラックは、はんだ付け工程などの製造工程ほか、市場に出されてからの過酷な使用条件などによって生じます。主な発生原因として、次のようなものがあります。
(1) 熱衝撃(ヒートショック)、温度サイクルによる熱疲労
高温/低温の温度変化が繰り返される環境下で、MLCCとプリント基板の熱膨張係数の差により、はんだ接合部に熱応力が加わることで発生します。また、はんだ付け工程において、温度管理が不十分であったりすることでも発生します。
(2) 鉛フリーはんだ
環境配慮により使用されるようになった鉛フリーはんだは、硬くて脆い性質があり、従来の共晶はんだと比べて、はんだクラックの発生リスクが高いので注意が必要です。
はんだクラック対策に特に注意が必要なアプリケーションと基板
図3:はんだクラック対策が必要なアプリケーション
自動車・乗り物(エンジンルーム)
屋外設置で長期メンテナンスフリーが
要求されるインフラストラクチャー
急加熱(急熱)、あるいは急冷却(急冷)といった製品の周囲に急激な温度変化(熱衝撃)がおこる自動車のエンジンルームなどの高温発熱部周辺への実装では、はんだクラックに特に注意する必要があります。
また屋外設置など温度の変化が繰り返し起こる製品のうちでも、太陽光発電、風力発電、基地局などのインフラストラクチャーは、長期メンテナンスフリーの要求を実現するため、はんだクラック対策にも注意する必要があります。
1 熱衝撃を金属端子が「分散」
メガキャップ(金属端子付き)
図4:メガキャップの構造
メガキャップとは端子電極に金属端子を取り付けたMLCCで、単体型(シングル)とスタック型(2段積み:ダブル)があります(図4)。
耐熱衝撃に対する接合強度
TDKのメガキャップは、はんだクラックに対してきわめて高い効果を有しています。図5は3000サイクルの熱衝撃に対する断面比較を行ったものですが、通常端子品の方がメガキャップよりもはんだが劣化しているのが分かります。特に2000サイクル以上でその差が顕著です。
図5:熱衝撃試験結果(通常品とメガキャップの比較 )
【試験条件】はんだ: Lead Free, Sn/3.0Ag/0.5Cu 熱衝撃:-55+125℃ / 各30分
基板たわみシミュレーションの比較
図6:基板たわみシミュレーション(通常品とメガキャップの比較)
【試験条件】基板たわみ(2mm), 3225サイズ
基板にはんだ接合された通常端子品とメガキャップの基板たわみシミュレーションを図6に示します。
熱衝撃や基板たわみなどによる応力は、はんだ接合部に集中するため、通常品ははんだクラックが発生しやすいのに対して、メガキャップは金属端子が応力を吸収して、はんだクラックの発生を低減します。
【メガキャップの特徴】
- 外部端子に金属端子を採用により熱衝撃や基板たわみによる応力を吸収します。耐振動性も向上しています。
- 2段タイプでは、同容量のコンデンサを2個並列に用いる回路などで実装面積の削減ができます。
- アルミニウム電解コンデンサよりも低ESR、低ESLです。
【主な用途】
- 車載アプリケーション(EPS、ABS、EV、HEV、LEDランプ等)
- 平滑回路、DC-DCコンバータ、LED、HID
- 温度変化の激しい用途、圧電効果対策
2 耐熱衝撃性にすぐれた樹脂電極層を採用、落下にも強い
樹脂電極品
図7:通常端子品と樹脂電極品の端子の違い
通常のMLCCの端子電極はCu下地層にNiとSnのめっきがほどこされています。樹脂電極品は、CuとNiめっき層の間に導電性樹脂層を設けたMLCCです(図7)。
熱衝撃よるはんだ接合部の膨張・収縮にともなう応力、基板たわみ応力などを樹脂層が吸収して、はんだクラックの発生を抑制します。
固着強度低下率が従来品の約半分
TDKの樹脂電極品は、耐熱衝撃性にきわめてすぐれるのが特長です。
図8は熱衝撃後の固着強度試験による接合強度を、通常端子品と樹脂電極品とで比較したグラフです。
3000サイクルの熱衝撃(-55 to 125℃/3000cyc.)データでは、
通常端子品の固着強度は約90%低下するのに対して、導電性樹脂端子型では約50%の低下にとどまります 。
図8:固着強度の低下率(通常端子品と樹脂電極品の比較)
【樹脂電極品の特徴】
- 基板の曲げ、落下衝撃、熱衝撃(ヒートサイクル)に対する抵抗力を改善します。
- 導電性樹脂が外部ストレスを吸収し、はんだの接合部と部品を守ります。
【主な用途】
- 積層セラミックチップコンデンサをはんだ接合した後の基板を取り扱う作業が必要になるユニットの「たわみクラック」対策もしくは予防
- アルミ基板に装着される電気回路、曲げへの強い耐久性が必要で、はんだ接合部の信頼性が問題となるようなSMT用途
- PC、スマートキー、カーマルチメディア、スイッチング電源、基地局、車載アプリケーション(ECU,ABS,xEV等)
【樹脂電極品】製品情報およびサンプル購入
「MLCC のはんだクラック対策」まとめ
- コンデンサと基盤の接合部に応力がかかると「はんだクラック」が発生し、部品の脱落、オープン故障などを引き起こす可能性があります。
- 熱衝撃、温度サイクルにさらされる機器として、自動車のエンジンルームやその他の熱源をもった機器、メンテナンスフリーを実現するインフラストラクチャー、かたくてもろい鉛フリーはんだによる接合には特に注意が必要です。
それぞれの製品の特長について、表9にまとめました。
お客さまの用途にあった製品をお選びいただき、製品の信頼性の向上にお役立てください。
表9:MLCCのはんだクラック対策の比較