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電源回路向けMLCCソリューション(出力コンデンサの最適構成検証)

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車載分野においては車載ADAS ECUやAutonomous ECUなど高度な画像処理を伴うようなシステムのCPUやFPGAなどはシステムの高性能・高機能化に伴い、高速動作及び大電流駆動が必要となります。 またICT分野においてはサーバーなどの膨大な電力を必要とするセットにおいては大電流化に対応した電源構成必要とされています。上記の様に高性能・高機能化されたシステムの電源ラインにおいては、高速動作・大電流化する傾向にあります。また同時にプロセッサの微細化に伴い低下した公称電圧を狭い許容範囲内に収める電源構成が必要となります。

電気的特性におけるコンデンサ要件

ここで、固定負荷時と負荷変動時の電圧変動の式とイメージ図を以下に示します。
電流の大電流化(Δioutの増加)・高速動作化(dΔiout/dtの増加)に伴い、負荷変動時の電圧変動は固定負荷時の電圧変動と比較して変動幅は大きくなり、所望の電圧範囲内に抑えるためには、大容量、低ESR、低ESLのコンデンサ構成が求められます。

電圧変動算出式
負荷固定時の電圧変動(リップル電圧) 負荷変動時の電圧変動
ΔV out = ΔIL × ESR + ESL × Vin + ΔIL ΔV out = Δiout × ESR + ESL × dΔiout + 1 ∫ Δioutdt
L 8 × c × Fsw dt c
負荷電流急変時の電圧変動のイメージ図

DC-DCコンバータの電流供給が負荷変動時に対して追従できない場合に、
そのバックアップとして働き、電源が追従するまでに必要な電流を負荷に供給します。

従来より高速動作・大電流におけるラインでは電源の安定化、瞬時の電力供給のために導電性高分子コンデンサのような大容量のコンデンサが多数使われます。
本資料では従来使用している導電性高分子コンデンサから低ESR、低ESLを特徴とするMLCCに置換することによる電圧変動の抑制効果を電源の安定性(周波数特性)も含めて検証します。

出力コンデンサ 最適構成検証

下記評価条件において以下①~②の2構成において最適な出力コンデンサ構成を検証します。
以下の評価条件、項目にて検証します。

出力コンデンサ構成
出力コンデンサ構成
合計容量 [μF] 990 1000
導電性高分子コンデンサ
(2.5V 7343 330μF)
3pcs
MLCC
CGA6P1X7T0G107M250AC
(4.0V 3225 100μF)
車載対応品 量産中
10pcs

評価条件

  • ◆ 入力電圧:12V
  • ◆ 出力電圧:1.5V
  • ◆ スイッチング周波数:400kHz
  • ◆ 負荷電流(Δiout):30A
  • ◆ スルーレート(Δiout/dt):100A/μsec
評価項目:インピーダンス/ESR 特性

MLCCは導電性高分子コンデンサと比べて優れたESR、ESL特性を持っています。
導電性高分子コンデンサからMLCCに置換することでESR、ESLを低減させることができます。

負荷固定時と負荷変動時における電圧変動波形

負荷固定時、負荷変動時共に構成②MLCCで電圧変動を抑制することが可能です。
「インピーダンス/ESR特性」で示した通り、構成②MLCCは低ESR,低ESLが可能となり電圧変動の抑制が可能です。

構成 導電性高分子コンデンサ MLCC(位相補償調整後)
品名/仕様 2.5V 7343 330μF x3pcs CGA6P1X7T0G107M250AC x10pcs
4.0V 3225 100μF
合計容量 [μF] 990 1000
固定負荷時
電圧変動[mV]

Δiout:30A
負荷変動時(立上り)
電圧変動[mV]

Δiout:0A→30A
Δiout/dt:100A/μs

MLCC搭載を増やすことによる低ESRの影響と安定性に関して

電圧変動の抑制にはMLCCを搭載数を増やす事が有効であることを示しましたが、一般的にMLCCの搭載数を増やすことによる低ESRの影響により、電源ICの仕様によっては安定性は低下する傾向にあります。そのため電源ICの周波数特性であるボード線図をFRA(周波数特性分析器)等で取得・確認することにより電源の応答性と安定性の関係を確認することが重要となります。また安定性の調整は、下記に示す電源回路ブロック図の外部位相補償回路やフィードバック部にあるコンデンサや抵抗の定数を調整することが一般的です。

*具体的な調整方法等はご使用される電源ICによって異なります。調整方法等はICメーカーに直接お問い合わせください。

ボード線図による測定例
測定時におけるポイントと電圧変動に与える影響
項目 ポイント 電圧変動に与える影響
クロスオーバー周波数 高い方が高速動作
⇒応答性に影響
電圧変動を低減
位相余裕/ゲイン余裕 高い方が安定動作
⇒安定性に影響
リンギングや異常動作を防止
電源回路ブロック図

余裕度が不十分な場合の対策例:位相補償部の調整

位相補償部の調整による電圧変動時の波形を以下に示します。
調整前後と比較してクロスオーバー周波数を43kHzから63kHzに高速化したことにより、電圧変動は31mV低減しました。
また調整後は位相余裕度が30degから53degに大きくなっており、調整前に見られたリンギングの波形が見られないことから安定性も改善していることが判ります。
FRA(周波数特性分析器)をお持ちでない場合、波形観測時にリンギングや発振が発生していないかが安定性の目安となりますので、実測時にご確認ください。

MLCC 位相補償 調整前 調整後
固定負荷時
電圧変動[mV]

Δiout:30A
負荷変動時(立上り)
電圧変動[mV]

Δiout:0A→30A
Δiout/dt:100A/us
リンギング有無が安定性の目安になります

出力コンデンサ 最適構成検証 まとめ

評価結果をまとめると以下の通りとなります。

  • 大電流・高スルーレート環境になると負荷急変時の電圧変動は出力コンデンサのESR、ESL成分による影響が大きくなります。
    MLCCは低ESR,低ESLが可能となり電圧変動の抑制が可能です。
  • 一般的にはMLCCの低ESR化により安定性(位相余裕度)が低くなる傾向にありますが、その場合は位相補償回路の定数を見直す事をご検討ください。
  • 出力コンデンサの構成設計にあたっては、電圧変動だけではなく、電源の安定性も考慮した上で最適化する必要があります。
  • 高信頼性が要求させるセットにおいてもTDKの車載対応大容量MLCCを使用するより電気的特性と信頼性を確保することが可能です。
  • 使用回路に求められる電気的性能や、実装面積制限、員数制限など、諸制約に応じて、最適な部品選定が出来るようにTDKでは豊富なラインナップを揃えています。TDK製品ラインナップやデータシート、技術支援ツールなど弊社Webホームページにてご確認頂けます。
出力コンデンサ構成 導電性高分子コンデンサ MLCC
品名/仕様 2.5V 7343 330μF x3pcs CGA6P1X7T0G107M250AC x10pcs
4.0V 3225 100μF
合計容量 [μF] 990 1000
負荷固定時 電圧変動[mV]
Δiout:30A
61 12
(-80%)
負荷立上り時 電圧変動[mV]
Δiout:30A
Δiout/dt:100A/μs
179 95
(-46%)