3端子フィルタ(電源ライン用貫通型フィルタ)によるDC-DCコンバータ入力ラインのノイズ対策
目次
入力フィルタ 基本構成
DC-DCコンバータの入力ラインはスイッチング時の基本周波数からなるN次高調波やスイッチングノイズによる入力電圧変動によって大きなノイズが発生します。このノイズはコモンモードとノーマル(ディファレンシャル)モードがあり、ノイズモードに応じて適切な部品を選定する必要があります。
図1に示した通り、設計初期段階としてはノーマルモードノイズ対策についてはコンデンサとインダクタによって構成されるC+L+Cによるπ型フィルタが配置できるパターン構成が望ましいです。また、コモンモードノイズ対策においてはコモンモードフィルタ(CMF)が有効です。
ノーマル(ディファレンシャル)モードノイズとコモンモードノイズについて
伝導ノイズにはノーマル(ディファレンシャル)モードノイズとコモンモードノイズの2種類があります。ノーマルモードノイズは回路ライン間に発生して逆相に流れ、コモンモードノイズは回路ラインとGNDの間に発生して同相に流れます。ノイズ対策を行う場合はどのモードで発生しているかを確認し、適切な対策部品を使用する必要があります。
ノーマルモードノイズにはインダクタ、コンデンサが使用され、コモンモードノイズにはコモンモードフィルタが使用されます。
各フィルタ構成によるノイズ抑制効果検証の条件
DC-DCコンバータのスイッチング周波数が高周波化になるとFM帯のノイズレベルが大きくなります。通常π型フィルタのコンデンサは2端子コンデンサを使用しますが、低ESLを特徴とする3端子貫通型フィルタを搭載することによりさらなるノイズ抑制が可能です。今回は以下評価内容に関して、3構成のπ型フィルタを比較検証します。
伝導ノイズ電圧法についてはノーマルモード と コモンモードに分離させ、フィルタ効果を比較検証します。
伝導ノイズ電圧法に関しては3構成共にコモンモード対策として弊社コモンモードフィルタを搭載した状態で測定しています。
評価内容
- ■DC-DCコンバータの条件
入力電圧:12V
出力電圧:5V
スイッチング周波数:2MHz
出力電流:2A - ■評価項目
1)π型フィルタの伝達特性(S21)
2)伝導ノイズ電圧法
評価回路
評価構成
π型フィルタ構成 | 構成1:フィルタ無し | 構成2:コンデンサ(2端子) | 構成3:3端子フィルタ(貫通型フィルタ) |
配線イメージ | |||
C1 | - | 3.2mm×1.6mm, 4.7μF,35V | YFFシリーズ 3.2mm x 1.6mm,1μF,100V,6A Feed-Thru接続* |
L1 | - | 2.0mm×1.2mm,220Ω at 100MHz,3A | 2.0mm×1.2mm,220Ω at 100MHz,3A |
C2 | - | 3.2mm×1.6mm,4.7μF,35V | YFFシリーズ 3.2mm x 1.6mm,1μF,100V,6A Feed-Thru接続* |
*Feed-Thru接続に関しては以下リンクを参照ください。
各フィルタ構成によるノイズ抑制効果検証結果
各フィルタ構成によるノイズ抑制効果検証結果から、3端子フィルタ(貫通型フィルタ)は高周波領域で減衰効果が高いことがわかります。
ノイズレベルは通常ノーマルモードがコモンモードを上回ります。
ノーマルモード対策には3端子貫通型フィルタを搭載したπ型フィルタがFM帯を含む幅広い周波数帯域のノイズ抑制に非常に効果があります。
まとめ
DC-DCコンバータは高速スイッチング化に伴い、通常、入力ラインに大きな高周波ノイズが発生します。そのため、特にFM帯を含む高周波ノイズ対策が重要です。
その際、ノイズ対策を行う上でノーマルモードとコモンモードの切り分けが重要であり、ノイズモードに応じて適切な部品選定が必要です。
通常、DC-DCコンバータの入力ラインのノイズはノーマルモードがコモンモードを上回ります。そのため、ノーマルモードに効果的なπ型フィルタの構成を推奨します。
さらに、π型フィルタで使用されるコンデンサに3端子貫通型フィルタを使用することで、高周波ノイズへの抑制効果がいっそう高まります。