ECUの省スペースを実現する、小型化と高特性の両立
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アプリケーションノート
きわめて過酷なノイズ環境にある自動車では、車載LANのEMC対策としてコモンモードフィルタが使用されます。TDKではECUの回路基板の省スペース化という市場要求に応え、実装面積を大幅削減する小型・高特性の車載LAN用コモンモードフィルタACT1210シリーズを開発しました。



図1 代表的な車載LANの構成

図1 代表的な車載LANの構成

電装機器の誤動作を防止するためのEMC対策部品

ECUはボディ系、安全系、パワートレイン系、マルチメディア・情報通信系に大別され、センサやアクチュエータなどから得られた情報は、ゲートウェイを通じてこれらのECUで共有され、安全・快適・省エネ走行を維持します。初期の自動車電装の制御は、1対1接続の個別制御で行われていたため、高機能化とともに接続するワイヤハーネスが増加し、軽量化の支障となっていました。この問題を解決したのがCANに代表される車載LANです。電装機器間接続のネットワーク化を図ることにより、高機能化への対応とともに、ワイヤハーネス量の削減を可能にしました。

図2 エミッション問題とイミュニティ問題

図2 エミッション問題とイミュニティ問題

EMI(発生ノイズ対策)とEMS(侵入ノイズ対策)の双方を両立させるのがEMC対策である。

自動車は点火プラグからの輻射ノイズ、モータやオルタネー タからのサージノイズなど、さまざまなノイズの発生源となっています。電装機器の誤動作111を防ぐために、輻射ノイズを抑制するEMI対策(エミッション対策)と、侵入ノイズに対する耐性を高めるEMS対策(イミュニティ対策)が求められます。この双方を両立させるという考え方に立つのがEMC対策です。ECUをつなぐケーブルは、ノイズを輻射したり、ノイズを拾ったりするアンテナとして機能します。自動車用EMC対策部品にはさまざまな種類がありますが、差動伝送方式が採用されているCAN(高速)やFlexRay車載LANにおいて、こうしたノイズから電装機器の誤動作を防止するための最も確実で効果的な対策は、車載LANの各ノードにコモンモードフィルタを装着することです。

TDKの車載LAN用コモンモードフィルタには、トロイダルコアに巻線をほどこしたタイプと、ドラムコアに巻線をほどこしてからプレートコアを取り付けたタイプがあります。ドラムコア・タイプはトロイダルコア・タイプとくらべて小型であることを特長としますが、自動車の電子制御の高機能化とともに、1つの基板に多数のコモンモードフィルタが搭載されるようになり、さらなる小型化を要求されるようなりました。この市場要求に応えて開発したのがACT1210シリーズです。

独自構造と新フェライト材により小型化を達成

TDKの新製品ACT1210シリーズは、4532形状(4.5×3.2mm)の従来製品ACT45Bシリーズの実装面積を約44%、容積を約50%削減した3225形状(3.2×2.5mm)のコモンモードフィルタです。しかし、単に形状を小型化するだけではコモンモードフィルタとしての特性は低下してしまいます。そこで、TDKでは小型化と高特性の確保を両立させるために、構造面と材料面から新たな技術を投入しました(図3)。

図3 小型化とともに低抵抗化を実現したTDKのソリューション

図3 小型化とともに低抵抗化を実現したTDKのソリューション

まず、低磁気抵抗化を図るために従来製品と異なる独自構造を採用しました。磁気抵抗とは電気回路における電気抵抗に対応するもので、磁気回路(磁路)における磁束の通りにくくさを表します。磁気抵抗はコイルの巻数の2乗に比例し、インダクタンスに反比例します。つまり、インダクタンスが大きいほど、磁気抵抗は低くなります。しかし、ドラムコア・タイプのコモンモードフィルタにおいては、一般的に小型化を図ると、ドラムコアとプレートコアの接触面積が狭くなるので、インダクタンスも低下し、磁気抵抗が高まってしまいます。

そこで、TDKではドラムコアとプレートコアの接触面積を広くするために、継線接合部の位置に着目しました。継線接合部は従来製品ではプレートコアとドラムコアの間に配置されていましたが、これをドラムコア下部へ移すことによって接触面積を拡大させ、小型化と低磁気抵抗化を両立させました。

また、磁気抵抗はフェライトのコア材料の透磁率に反比例します。つまり、透磁率が高いほど、磁気抵抗は低くなります。TDKでは先進の材料技術により透磁率を高めた新フェライト材を開発し、構造面の工夫とともに低磁気抵抗化を達成しました。

まとめ

ACT1210シリーズの輻射ノイズ試験(CISPR25 Class5)データを図4に示します。ACTシリーズの装着により、輻射ノイズは限度値(QP)以下に抑えられています。図5は車載電装機器に接続されたハーネスに強い電磁ノイズが誘起された際の耐性を評価するBCI試験のデータです。こちらも、きわめて安定した特性を示しています。

図4 ACT1210シリーズの輻射ノイズ(エミッション)試験

図4 ACT1210シリーズの輻射ノイズ(エミッション)試験

図5 BCI試験(イミュニティ)におけるACT1210シリーズの効果

図5 BCI試験(イミュニティ)におけるACT1210シリーズの効果

テレマティクスの進展とともに、今後、無線通信技術を利用したカーコネクティビティの拡大が見込まれており、EMC対策はますます重要になっています。また、過酷な条件で使われる車載電子部品では、一般の電子機器とくらべて、はるかにすぐれた耐振動性、耐衝撃性、耐熱性などが求められます。TDKの車載LAN用コモンモードフィルタACT1210シリーズは、先進の自動巻線システムの導入などにより、高安定性・高信頼性も特長としています。

主な特長・用途・仕様・電気的特性

主な特長

  • 独自のコア構造と新開発フェライト材の採用、および高精度自動巻線システムなどにより、小型化と低磁気抵抗化(高コモンモードインダクタンス化)を実現
  • エンジンルームの過酷環境など、広い使用温度範囲に対応(-55~+150°C)
  • 高耐熱ワイヤの採用によるすぐれた耐熱性、高精度自動巻線システムによる高安定性・高信頼性

主な用途

  • CAN、FlexRayなどの車載LANシステム用コモンモードフィルタ

主な仕様

製品名 コモンモードインピーダンス
at 10MHz[Ω]min.
コモンモードインダクタンス
at 100kHz[μH]+50/30%
直流抵抗
[Ω]max.
定格電流
DC[A]max.
ACT1210-110 300 11 0.4 0.30
ACT1210-220 500 22 0.5 0.25
ACT1210-510 1000 51 0.7 0.20
ACT1210-101 2200 100 1.5 0.15