アプリケーションノート PTC過熱検知センサの使い方

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How to use PTC limit temperature sensors

PTCサーミスタには、温度がある値を超えると抵抗値が急激に高くなる性質があります。この性質は、過熱から回路を保護するために規定の高温を検出する温度保護素子としての使用に適しています。
TDKではPTCサーミスタを用いた温度保護素子として、各種タイプのPTC過熱検知センサおよびモータ保護センサを提供しています。本記事では、その代表的な応用例をご紹介します。

PTC過熱検知センサの特長

PTCサーミスタは高い正の温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)をもつ特殊な半導体セラミックスをベースにした温度依存性の抵抗です。室温時には比較的低い抵抗値を示しますが、外部熱源によって特定の温度(キュリー温度)以上に加熱されると、抵抗値は急増します。
その特有な性質により、PTCサーミスタは部品やデバイスを過熱から保護するために使用されます。
TDKの高品質で信頼性の高いPTC過熱検知センサの幅広いポートフォリオには、SMD、リード付きディスク、ビス止めタイプなどが含まれているため、ほぼすべての過熱検知要件に適した部品が利用できます。モータ保護センサは特殊形状のPTC過熱検知センサで、電気モータの巻線(ステータ側)に直接組み込むことができます。

以下に、PTC過熱検知センサおよびモータ保護センサの応用例をご紹介します。
※文中や図中のPTC過熱検知センサおよびモータ保護センサは、PTCサーミスタという略表記で説明しています。また、回路図は簡略化しています。

PTC過熱検知センサの応用例

応用例:トランジスタ回路の過熱保護

周囲温度の上昇やトランジスタ自体の発熱による過熱から保護するための簡便な方法として、PTC過熱検知センサが使用できます。
下図のようなトランジスタ増幅回路の場合、定格以上の温度ではトランジスタの特性が劣化するおそれがあります。
このような回路に用いられるPTCサーミスタは、周囲温度の上昇を検知して高オーム状態になります。その結果、トランジスタのベース‐エミッタ間電圧が低下して、トランジスタは負荷電流を遮断します。周囲温度が正常なレベルに戻るとPTCサーミスタは元の低抵抗状態に戻ります。

図1 トランジスタ回路の過熱保護

応用例:パワー半導体の過熱保護

下図はヒートシンク(放熱器)と熱結合させたPTCサーミスタによる過熱保護回路例です。
ある温度を超えると、PTCサーミスタの抵抗が大きく上昇し、パワートランジスタのベース電圧が低下します。その結果、コレクタ電流が減少して発熱が抑制され、
パワートランジスタは過熱から保護されます。

図2 パワー半導体の過熱保護

応用例:単相/三相誘導モータの過熱保護

産業機器などの数多くの電子機器で使用されている単相および三相誘導モータには、過電流、過熱などに対する保護素子が使われています。
特に、モータを過熱から保護するためにPTCサーミスタを用いたモータ保護センサが使われます。下図のように、3つのモータ保護センサを、モータの巻線(ステータ側)に熱結合させることで、高信頼性の過熱保護が実現できます。PTCサーミスタが所定の温度まで上昇すると、トリッピングユニット(自動回路遮断器)が作動して電源を遮断します。

図3 三相誘導モータの過熱保護

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