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車載SerDes(LVDS)同軸ケーブル伝送に適したPoCフィルタ用インダクタとは?

安全走行支援システムの高性能化や、快適性向上のため車載伝送インターフェースの高速化が進んでいます。車載カメラなどの画像伝送に用いられるSerDes伝送 (LVDS)においては、ワイヤーハーネスの重量を軽減するために1本の同軸ケーブルで信号伝送と電源供給をおこなうPoC(Power over Coax)が主流になっています。車載カメラの進化は続いており、カメラのレンズの曇り除去のためのヒーター機能や、より高精細な画像のために、電流容量の増加や画像伝送の高速化が進んでいます。
本記事では、PoCフィルタ用インダクタとチップビーズを用いた使用例と効果についてご紹介します。

PoC(Power over Coax)とは

PoCとは、Power over Coax の略で、一本の同軸ケーブルに信号と直流電源を同時に伝送することで、配線本数を減らすことことができる伝送システムです。
ケーブルを同時に伝送する広帯域の信号と直流電源を分離するために、信号ライン側には直流をカットするコンデンサを、電源ラインには広帯域の信号の流入を防ぐためのフィルタ用インダクタを組み合わせて使用することが特徴となります。
現在、下記に示すように、ICメーカーや規格団体が主導する通信規格が多数あり、それぞれの信号伝送速度や供給電力に合わせて、適切なインダクタを選定する必要があります。

規格名 正式名称 IC サプライヤー / アライアンス
GMSL Gigabit Multimedia Serial Link Analog Devices (formerly Maxim Integrated)
FPD-Link Flat Panel Display Link Texas Instruments
HSMT High-Speed Media Transmission China Local SerDes Supplier
ASA-ML ASA Motion Link Automotive SerDes Alliance
MIPI A-PHY MIPI A-PHY Mobile Industry Processor Interface Alliance
GVIF Gigabit Video Inter Face Sony
CLL-BD Clockless Link-BD Rohm
表 1: PoCをサポートする主なSerDes規格一覧
PoC伝送システム概要
図 1: PoC伝送システム概要

PoC(Power Over Coax)の高速化・大電力化

カメラ、レーダー装置などのセンシング装置はセンシング精度向上に伴い情報大容量化・高機能化・多機能化し、機器の伝送速度の高速化及び大電力化が必要となっています。そのため、PoCへの要求は伝送速度が約1.5Gbpsから10Gbps以上へ高速化、電源供給は約1Wから約5W 程度への大電力対応が要求されています。

自動運転用カメラモジュール/ADASのケーブル配線
図 2: 自動運転用カメラモジュール/ADAS

PoCフィルタに最適化したインダクタ(コイル)とは?

車載用カメラモジュールなどはスペースに制限がある場合が多く、製品小型化や実装面積の縮小が要求されます。一般的なインダクタではチップビーズと合わせて員数が4個程度必要になりますが、インダクタ員数を削減するにあたり、広帯域でインピーダンス周波数特性を維持できる製品が必要となります。同時に高温環境で特性を維持し、最大150℃で動作保証する必要あります。

一般的なPoCフィルタ構成例
図 3: 一般的なPoCフィルタ構成例

実装面積を37%削減

上述の一般的なPoCフィルタ構成例と同条件の場合、TDKのPoCフィルタ用インダクタではインダクタ1個とチップビーズ2個で実現することができます。それにより、実装面積で37%程度に減らすことが可能です。

Filter 1 Filter 2 Filter 3 Filter 4 Rdc[Ω] 実装面積[mm²]
一般的なインダクタ NLCV32T-100K-EFRD/2kΩ NLCV25T-4R7M-EFRD/2kΩ Chip Beads
MPZ1608S102ATD25
Chip Beads
MMZ1608Y152BTD25
2.09 24.95

-50%

-37%

TDK推奨 ADL3225VT-100M-TL000 / 1.2kΩ Chip Beads
MPZ1608S102ATD25
Chip Beads
MMZ1608Y152BTD25
不要 1.05 15.83

*例)4Gbps 300mA用 PoCフィルター の場合

表 2: TDK推奨PoCフィルタ用インダクタ

広帯域でインピーダンス特性を維持

Magnitude Power Control Signal Video Signal Frequency 一般的な電源回路用インダクタ
一般的な電源回路用インダクタでは2~3個必要
高インピーダンス帯域が狭いため、 リップルが大きい
PoCフィルタ用インダクタ ADLシリーズ
高インピーダンス帯域が広いため、
リップルが小さい
図 4: PoCフィルタ用インダクタの効果

TDKのPoCフィルタ用インダクタのご提案

TDKのPoCフィルタ用インダクタは下の図5に示すように、許容電流やフィルタ要求などのご使用条件に応じたPoCフィルタ用インダクタを豊富に取り揃えています。(下記表:「TDKのPoC(Power over Coax)回路向けフィルタ用インダクタ」参照)
小型で高周波帯域をカバーするMLJ1608-Gシリーズはフィルタの省スペース化に貢献します。
ADLシリーズは広帯域に対応した製品で、ADLシリーズを使用することでフィルタのコイル員数を削減することができます。
さらに広帯域をカバーする1コイルソリューションとしてADL4524VLシリーズ、ADL8030VAシリーズがあります。
ADL8030VAは既に量産開始しており、ADL4524VLは開発中です。
また、大電流用として、ADL4532VKシリーズ、ADL3225VFシリーズがあります。

TDKのPoCフィルタ用インダクタを使用するとフィルタを1つ減らせる

※R1~R3については組み合わせるインダクタ、チップビーズによって異なりますのでお問合せ下さい。

図 5: PoCフィルタ用インダクタの種類

TDKのPoC(Power over Coax)回路向けフィルタ用インダクタ

車載インタフェースの高速化・高度化に伴い、SerDes伝送の車載カメラシステムなどでは、1本のラインに信号と電源を重畳させるPoC(Power over Coax)化が進行しています。PoCでは広帯域の信号と電源を分離するために、インダクタを用いた広帯域で高インピーダンスを確保するフィルタが必要です。TDKでは多彩な製品ラインナップにより、使用される回路の電流容量や通信速度に合わせたフィルタ構成のご提案が可能です。

ADL4532VK

+

FLP5535

+

ADL4532VK

+

ADL3225VF

+
+

ADL3225VF

ADL4532VK

+

ADL3225VF

PoC current (mA)
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
0
2
4
6
8
10
12
Bitrate (Gbps)

上記のソリューションマップは一例になります。
お客様の使用環境やご要望に応じて最適なソリューションをご提案いたします。

表 3: ソリューションマップ

上記のPoCフィルタの組み合わせは、ICメーカーのリファレンスになっているTDK製品や、TDKが推奨するフィルタの組み合わせの一例です。その他の条件での最適なPoCフィルタの組み合わせを選択できるセレクションツールです。

チップセット別のリファレンスデザイン掲載製品一覧

各チップセットのリファレンスデザインに掲載されているTDK製品の一覧をPDFでダウンロードしていただけます。ご希望の方は、右記フォームに必要事項を記入の上、「ダウンロード」ボタンを押下ください。

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