車載SerDes(LVDS)同軸ケーブル伝送に適したPoCフィルタ用インダクタとは?
本記事では、PoCフィルタ用インダクタとチップビーズを用いた使用例と効果についてご紹介します。
PoC(Power over Coax)とは
PoCとは、Power over Coax の略で、一本の同軸ケーブルに信号と直流電源を同時に伝送することで、配線本数を減らすことことができる伝送システムです。
ケーブルを同時に伝送する広帯域の信号と直流電源を分離するために、信号ライン側には直流をカットするコンデンサを、電源ラインには広帯域の信号の流入を防ぐためのフィルタ用インダクタを組み合わせて使用することが特徴となります。
現在、下記に示すように、ICメーカーや規格団体が主導する通信規格が多数あり、それぞれの信号伝送速度や供給電力に合わせて、適切なインダクタを選定する必要があります。
規格名 | 正式名称 | IC サプライヤー / アライアンス |
GMSL | Gigabit Multimedia Serial Link | Analog Devices (formerly Maxim Integrated) |
---|---|---|
FPD-Link | Flat Panel Display Link | Texas Instruments |
HSMT | High-Speed Media Transmission | China Local SerDes Supplier |
ASA-ML | ASA Motion Link | Automotive SerDes Alliance |
MIPI A-PHY | MIPI A-PHY | Mobile Industry Processor Interface Alliance |
GVIF | Gigabit Video Inter Face | Sony |
CLL-BD | Clockless Link-BD | Rohm |
PoC(Power Over Coax)の高速化・大電力化
カメラ、レーダー装置などのセンシング装置はセンシング精度向上に伴い情報大容量化・高機能化・多機能化し、機器の伝送速度の高速化及び大電力化が必要となっています。そのため、PoCへの要求は伝送速度が約1.5Gbpsから10Gbps以上へ高速化、電源供給は約1Wから約5W 程度への大電力対応が要求されています。
PoCフィルタに最適化したインダクタ(コイル)とは?
車載用カメラモジュールなどはスペースに制限がある場合が多く、製品小型化や実装面積の縮小が要求されます。一般的なインダクタではチップビーズと合わせて員数が4個程度必要になりますが、インダクタ員数を削減するにあたり、広帯域でインピーダンス周波数特性を維持できる製品が必要となります。同時に高温環境で特性を維持し、最大150℃で動作保証する必要あります。
実装面積を37%削減
上述の一般的なPoCフィルタ構成例と同条件の場合、TDKのPoCフィルタ用インダクタではインダクタ1個とチップビーズ2個で実現することができます。それにより、実装面積で37%程度に減らすことが可能です。
Filter 1 | Filter 2 | Filter 3 | Filter 4 | Rdc[Ω] | 実装面積[mm²] | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般的なインダクタ | NLCV32T-100K-EFRD/2kΩ | NLCV25T-4R7M-EFRD/2kΩ | Chip Beads MPZ1608S102ATD25 |
Chip Beads MMZ1608Y152BTD25 |
2.09 | 24.95 |
-50% |
-37% |
|||||
TDK推奨 | ADL3225VT-100M-TL000 / 1.2kΩ | Chip Beads MPZ1608S102ATD25 |
Chip Beads MMZ1608Y152BTD25 |
不要 | 1.05 | 15.83 |
広帯域でインピーダンス特性を維持
TDKのPoCフィルタ用インダクタのご提案
TDKのPoCフィルタ用インダクタは下の図5に示すように、許容電流やフィルタ要求などのご使用条件に応じたPoCフィルタ用インダクタを豊富に取り揃えています。(下記表:「TDKのPoC(Power over Coax)回路向けフィルタ用インダクタ」参照)
小型で高周波帯域をカバーするMLJ1608-Gシリーズはフィルタの省スペース化に貢献します。
ADLシリーズは広帯域に対応した製品で、ADLシリーズを使用することでフィルタのコイル員数を削減することができます。さらに広帯域をカバーするADL4524VLシリーズ、ADL8030VAシリーズを開発中です。
また、大電流用として、ADL4532VKシリーズ、ADL3225VFシリーズの開発も進めております。
TDKのPoC(Power over Coax)回路向けフィルタ用インダクタ
車載インタフェースの高速化・高度化に伴い、SerDes伝送の車載カメラシステムなどでは、1本のラインに信号と電源を重畳させるPoC(Power over Coax)化が進行しています。PoCでは広帯域の信号と電源を分離するために、インダクタを用いた広帯域で高インピーダンスを確保するフィルタが必要です。TDKでは多彩な製品ラインナップにより、使用される回路の電流容量や通信速度に合わせたフィルタ構成のご提案が可能です。
FLP5535 +
ADL4532VK +
ADL3225VF ADL4532VK +
ADL3225VF |
||||||||
PoC current (mA) | 1600 |
|||||||
1400 |
||||||||
1200 |
||||||||
1000 |
||||||||
800 |
||||||||
600 |
||||||||
400 |
||||||||
200 |
||||||||
0 |
0 |
2 |
4 |
6 |
8 |
10 |
12 |
|
Bitrate (Gbps) |
上記のPoCフィルタの組み合わせは、ICメーカーのリファレンスになっているTDK製品や、TDKが推奨するフィルタの組み合わせの一例です。その他の条件での最適なPoCフィルタの組み合わせを選択できるセレクションツールです。