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製品 & テクノロジー / プロダクトオーバービュー
2025年03月
プロダクトオーバービュー

20Gbpsの高速差動伝送に対応した小型コモンモードフィルタ TCM06Uシリーズ

AI機能の搭載や、ディスプレイやカメラの高精細化といったデジタル技術の革新により、ノートパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が取り扱うデータ量は年々増加しており、信号伝送においても高速化大容量化が進んでいます。一方、機器から発生するノイズも同時に高周波となっており、他デバイスへの影響や伝送信号の品質劣化への対応が求められています。

このような高速差動伝送のノイズ対策製品として最適な、小型コモンモードフィルタ TCM06Uシリーズを紹介します。

高速差動伝送の種類と特徴

デジタル機器内部や、機器間における大容量のデータや映像信号のやりとりは、一般的に差動伝送という通信方式が採用されています。

差動伝送とは、互いに逆位相な2つのデジタル信号を伝送し、その差分を受信信号として取り出す方式です。同位相なコモンモードノイズをキャンセルできるため、ノイズ耐性が強いことや、信号電圧が低いことにより高周波化しやすいため、高速伝送が可能であることが特徴となります。

差動伝送方式を用いた高速通信には、USBやHDMI といった一般的によく使用されているものや、機器内部の接続に使用されるものなど、いくつもの規格があります

図1:差動伝送方式の特徴
分類 規格の種類 特徴
外部インターフェース USB, HDMI, Display Port, Thunderbolt, etc. 機器間の接続に使用され、主にユーザーがケーブルの挿抜を行う通信
内部インターフェース mipi, LVDS, etc. 機器内の接続に使用され、ユーザーの目に触れない通信
表1:差動伝送インターフェースの種類

USB 規格の高速化

次に、高速差動伝送の高速化について説明します。以下に、USB規格について世代ごとの信号速度のトレンドを示します。

USB は、2000年にUSB 2.0 の規格策定されて以降、パソコンと周辺機器を接続するインターフェースとして大きく普及しました。その後世代が上がるごとに高速化が進み、現在発売されているパソコンなどの電子機器については、伝送速度がUSB 2.0 のおよそ100倍となるUSB4に対応したモデルが増えています。また、2022年に策定された最新のUSB4 Version2 の規格では、最大120Gpbs の伝送を1本のケーブルで通信可能とされており、今後、対応した機器の発売が見込まれています。

最大伝送速度 最大レーン数 1レーンあたりの伝送速度
USB4 40Gbps 2 20Gbps
USB 3.2 Gen2 20Gbps 2 10Gbps
USB 3.2 Gen1 10Gbps 2 5Gbps
USB2.0 480Mbps 1 480Mbps
表2:USB規格の種類と伝送速度

コモンモードフィルタの役割

ノイズ耐性の強い差動伝送方式ですが、実際には伝送線路の不整合など物理的・電気的な信号線路のズレにより、信号の位相ずれが生じます。これをスキューと言います。スキューが発生するとコモンモードノイズをキャンセルできなくなり、信号周波数に応じた高周波のノイズを発生させる要因となります。このような高周波のノイズは、Wi-FのようなRF信号の受信感度を低下させてしまうため対策が必要です。

コモンモードフィルタは、2つの磁気結合したインダクタが内蔵されており、コモンモードノイズによる磁束の変化を抑制する誘導起電力が発生することでコモンモードノイズを抑制しスキューを補正します。

一方、差動信号はディファレンシャルモードなので、2つのインダクタ間で発生する磁束の変化は相殺するため、信号電流には影響なく伝送することができます。

以上のように、コモンモードフィルタを使用することで、コモンモードノイズだけを抑制し差動信号を通過させることが可能となります。

スキュー補正

スキュー ➡ D+/D- の信号位相ズレ
物理的・電気的な信号線路のズレから信号の位相ズレが生じる
この場合、フィルター等での対策が必要となる

図2:コモンモードフィルタによるスキュー補正効果

コモンモードフィルタの信号品質への影響

上記のように、差動伝送信号のノイズ対策に適したコモンモードフィルタですが、一方でインダクタの性質として、信号の周波数が上がるにつれて、挿入損失が大きくなってしまうため伝送信号を抑制してしまう要因となります。そのため、コモンモードフィルタへの選定においては、ノイズ抑制効果だけでなく信号周波数に合わせて伝送品質に影響を与えない部品を選定する必要があります。

図3:伝送速度に合わせたコモンモードフィルタ選定の重要性

TCM06U シリーズの特徴

TCM06U シリーズは、高いノイズ抑制効果を有しながら、従来製品より高周波信号に対応した製品となります。

  • コモンモードノイズ抑制効果の指標となるコモンモード減衰特性において、それぞれのターゲット周波数において30dB以上の減衰を実現しました。
  • 信号品質を維持する指標となるディファレンシャルモード挿入損失において、従来品(TCM0605Tシリーズ)と比べて大幅に低損失化を実現し、USB4の1レーンに相当する20Gbps の高速信号に対応可能となりました。特に、TCM06UX-020-2Pにおいては、20GHzにおいてー1dB程度と超低損失特性を実現しました。

実際に、20Gbps の高速伝送において、信号波形に影響を与えていないことを確認しています。さらに、意図的にスキューを入れた波形に対しても、コモンモードフィルタの使用によりスキューの補正効果が得られていることを確認しています。

コモンモード減衰特性 (Scc21)

ディファレンシャルモード挿入損失特性 (Sdd21)

図4:TCM06Uシリーズの減衰特性(Scc21)と挿入損失(Sdd21)
図5:TCM06Uシリーズによるスキュー補正効果

まとめ

以上のように、TCM06UシリーズはUSB4といった高速差動伝送信号に対して、信号へ影響を与えずにノイズ対策としてご使用いただく最適な製品となっております。

TDK では、今回ご紹介したTCM06U シリーズの他、それぞれのインターフェースに合わせた特性、業界最小となる0403形状などを取り揃えています。また、高速差動伝送回路においてコモンモードフィルタとあわせて使用されるESD対策部品についてもラインナップしております。ESD対策部品についての技術記事や、インターフェースごとの推奨部品の組み合わせについては下記のリンクをご参照下さい。

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