高電圧対応!車載OBCの高出力化と小型化を支える共振回路用C0G特性コンデンサ
TDKではこのご要望に対応するため、車載品質の定格電圧1250V C0G特性 MLCCを新たにリリースしました。
LLC共振コンバータにおける共振コンデンサの動作例を通じて、定格電圧1250V C0G特性 MLCCをお勧めする理由をご紹介します。
なぜ、共振回路用コンデンサにMLCCが最適か?
以下の特徴をもっており、車載OBCや非接触給電の共振回路用コンデンサとして最適な製品です。
- 高い許容電圧および許容電流
- より少ない員数で共振コンデンサを構成することが可能となり、小型化に貢献します。
- C0G特性:温度やDC電圧、AC電圧に対して静電容量の変化が小さい
- 共振周波数を一定に保つことが可能であり、安定したエネルギーの伝送特性を実現します。また、損失が小さいため発熱の抑制や伝送効率の向上が期待できます。
- AEC-Q200に対応した車載品質
- 車載用電子部品の信頼性試験や認定基準試験の世界的な規格であるAEC–Q200に対応した製品です。
- 許容差はJ公差(±5%)とG公差(±2%)の2種類
- 高精度な共振による伝達効率の向上に貢献します。
評価の目的
LLC共振コンバータは高効率のDC/DCコンバータとして、車載OBCなどで広く使用されています。LLC共振コンバータに使用される共振コンデンサには、1個のコンデンサだけでは耐えることが難しい高い電圧・電流が印加されます。そのため、コンデンサが許容できる電圧・電流を満たすために、多直列・多並列で使用されます。許容電圧が高いコンデンサを使用すると、直列数を削減することが可能になるだけでなく、より少ない並列数で必要な静電容量を実現することが可能となります。
本ソリューションガイドでは、定格電圧1250V C0G特性 MLCCを使用することで実現できるコンデンサバンクの発熱抑制や小型化の事例をご紹介します。
評価回路構成(LLC共振コンバータ)
図1.に、評価に使用したフルブリッジLLC共振コンバータの回路図を示します。
共振コンデンサCrの容量は50nFとし、コンデンサの許容電圧と許容電流を満足するようにコンデンサバンクを構成しました。この共振コンデンサの構成を置換して、下記項目を評価しました。
LLCコンバータ動作条件
入力電圧Vin
出力電圧Vo
出力電力Po
動作周波数Fsw
共振コンデンサCr
:400V
:475V
:4.3kW
:133kHz
:50nF
評価するコンデンサ
・フィルムコンデンサ
・MLCC(C0G特性・定格電圧630V)
・MLCC(C0G特性・定格電圧1250V)
評価項目
・動作波形
・共振コンデンサの表面温度
・実装面積、製品高さ
A社 ・ フィルムコンデンサ | TDK ・ MLCC(C0G/630V) | TDK ・ MLCC(C0G/1250V) | ||
---|---|---|---|---|
外観 | ||||
単品の仕様 | 品名 | - | CGA5L4C0G2J103J160AA | CGA6P1C0G3B103J250AC |
Chip Size (mm) |
13.0×5.0 | 3.2×1.6 | 3.2×2.5 | |
高さ (mm) |
11.0 | 1.6 | 2.5 | |
定格電圧 | 600V(AC) | 630V | 1250V | |
静電容量 | 10nF | 10nF | 10nF | |
種類 | ポリプロピレン | C0G (Class 1) | C0G (Class 1) | |
コンデンサ バンクの仕様 |
総容量 | 50nF | 50nF | 50nF |
直列数 | 2pcs | 2pcs | 1pc | |
並列数 | 10pcs | 10pcs | 5pcs | |
員数 | 20pcs | 20pcs | 5pcs |
動作波形の比較 -異種コンデンサと同等
図2.にLLC共振コンバータを動作させた際にコンデンサバンクに印加される電圧と電流を示します。
コンデンサバンクの構成を変えても、同等の負荷がかかっていることがわかります。
フィルムコンデンサ(10nF) | MLCC(C0G/630V/10nF) | MLCC(C0G/1250V/10nF) | |
---|---|---|---|
構成 | 2直列 10並列 50nF | 2直列 10並列 50nF | 1直列 5並列 50nF |
動作波形 |
|||
電圧 | 882Vpp | 880Vpp | 880Vpp |
電流 | 12.9Arms | 12.8Arms | 12.7Arms |
共振コンデンサ表面温度の比較 -発熱抑制可能
図3.にLLC共振コンバータ動作時のコンデンサバンクの表面温度を示します。
MLCCの発熱はほぼ同等ですが、フィルムコンデンサはMLCCよりも自己発熱が大きいことがわかります。
これはC0G特性のMLCCのESRがフィルムコンデンサのESRよりも小さいことにより、自己発熱が抑えられているためと考えられます。MLCCを使用することでより小さい実装面積で高い電力を扱うことが可能となります。
フィルムコンデンサ(10nF) | MLCC(C0G/630V/10nF) | MLCC(C0G/1250V/10nF) | ||
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外観 | ||||
熱画像 | ||||
コンデンサバンク 最大温度 |
56.0℃ | 38.5℃ | 36.5℃ |
実装面積・製品高さの比較 -実装面積97%減!
図4.にコンデンサバンクを構成した場合の実装面積の比較を示します。
- フィルムコンデンサとMLCC(C0G/630V)を比較すると、同じ員数であっても、MLCCはサイズが小さいために実装面積が90%減少します。
- MLCC(C0G/1250V)は定格電圧が高いため、直列数の削減が可能となります。そのため、同じ静電容量の製品でもより少ない員数で、共振コンデンサの目標容量50nFを実現可能です。
その結果、MLCC(C0G/630V)とMLCC(C0G/1250V)を比較すると、77%の実装面積が減少します。
図5.に製品高さの比較を示します。フィルムコンデンサからMLCCに置換することで低背化と表面実装が可能となります。
まとめ
本ソリューションガイドでは、LLC共振コンバータにおける共振コンデンサを例に挙げて、定格電圧1250V C0G特性 MLCCを使用することで実現できるコンデンサバンクの発熱抑制や小型化の事例をご紹介しました。
- コンデンサバンクを構成するコンデンサをMLCCに変更しても、動作波形はほぼ同等です。
- フィルムコンデンサからMLCCに置換することで、実装面積の省スペース化、低背化、表面実装化、自己発熱の低減を行うことが可能です。
- さらに定格電圧1250V C0G特性 MLCCを使用することで、許容電圧・許容電流を満たしながら、員数減と実装面積を小さくすることが可能です。
このように、定格電圧1250V C0G特性 MLCCの使用は、高い電力をより小さい面積で扱うことが可能となり、高出力OBCの小型化に貢献します。
製品ラインナップ
TDKでは新たに車載品質の定格電圧1250V C0G特性 MLCCをリリースしました。
許容電圧および許容電流が従来製品よりも高く、温度やDC電圧、AC電圧に対して静電容量の変化が小さいため、共振回路用コンデンサとして最適です。
許容差は±5%と±2%の2種類をご用意しております。
ラインナップ表の「NEW」をクリックすると、各製品の詳細情報ページ(許容差±5%)が表示されます。
Chip Size |
CGA5 3216(1206) |
CGA6 3225(1210) |
CGA9 5750(2220) |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R.V. | 2J 630V |
3B 1250V |
3A 1000V |
2J 630V |
3A 1000V |
2J 630V |
||
Cap. | 102 | 1nF | NEW | |||||
122 | 1.2nF | NEW | ||||||
152 | 1.5nF | NEW | ||||||
182 | 1.8nF | NEW | ||||||
222 | 2.2nF | NEW | ||||||
272 | 2.7nF | NEW | ||||||
332 | 3.3nF | NEW | ||||||
392 | 3.9nF | NEW | ||||||
472 | 4.7nF | NEW | ||||||
562 | 5.6nF | NEW | ||||||
682 | 6.8nF | NEW | ||||||
822 | 8.2nF | NEW | ||||||
103 | 10nF | NEW | ||||||
123 | 12nF | |||||||
153 | 15nF | |||||||
183 | 18nF | |||||||
223 | 22nF | |||||||
333 | 33nF | |||||||
683 | 68nF | |||||||
104 | 100nF |
共振コンデンサを選定するための注意点は?
MLCCにはご使用される周波数によって印加可能な許容電圧、許容電流(図7.)がございます。共振コンデンサを選定するにあたっては、Product Center内の各製品ページの許容電圧グラフおよび許容電流グラフをご参照いただき、コンデンサに印加される電圧と電流の両方が、許容電圧および許容電流を超過しないように、コンデンサバンクの構成をご検討ください。
なお、許容電圧グラフ、許容電流グラフは下記条件に基づいて作成されております。
- MLCCに印加される電圧・電流波形は単一の周波数の正弦波を想定しています。
- 自己発熱温度の評価環境は室温、自然対流下となります。
- MLCCが実装される基板は、印加電流に対して十分な放熱能力を持った基板であり、自然対流下の熱平衡状態で評価しています。
- 許容電圧及び許容電流は、上記の条件下でMLCCの自己発熱温度上昇が20℃以下となるように決定されたものです。
- このデータは参考値であり、信頼性を保証するものではございません。
許容電圧と許容電流のデータは、ZIPファイルにて下記よりダウンロードいただけます。