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ソリューションガイド
ワイヤレス充電器やDCDCコンバーターの共振回路に使用されるコンデンサには、従来フィルムコンデンサが使用されてきました。しかし、MLCCの容量拡大と高耐圧化が進んだことでフィルムコンデンサが使用されていた分野でもMLCCへの置き換えが可能となってきております。フィルムコンデンサからMLCCへの置き換えにより小型化や低損失といったメリットがあります。
本ソリューションガイドでは、共振回路としてワイヤレス充電器の測定例をあげ、共振回路に好適なMLCCをご紹介いたします。

コンデンサ種類別の特性

MLCCは誘電体として使用されるセラミック材料の違いにより、種類1(温度補償用)と種類2(高誘電率系)に大別されます。種類2のMLCCは大容量を特長としますが、温度による静電容量の変化率が大きいという短所があります。一方、C0G特性に代表される種類1のMLCCは、高誘電率系ほどの大容量は得られませんが、温度による静電容量の変化率が小さく、周波数特性にもすぐれるため、高い精度が求められる回路などで使用されます。
主要なコンデンサであるアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、MLCC(種類1および種類2)の定格電圧–静電容量対応領域を図1に示します。

C0G特性に代表される種類1のMLCCは従来はフィルムコンデンサの領域に一部が重なる程度でしたが、近年、高耐圧化と大容量化が進んで、重なる領域が急速に拡大しています。

図1 各種コンデンサの定格電圧–静電容量の対応領域

共振回路用コンデンサに求められる特性のポイント

共振回路ではコンデンサとコイルを共振させるため、コンデンサはキーパーツとなります。
共振に使用するコンデンサには、以下のような特性が求められます。

・温度特性に優れること
共振周波数はf=1/(2π√LC)で表されます。そのため、温度変化による静電容量に変化が生じてしまうと共振周波数が変動し、電力効率の低下を招きます。
そのため、温度変化による特性変化が小さいことが重要です。

・耐電圧特性に優れること
コンデンサとコイルが共振して共振回路のインピーダンスが小さくなり大電流が流れるため、コンデンサには大きな電圧が加わります。
そのため、コンデンサには十分高い耐電圧(定格電圧)特性が求められます。

・ESR特性に優れること
コンデンサには大きな電流が流れるため、損失を抑えるために優れたESR特性が求められます。
コンデンサのESRあるいはtanδが小さいほど、コンデンサにおける損失が小さくなります。

上記の条件を満たすコンデンサとして、ポリプロピレンのフィルムコンデンサや種類1のMLCCがあり、共振回路用のコンデンサとして使用されてきました。特に、種類1のMLCCは温度による静電容量の変化が小さく、低損失、小型、低背であることから、フィルムコンデンサからの置き換えニーズが高まっています。

表1 フィルムコンデンサとMLCCの特性比較

ワイヤレス充電器の評価事例

スマートフォン向けのワイヤレス充電器における共振用コンデンサに着目した評価事例をご紹介します。

評価構成
スマートフォン向けのQi対応ワイヤレス充電器
Input:5V/2A
Output:5W

コンデンサの種類を変更した場合に充電器の効率や実装面積にどのような変化が生じるか比較評価しました。
図2にワイヤレス充電器の共振回路の概略図と評価に使用したコンデンサを示します。

図2 ワイヤレス充電器の共振用コンデンサを各種コンデンサで置換評価

共振用コンデンサに加わる電圧・電流波形

図3に共振用コンデンサに印加される電圧と電流を示します。共振用コンデンサに印加される電圧・電流は正弦波に近い波形であることがわかります。
コンデンサは交流電流を通しますので、コンデンサによる損失が発生します。この損失を抑制するためには、コンデンサのESRが小さいことが要求されます。

図3 共振用コンデンサに印加される電圧・電流波形

コンデンサの損失と実機における電力効率の比較

図4に共振周波数でのフィルムコンデンサ(PP)とMLCC(種類1)のESRと共振コンデンサ全体における損失の計算値の比較を示します。
フィルムコンデンサに対して、種類1のMLCCのESRは1桁程度小さいです。
コンデンサの損失はESR×I2で表されるため、コンデンサのESRが小さい方が共振回路における損失を抑制できると考えられます。

図4 フィルムコンデンサ(PP)とMLCC(種類1)のESR特性比較

MLCC(種類1)とフィルムコンデンサ(PP)のESRの周波数特性比較

共振用コンデンサ全体における損失の比較(計算値)

コンデンサのESRが小さいと損失も小さくなる。

図5にワイヤレス充電器の電力効率の測定結果を示します。ワイヤレス充電器の負荷電流を変えながら電力効率を測定したところ、フィルムコンデンサに対して種類1のMLCCの方がおよそ1%効率改善されていることを確認しました。

図5 ワイヤレス充電器の電力効率の比較

共振用コンデンサの損失が小さくなると、 充電器の電力効率は向上する。

実装面積の比較

図6に示す通りMLCCはフィルムコンデンサと比較して小型であるため、実装面積を低減することが可能です。

図6 共振用コンデンサの実装面積の削減

まとめ

ワイヤレス充電器の共振用コンデンサを例にあげて、コンデンサの種類ごとに損失と実装面積を比較しました。

 ・種類1のMLCCは低ESRであるため、共振用コンデンサにおける損失を小さくすることができ、電力効率の改善に貢献することが可能です。
 ・種類1のMLCCはフィルムコンデンサに対して小型・低背であるため、セットをより小型にすることが可能です。

以上の通り、C0Gに代表される種類1のMLCCは共振用コンデンサとして好適であり、電力効率の改善と小型化が可能となります。