Simcenter Flotherm向けMLCC熱モデルの使用方法
電気自動車に搭載されるオンボードチャージャーや非接触給電システムでは高出力化が進む一方、基板の大型化は許容されず、コンパクトに設計することが求められています。さらに、これらのセットで使用される共振回路用MLCCには非常に高い交流電圧が印加され、従来以上にMLCCの発熱が大きな課題となっています。このような背景から製品設計における熱設計の重要度は増しており、搭載部品を詳細にモデル化した熱シミュレーションが求められております。TDKはこうしたご要望に応えるため、MLCCの熱シミュレーションモデルを提供しています。本ツールを活用することで、発熱リスクの事前評価や最適な部品選定が可能となります。<br>
本記事では、TDKの熱シミュレーションモデルの概要とその使用方法についてご紹介します。
モデルの概要
TDKでは、電子機器設計支援ツール「Simcenter™ Flotherm™」で使用できるMLCCの熱シミュレーションモデルを提供しています。熱シミュレーションモデルに想定される発熱量を設定することで、MLCCの表面温度を計算できます。モデルのファイル形式はEROM(組み込み型BCI-ROM)となっており、製品の内部構造や物性値はブラックボックス化されていますが、高精度で解析可能な低次元モデルです。
※Simcenter Flothermは、Siemens Industry Software Inc.の登録商標です。
モデルライブラリの入手方法
TVCLページにてMLCCの熱シミュレーションモデルライブラリをダウンロードできます。
利用規約にご同意いただいたうえで、 .libraryファイルをダウンロードしてください。
Simcenter Flotherm上で「ライブラリ」フォルダを右クリックして、「ファイルからのインポート」より、ダウンロードした.libraryファイルを選択してください。ライブラリ内にモデルライブラリがインポートされます。
熱シミュレーションモデルは製品カテゴリ別にフォルダ分けされております。
モデルの構造
熱シミュレーションモデル(EROM)の構造について、「CGA6P1C0G3A223J250AC_EROM」を例にとって説明します。EROMは図3に示すように階層的なノードのグループとして表現されています。
| モデルの名称 | モデル名称は弊社カタログ品番に従います。 カタログ品番の呼称に関する詳細は仕様書、弊社Product Centerを参照ください。 |
| Volume | MLCCのEROM体積を示します。内部はブラックボックス化されています。 |
| Faces | EROM面から周囲への熱伝達を計算します。 表面条件はあらかじめ設定されていますが、表面-固体間熱抵抗や放射率、色などの各種設定を変更可能です。 |
| Sources | MLCC内部で発生する発熱量を定義します。 |
| Probes | 温度監視をするためのパーツです。本モデルではMLCCの表面中心部に設定されています。 |
EROMにはあらかじめローカルグリッド条件が設定されています。グリッド条件は変更可能です。
モデルの使用方法
EROMをプロジェクトに転送する
データツリー上でアセンブリを選択します。
ライブラリツリー上でインポートしたライブラリを選択します。使用したい品名のEROMをダブルクリックすると、データツリーに追加されます。
データツリー上のEROMの位置は、EROMが接触するオブジェクトよりも下側になるように配置してください。
EROMの初期位置、方向
プロジェクトに転送されたEROMの初期位置および初期方向は、図5に示す通りに設置されます。
MLCCの底面中心部が(0,0,0)となっており、この点とProbeの“MLCC_Surface”を結ぶ方向にMLCCの内部電極が積層されている方向と一致します。
任意の位置、方向にEROMを設置してください。
発熱量の設定
プロジェクトタブ内の“MLCC_Power_Source”を選択します。
属性データの合計ソースに任意の発熱量を設定します。
なお、MLCCの発熱量は使用する周波数におけるESRと印加電流の実効値から下式のように計算できます。
各製品のESRは各モデルのNoteを参照してください。※記載されているESRは参考値であり、保証値ではありません。
シミュレーションの実行
以上の設定が完了した後、解析を実行します。
モニター点として、MLCCの表面が設定されており、テーブルから表面温度の結果を確認できます。
表面プロットを行うことで表面温度分布を確認できます。
適用範囲
本熱シミュレーションモデルは、MLCCに単一の周波数の正弦波を印加した場合を想定しています。許容電圧グラフで規定される周波数および電圧の範囲外で使用された場合は適切な結果が得られない可能性があります。各製品の詳細な特性については製品の仕様書をご参照ください。
対応するFlothermのバージョン
本熱シミュレーションモデルはSimcenter Flotherm 2410で作成されたものであり、Simcenter Flotherm 2410以降に対応しています。ご使用の環境によっては正常に動作しない場合も予想されます。あらかじめご了承ください。
※シミュレーションモデルのバージョンは予告なく変更される場合があります。
まとめ
本記事では、Simcenter Flothermで使用できるMLCCの熱シミュレーションモデルの概要とその使い方についてご紹介しました。本モデルは低次元化されたモデルでありながら、詳細モデルと同等の解析精度を実現しています。製品設計の効率化にお役立ていただければ幸いです。
また、TDKではLC共振回路の駆動条件からMLCCの直並列構成を提案するツールもご用意していますので、併せてご活用ください。




