アプリケーションノート 自動車用LEDドライバーで使用される受動部品
電動化が進む自動車における消費電力抑制は重要な課題となっています。LEDは消費電力、寿命、デザインの自由度、制御性に優れており、ヘッドライトや室内照明等いろいろな機能で使用されています。TDKグループのパワーインダクタは使用するLEDドライバーによって、昇圧タイプ、降圧タイプ、昇降圧両方と異なるシステムに最適なインダクタを幅広くラインナップしています。目次
LEDドライバーで使用される主な回路
LEDを駆動するには定電流回路が必要です。変動するバッテリー電圧から安定した電力をとりだすには必ずDCDCコンバータが必要になります。使用されるDCDCコンバータ(LEDドライバー)は使用するLEDの数量やシステムによって、昇圧タイプ、降圧タイプ、昇降圧両方が可能なタイプを使い分けます。バッテリー電圧が6V程度まで下がる事を想定すると、順電圧が3.5Vの一般的な白色LEDを1個だけ使用する場合には、降圧タイプを使用しますが、LEDを2~4個直列で接続する場合には昇降圧タイプを、5個以上を直列で接続する場合には昇圧タイプを使用します。また、ヘッドライトやデイライト、ウィンカーなど複数の機能をもったシステムの場合は回路を組み合わせて使う場合もあります。
回路タイプ | 回路図 | ||
---|---|---|---|
降圧タイプ | |||
昇圧タイプ | |||
昇降圧タイプ |
高機能LEDヘッドライト用回路について
各社いろいろ呼び名がありますが、高機能なLEDヘッドライトには照射範囲を変化させたり、輝度を自由に変化させる配光可変機能が使われています。
複数個のLEDが使われ、必要に応じて各LEDの輝度を調整して明るさと照射範囲を変化させます。
図1に基本的な回路構成を示します。バッテリー電圧を昇圧(Boost)(約40~60V)し、降圧コンバータ(Buck)でLEDに電流を供給します。
or | + |
降圧コンバータ(Buck)の後段には複数個のLEDが直並列接続されます。(図2)輝度を変化させるために個々のLEDに流れる電流を調整し、極端な場合、LED一つだけ点灯することになり、上図の降圧(Buck)コンバータの出力インダクタンスには60V近い電圧がかかります。そのため、このアプリケーションで使う場合は比較インダクタンスの値の高いもの(Ex.100μH)が選定されます。前段の昇圧コンバータの平滑用のコンデンサには、照射範囲を瞬時に変化させるために、電圧の急峻な変動に対して電圧保持が必要なため、100V耐圧で1~10μFの容量が大きなコンデンサが必要です。
LEDヘッドライトのドライブ回路とTDKインダクタ
Single Lamp タイプは1コンバータ方式で昇降圧または昇圧タイプが使われます。単機能な車外照明、室内照明、インフォテイメントなどに使われます。
Multi-beam タイプは2コンバータで前段に昇圧回路、後段に降圧回路や定電流回路が使われ、車外照明でヘッドライトの場合、ハイビームやロウビームの切り替え構成で使われます。もしくはDRL(Daytime Light)が付加されます。
Adaptive Front-Lighting システムも2コンバータになり、前段に昇圧回路、後段に降圧回路や定電流回路が使われ、メインヘッドライト、DRL、方向指示器等LEDヘッドライトシステムとして使われます。
フィルタリング | 昇圧(Vbat⇒40~60V) | 降圧(40/60V⇒3~60V) | |||
---|---|---|---|---|---|
シリーズ | SPMシリーズ | SPMシリーズ | CLFシリーズ | SPMシリーズ | CLFシリーズ |
外観 | |||||
特徴 |
|
|
|
昇圧コンバータの回路例
Single Lamp typeのLEDヘッドライトは機能が単純化され、High/Lowビームを切り替えて使われています。
その場合、約15W~30Wの昇圧(Boost)コンバータが使われ、代表的な回路構成は以下になります。
出力電圧はLEDの直列数できまり、約20~30Vになります。昇圧回路の場合、降圧回路に比べてスイッチングロスが大きく、高周波化するのが難しくなっています。現在は200~400KHzが主流です。
デイライト及び小型照明用LED(Low power)
デイライトや室内等、バックライト、方向指示器など比較的電力が少ないものは、定電流回路や、昇降圧回路が使われます。
LED回路で使われる昇降圧回路はSEPIC回路が良く使われます。
図4にSEPIC回路例を示します。2個のインダクタ(L1,L2)とDCカット用のコンデンサ(C1)が使われます。出力は通常の昇降圧コンバータ同様に制御され以下の式で求められます。従来の昇降圧コンバータ(回路B)は入力と出力の極性が逆になってしまいますが、SEPIC回路は同じ極性になります。基本的な関係式は以下の様になり、DCカット用コンデンサ(C1)には入力電圧と同じ電圧がかかります。
??=??? ?/(1−?) (D:duty)
??1=???
??2=??1
IL2ave=IL1ave(1−?)/?
上記関係式より理論的にL1とL2にかかる電圧(VL1,VL2)は同じになり、巻き数1:1の連結Dual coilに置換えができます(回路C)。Dual coilにした場合、コアにかかる負担は1個の時の倍になり、コアロスが小さく直流重畳が大きいインダクタが必要になります。TDKのインダクタ製品では、B82477D*シリーズが適しています。DRコア(ドラムコア)に低損失な材料を使い、コアの発熱を抑えています。
B82477D シリーズ | |
---|---|
外観 | |
仕様 |
|
特長 |
|