TDK独自のパターンコイルテクノロジによる製品展開
パターンコイルの製品展開
TDK 独自のパターンコイル技術により、アプリケーション要件に基づいて銅トレースの厚みを正確かつ柔軟に調整することができます。この機能により、エッチングにより形成されるような従来の銅コイル技術では実現できなかった、自由度の高いコイル設計が可能になります。最終製品のラインナップには、ワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)のQi規格に準拠したワイヤレス充電用コイル(WPT)、AirFuel規格品WPT、その他非Qi規格品のWPT、通信と給電の両方に対応するRFID/NFCアンテナ、EMIメッシュスクリーンなどがあります。磁性シートは磁場 (H) の磁束 (Ø) を抑制するために使用されます。パターンコイルの技術を応用することにより、様々な最終用途に展開することができます。銅の厚みと最終用途を図1に示します。
TDK超薄型WPTパターンコイル MP-A28
スマートフォンに代表されるモバイル機器のワイヤレス充電の普及に伴い、車内をはじめさまざまなシーンで手軽に充電したいというニーズが高まっています。 Qi規格に準拠したMP-A28コイルは、独自のパターニングプロセスにより、銅厚みを片側150μmまで薄くし、全体の厚さはわずか0.76mmという驚異的な薄さを実現しました。これは、従来の巻線コイルが約3.8mmであるのに対し、5分の1の厚さになります。これらの比較を図2に示します。また、独自のシングルパターンコイルを採用することで部品数と基板面積の縮小を実現しました。これにより、製品重量は従来比76%減の12.5gとなりました。車載用電子部品の薄型・軽量設計は重要なテーマになります。TDKが量産しているMP-A28コイルは、薄型・軽量・部品削減のメリットを提供し、スペースが限られたレイアウトにワイヤレス充電技術を組み込むことを可能にします。
TDK超薄型NFCアンテナ MSCシリーズ
非接触の決済や個人認証で使用されているNFC通信には磁気共鳴ループアンテナが必要ですが、周辺の金属環境によって通信が阻害されてしまうため磁性シートを組み合わせる必要があります。NFC搭載端末の小型軽量化に従いアンテナの薄型化も必要になっていますが、従来の技術では薄型化の限界でした。TDKのパターンコイルNFCアンテナは、TDKの磁気シールド製造技術を応用し、NFCアンテナを磁気シールドの接着層に埋め込むことでアンテナの更なる薄型化を実現しています。また、磁性シート込みで設計の最適化を図ることで、磁性シート自体の薄型化や性能を最大限引き出すことができます。
NFCフォーラムはNFCアンテナと周波数がウェアラブルのような低電力デバイスのワイヤレス充電に使用される規格を発表しています。パターンコイルのアンテナ構成の柔軟性は、小さなアンテナサイズや不規則な形状が要求される場合に有利です。
メタルクレジットカード用NFCアンテナ
NFCを使用した非接触型決済はクレジットカード取引においても普及が進んでおり、現在ではほぼすべての新規発行カードにNFC 通信機能が搭載されています。プレミアムクレジットカードには、高級感や特別感を演出するために金属素材が使われる場合があります。これらのカードでワイヤレス通信機能を搭載する場合、アンテナユニットの厚み分金属を薄くする必要があり、カード自体のコンセプトを損なってしまうという課題があります。MSCシリーズは、クレジットカードの非接触通信規格に準拠しながら、極限まで薄型化を実現し金属カードの高級感を維持しながら業界の通信規格に対応することができます。
透明カード用NFCアンテナ
クレジットカードには、他のカードとの差別化を図るためにさまざまなデザインが施されていますが、現在の最大のトレンドのひとつが透明カードです。透明カードの構成材料は全て透明な素材で作られますが、ワイヤレス通信用のNFCアンテナだけは100%光学的に透明にすることができないため、ワイヤレス通信機能を備えた完全な透明カードの実現は困難でした。しかし、TDKのパターンコイルアンテナ技術により、電解めっき技術を利用した80%以上の透明度を持つファインラインパターンの開発が可能になりました。このNFC アンテナを使用することで、図5に示すように、均一な外観の透明カードを作成することが可能になります。
超薄型パーマロイシート IPMシリーズ
電子機器においてノイズ対策は正常な動作や規格に準拠させるために不可欠ですが、回路設計で完全に対策することは難しく、放射ノイズの対策としてシールド材が使われるケースが多くあります。
シールド材には安価な金属ケースが使われることが多いですが、高周波のノイズに関しては効果的ですが低周波ノイズには効果が薄く、必要なシールド性能を得るためには厚みが増えてしまうことが課題でした。
IPMシリーズは極薄の軟磁性金属シートで、高透磁率材であるパーマロイを使用することで低周波ノイズに対する効果を飛躍的に高め、500kHz以下では約100倍の厚みのステンレス板と同等以上のシールド性能を示します。特性を図6に示します。
IPMシリーズ アプリケーション
電子機器の小型化・薄型化・多機能化が進む中、スマートフォンをはじめとする電子機器のノイズ対策はますます重要になっています。TDKのIPM01シリーズは、最先端の高透磁率磁性材料を提供し、銅層を一体化することで様々な電子機器や図7で紹介するアプリケーションにおけるノイズ抑制を最適化します。TDKのIPM01シリーズはロール形状、シート形状、カスタム形状で入手可能です。現在、125℃までの使用温度環境を保証する耐熱タイプを開発中、2025年の量産を予定しています。