ソリューションガイド NFC回路向けトータルソリューション

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NFC回路向けトータルソリューション
NFCとは、Near Field Communicationの略で、近距離無線通信の1つです。
NFCに対応した機器同士を近づけることで、データ通信や認証を行うことができる機能で、近年スマートフォンへの搭載が急速に進んでおります。
また、スマートウォッチのようなウェアラブル端末など、周辺機器への搭載も広がりを見せています。
キャッシュレス決済や、周辺機器との接続認証の場面で多く使用されているほか、タッチレス社会の実現へ向け、より多様な用途での活用が期待されています。
本記事ではNFC回路で使用される主な部品(NFCアンテナ、磁性シート、LCフィルタ用インダクタ、シングルエンド回路用バラン)についてご紹介致します。

NFC回路で使用される主な部品

図1(a) ディファレンシャルモード

図1(a)

NFC回路で使用される回路を図1(a)に示します。

NFCの通信は、電磁誘導方式により動作するために、ループ型のアンテナを使用することが一般的です。
アンテナとNFCのコントローラICの間には、アンテナのマッチング回路やインダクタとコンデンサで構成されたLCフィルタが挿入されます。

一方、図1(b)のように、シングルエンドのアンテナに接続される場合もあります。このような方式の場合、シングルエンドの信号をディファレンシャルモードに変換をするため、バランを用いてモード変換を行う必要があります。

図1(b) シングルエンドモード

図1(b)

NFCアンテナと磁性シートについて

NFCの通信には電磁誘導方式が採用されており、リーダ・ライタからの搬送波をアンテナで受信すると、ICチップで情報処理されます(図2a)。
このアンテナが、スマートフォンなど電子機器に搭載される際には、アンテナの近傍に金属が存在する場合があります。
この場合、金属内に誘導電流が流れリーダ・ライタから発生する磁界とは逆向きの磁界が発生するため、搬送波からの磁界と打ち消しあい、通信距離が短くなったり、通信ができなくなります(図2b)。
一方、図2c に示すようにコイルと金属の間に磁性体が存在する場合、その高い透磁率によってリーダ・ライタから発生した磁束を閉じ込める効果を持っています。これにより、金属内に誘導電流が発生することを抑えることができるため、良好な通信状態を保つことができるようになります。
TDKではアンテナと金属の間に貼り付ける磁性シートや、磁性シートとアンテナを一体としたアンテナユニットを提供しています。

表1 NFCアンテナと磁性シート
薄型NFCアンテナ WPC Tx 一体型 NFCアンテナ WPC Rx 一体型 NFCアンテナ NFC用磁性シート
シリーズ MSC series 開発中 WCT series WR series IFL/IFQ/IBQ/WCF/IFW series
製品外観図
特徴 アンテナコイルを磁性シートに埋め込むことで、100um以下の厚さを実現 非接触充電コイルと一体化されており、省スペース化に貢献 非接触給電コイルと一体化されており、モバイル機器への搭載に最適 13.56MHzにおいて、
高透磁率・低磁気損失
図2 NFCアンテナ近傍の金属と通信状態
図2 NFCアンテナ近傍の金属と通信状態

NFC LCフィルタ用インダクタについて

LCフィルタ用のインダクタについては、アンテナとのインピーダンス不整合による損失を小さくするため狭公差であることが求められます。
表2に示すように、TDK のMLF/MLJシリーズについては、いずれもJ公差(±5%)でラインナップを取り揃えています。

また、アンテナ出力の低下を防ぐため、通信周波数である13.56MHzにおけるインダクタ損失の抑制が重要となります。
そのため、交流抵抗(Rac)が低く抑えられ、かつ、電流を流した際にも低いRacが維持されていることが求められます。
TDKでは、MLJ-Wシリーズにおいて、低Racを実現し、さらに新製品のMLJ-Hシリーズにおいて、大電流印可時の低Racを実現しました。
図3に示すように、大電流領域において、MLJ1005HのRac が低く抑えられていることがわかります。
一方で、低電流領域においてはMLJ1005W の方がRacが低いことから、実際に使用される電流値によって、製品を選定いただくことが可能です。

表2 NFC LCフィルタ用インダクタ
シリーズ MLF1608D
MLF1005V
MLJ1608W
MLJ1005W
MLJ1005H新製品
タイプ STD High Current
Low Loss
Super High Current
Super Low Loss
サイズ [mm] 1608 / 1005 1608 / 1005 1005
インダクタンス許容差 [%] +/- 5 +/- 5 +/- 5
インダクタンス [uH] 0.10 – 0.82 (1608 size)
0.10 – 0.56 (1005 size)
0.10 – 0.56 (1608 size)
0.075 – 0.56 (1005 size)
0.056 - 0.20
定格電流 [mA] 70 – 200 (1608 size)
120 – 180 (1005 size)
400 – 800 (1608 size)
250 – 550 (1005 size)
480 - 950
図3 交流抵抗 vs 正弦波電流 @13.56MHz
図3 AC Resistance vs. sine wave current @13.56MHz

NFC シングルエンド回路用バランについて

バラン(Balun)とは、平衡回路(Balance)と非平衡回路(Unbalance)変換するための素子のことで、2つのコイルの巻数比を変えることで、インピーダンスを変換することも可能です。
NFC回路向けの場合は1:1の巻数比で使用されることが多く、13.56MHz 帯での挿入損失を低く抑えております。
また、TDK独自技術により、製品の低背・小型化を実現しています。

表3 NFC シングルエンド回路用バラン
シリーズ ATB16106HD-15011-T10
製品外観図
サイズ [mm] 1610
高さ [mm] 0.65 max
不平衡/平衡インピーダンス [ohm] 15:15
定格電流 [mA] AC 400mA RMS
特徴 NFC用に最適化 小型・低背タイプ