メタバースは五感全てに訴えかける
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予想されるメタバースとVRヘッドセットの急成長
バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)が成長、進化し続ける中で、さらに大きな可能性を有するコンセプトがメタバースです。ARやVRが基本的に視覚に訴える性質を有しているのに対し、メタバースは人の五感全てに訴えかけるものであり、現実世界とデジタル世界の融合がより豊かなものになることが期待されています。人間は視覚的な生き物であるため、VRやARの有する視覚的な本質性はメタバースを構築するための基礎となります。
センサーはバーチャル体験の基礎
VRはゴーグルを使用するもの、ARは眼鏡・ヘッドセットを使用するものとして定義されることがあります 。メタバースはウェアラブルなものと定義されることがありますが、AR機器も間違いなくメタバース体験の本質的な部分を構成するものです。
VRとARは基本的に視覚的な体験ですが、モーションセンサーとポジショニングセンサーもVR・AR体験を実現する上で欠かせない本質的な要素です。これらのセンサーは様々な面で必要不可欠なものとなっています。例えば各種センサーが現実空間におけるVR/AR/メタバースのユーザーの位置を監視し、動きを追跡することにより、a)現実空間でのユーザーの安全を確保し、 b) バーチャル空間にユーザーの動きを反映させることが可能になります。
環境検出や位置固定に使用できるセンサーには以下のものがあります。
- 直線運動用加速度センサー
- 回転運動用ジャイロスコープ
- 高感度方向探知用トンネル磁気抵抗(TMR)磁力計
- 垂直位置/高さ検知用圧力センサー
- 物体検知と距離測定に有効な飛行時間(ToF)検出用超音波センサー
- 物体検知と識別用LiDAR(ライダー)/レーダー
- 音声インターフェース用MEMSマイクロフォン
- 周辺状況感知用体温/環境温度センサー
- 物体検出/ToF用視覚センサー
3軸加速度センサーと3軸ジャイロスコープを組み合わせて6DoFの動きを検出し、さらに3軸磁力計の統合を追加して9DoFのセンシングを実現します。
これらのセンサーは、自動車産業の分野で長年にわたりモーションセンシング、ポジショニング、物体検出等に利用されてきましたが、VR/AR分野での利用はまだ一般的なものではありません。例えば、ToFセンシングはまだ新しい機能であり、VR/ARアプリケーション開発者は空間ポジショニングにこの技術を採用しています。しかし、この技術にはさらに大きな可能性が見込まれており、現在はその利点を最大限に活用する方法の研究が続いている段階です。現在、最もポピュラーなスマートフォンの幾つかには顔認識のためLiDARが搭載されており、今後ARやメタバース用アプリケーションにもLiDARの活用が広がるものと予想されています。
詳細な情報が以下に掲載されています(一部英文):
メタバース用センサー
最終的にメタバースは五感全てに訴えかける。
視覚:スマートフォンにカメラが搭載されてきたのと同じ理由で、ARシステムはこれまでずっとカメラを搭載してきました。メタバースアプリケーションでも同じように使われ続けるに違いありません。
サウンド:音声認識は多くのIoTデバイスで既に一般的に使用されています。同じように、VR/AR/メタバース用ヘッドセットにもマイクが使用されており、今後はウェアラブルデバイスにも搭載されると考えられています。
触覚:モーション検知、ポジショニング、物体検知に使用されるのと同じセンサーから送信されるデータの多くは、ブレスレット、グローブ、部分/フルボディースーツなどの触覚デバイスにも送信することができます。TDKは接触の感覚や強度だけでなく、物体の手触りまで感じ取ることが可能なハプティックテクノロジーを開発しています。
嗅覚と味覚: 現在、TDKはCO2検知器を開発しています。この検知器は、ほとんどの人が自分では検知できない周辺環境の危険について警告することができます。その他のセンサーは、各種の化合物の存在-場合によってはその量-を特定するために使用することが可能です。これらのセンサーは、ビデオゲームが描写する食べ物の匂いや味をユーザーに伝えることはできませんが、ガスや化学物質の検知器を適切に選択することにより、現実世界で特定の食品を食べるのが危険かどうかを判定したり、香りだけで花の種類を識別したりできる可能性があります。
メタバースはモジュラー化され、各種のウェアラブルデバイスに対応するようになり、個人が選ぶメタバースアプリケーションの種類、どの程度メタバース体験に没入することを望むかに応じて、自由に組み合わせて使用できるようになると期待されています。
AR & VR用新型センサー
VR/ARのいずれも基礎となるのはディスプレイです。VRではゴーグルにLEDディスプレイ(1種類または数種類)が搭載されています。AR用のリグを構成するには異なるアプローチがありますが、一般的にはユーザーの視野のどこかに小型デジタルディスプレイを設置するか、ヘッドセットのレンズにデジタルコンテンツを投影する方法が採用されています。メタバース体験は、ウェアラブルテクノロジーと組み合わされるAR用リグに大きく依存しています。
最近、TDKは新しいプロジェクションオプションを導入しました。これは、フルカラーのデジタルイメージをユーザーの網膜に直接投影する、小型・軽量のレーザーモジュールです。
この新技術は、レーザー素子から放出される光線を平面回路を通して結合し、超小型レーザーモジュールにより約1620万色のフルカラーを実現しています。
現在のARハードウェアは重く、邪魔になりがちで、製品としての魅力が損なわれています。TDKの超小型レーザーモジュールの採用により、VR/ARヘッドセットの小型化、大幅な軽量化が可能になります。
さらに魅力的なメリットとして、この技術によって視力に問題のある人にもクリアで鮮明なイメージを伝えることができます。
さらに詳細な情報が以下に掲載されています:
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驚くほど小さなレーザーモジュールが、ARの常識を大きく変える
詳しく知る
センサーフュージョンと実現ソフトウェア
上述の各種センサーからのデータには処理が必要であり、これらのデータを統合して、より豊かで楽しめる、安全な体験を生み出すためにソフトウェアを引き続き改善していく必要があります。このようなソフトウェアの進化の一例として、超音波センサーが挙げられます。TDK SmartSonicテクノロジーは、超低消費電力SoC統合の採用により、TDKのToFセンサーにインテリジェンスを付加し、システム開発者のために近接ターゲットとの距離や存在検知などに関する事前処理データを提供します。
システムは異なるセンサから収集されたデータを比較して、何らかの結論を導き出すことができます。例えば、VRシステムの圧力センサーが、ユーザーのヘッドセットの高さが変わらないことを検知したのと同時に、6DoFセンサーが、ヘッドセットが0度から45度の間で傾いたことを検知した場合、システムは高さのデータと傾きのデータを比較して、ユーザーは上を見ているが、立ち上がる、座る、しゃがむといった動作をしているわけではないと推測できます。
センサーフュージョンには、データを単純に比較する以上のことが含まれ、複数の異なるセンサーからのデータを統合することにより、どのセンサーを単独で使用した場合よりも正確な結果を得ることができます。TDKのポジショニング用センサーモジュールは、ジャイロスコープ、加速度センサー、磁気センサーを単に組み合わせるだけではなく、各センサーからのデータを比較して組み合わせることにより、ピッチ、ヨー、ロール、直線方向に関するデータを可能な限り正確なものとしています。
センサーフュージョンは非常に複雑なプロセスであり、経験が大きなアドバンテージとなります。TDKは、自動車や産業オートメーション市場に一式のセンサーを提供し、センサーフュージョンの開発をサポートしてきた経験を有しており、このノウハウをVR/AT/メタバース市場に生かして、センサ、組み込みプロセッサ、ソフトウェア開発スキルの成功に貢献しています。