MLCCのたわみクラック対策 ランド寸法・配線パターンがMLCC応力に与える影響
MLCCのたわみクラックとは|発生メカニズムと影響
基板たわみ応力によるMLCCのたわみクラック
たわみクラックとは、PCB上にはんだ接合されたMLCCに、基板のたわみによる機械的応力が加わり、セラミック素体にクラックが発生する現象です。セラミックは圧縮に強く引張りに弱い性質があるため、基板の曲げによって過大な引張応力が加わると素体クラックが生じる可能性があります。
- クラックが内部電極の重なる領域を貫通すると、絶縁抵抗の低下やショートに発展する可能性がある
- クラックの入り方は基板の変形状態や実装条件によって異なり、Y字状や斜め方向など様々な形状で観察されることがある
- 一般的には、基板の変形によって生じる応力が素体の強度を上回った場合にクラックが発生するとされている高い信頼性が求められる用途では、設計段階からの対策が重要です。
たわみクラックが発生する場面
MLCCがPCBにはんだ接合された後、基板を大きく曲げる作業は、たわみクラック発生のリスクとなります。
代表的な例として、以下が挙げられます。
- 基板分割
- コネクタの取り付け
- 配線ハーネスの取り付け
- ビス止め
- 基板の取り扱い
- 落下や衝撃
また、基板の曲げ方向、MLCCの配置によって、MLCCに加わる応力の大きさは変化します。
たわみクラックを防ぐための基本対策
たわみクラックを防止するには、基板に不要な外力が加わらないようにすることが重要です。基板補強材や支持材の設置、製造工程の確認、基板分割条件の確認、部品配置の見直しなどが対策となります。
さらに、MLCCに加わる応力に影響する要因の一つとして、ランドの寸法・形状や配線パターンが挙げられます。
本記事では、ランドのA寸法、C寸法、およびMLCC端面側に延びる配線パターンの変更による、MLCC周辺の応力の変化を紹介します。
ランド寸法・配線パターンが応力に与える影響【解析結果】
1. ランドとMLCCの位置関係
TDKは、図1に示すランドとMLCCの位置関係において、A寸法・C寸法・MLCC端面側に延びる配線パターンの3因子に着目し、変更前後の応力分布を解析しました。結果は下表の通りで、因子によって効果の大きさに差が出ています。
| 設計因子 | 変更方向 | 解析での応力低下 |
|---|---|---|
| A寸法(電極間ランド長) | 短くする | 低下するが低下量は相対的に小さい |
| C寸法(ランド幅) | 短くする | 低下するが低下量は相対的に小さい |
| MLCC端面側の配線パターン | 小さくする | 比較的大きく低下(最も効果的) |
2. A寸法の影響
A寸法を短くした場合、MLCC周辺の応力は12%程度低下しました。
3. C寸法の影響
C寸法を短くした場合も、MLCC周辺の応力は10%程度低下しました。A寸法とほぼ同水準の低下率であり、単独での効果は限定的であることが分かります。
4. MLCC端面側に延びる配線パターンの影響
一方、MLCC端面側に延びる配線パターンを小さくした場合は、応力が26%程度低下し、A寸法・C寸法の変更と比べて明確に大きな改善効果が確認されました。
改善前後の応力分布を図5に示します。
| 設計因子 | 応力低下率(目安) | 効果の大きさ |
|---|---|---|
| A寸法の短縮 | 12% | 小 |
| C寸法の短縮 | 10% | 小(Aとほぼ同水準) |
| 端面側配線パターンの縮小 | 26% | 大(最も効果的) |
このように、A寸法・C寸法の短縮による応力低減効果はほぼ同水準にとどまる一方、MLCC端面側に延びる配線パターンの縮小は、他の2因子と比べて明確に大きな効果を示しました。ランド設計を検討する際は、配線パターンの見直しを優先的に検討することが有効と考えられます。
※減少率は、変更前の端子下応力を基準とした値です。
5. 設計上のポイント
ランド寸法(A・C)の調整だけに頼るのではなく、MLCC端面側に延びる配線パターンの縮小を優先的に検討することが、応力低減に効果的と考えられます。
※なお、本解析はシミュレーション(1/4対称モデル)による特定条件下の比較結果であり、実機や製品信頼性を保証するものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 3つの因子のうち、まず何を見直すべきですか?
A. TDKの解析ではMLCC端面側に延びる配線パターンの縮小が最も応力を下げました。A・C寸法の効果は相対的に小さいため、配線パターンから優先検討することが有効と考えられます。
Q2. A寸法・C寸法の調整は効果がないのですか?
A. 効果がないわけではなく、短くすれば応力は低下します。ただし今回の解析条件では低下量が相対的に小さい結果でした。他因子との併用が推奨されます。
Q3. ランド設計だけでたわみクラックは防げますか?
A. ランド設計は要因の一つです。基板補強・工程管理・基板分割条件・部品配置の見直しを含む複合対策が前提で、実機試験での確認が必須です。
まとめ|配線パターン縮小を軸に複合対策で信頼性を高める
MLCCのたわみクラック対策では、ランドのA寸法・C寸法の短縮も応力低減に寄与しますが、TDKの解析ではMLCC端面側に延びる配線パターンを小さくすることが最も効果的でした。設計時は配線パターンの見直しを軸に据え、部品配置・基板分割条件・工程管理と組み合わせることが有効です。
TDKは、A・C寸法および端面側配線パターンに着目し、改善前後の応力分布の変化を解析で可視化することで設計者の判断を支援しています。さらに詳しい解析事例や高信頼性MLCCシリーズは、TDKテックライブラリー「MLCCのたわみクラック対策」ソリューションガイドをご参照ください。 設計初期段階での検討が、製品全体の信頼性向上につながります。



