チップバリスタ/セラミック過渡電圧サプレッサ

テックノート

プロダクトオーバービューツェナー・TVSダイオードとバリスタの違いは?使用するために比較するべき4つのポイント

Chip Varistors チップバリスタとTVSダイオードは、過電圧保護部品として使用されます。 これらの製品は、構造・製造方法が完全に異なるが、静電気保護として似た性質を持っています。 そのため、回路上はどちらも使用可能なのですが、チップバリスタは使えないと判断されるケースが存在します。 たしかに、その歴史的な背景から、カタログやデータシートに記載する項目が異なることが多く、 コンデンサやその他の汎用部品のように、紙面に記載されているスペックだけで特性の比較を行うことが難しいです。 そこで、この記事では、バリスタとダイオードの違いを明確にし、ダイオードとバリスタの比較が可能なデータを紹介します。

歴史

1968年に開発された酸化亜鉛バリスタは、ダイオードを雷から保護する目的で使用されました。 一方、ダイオードは主に整流を目的に使用され、その用途は異なっていました。 そのため、カタログやデータシートに記載される項目が異なることが多く、今でも単純に比較することが難しいです。 Automotive Electronics Council (車載電子部品評議会)」で制定された規格もTVSダイオードはAEC-Q101、 バリスタはAEC-Q200が適用され、その内容は大きく異なっています。

図1 歴史

チップバリスタとTVSダイオードの違い

構造

チップバリスタは、主に酸化亜鉛をベースとしたセラミックス半導体製品となります。 主に、下図のような積層構造が採用され、積層枚数、層間の調整により、ブレークダウン電圧、静電容量を制御することができます。 一方、TVSダイオードは、P型半導体とN型半導体の組み合わせで製造され、シリコンベースのESD保護部品となります。 ダイオードの中には、Auワイヤーなども使用されるケースもあります。

図2 チップバリスタ
図3 TVSダイオード

I-V曲線

チップバリスタとTVSダイオードは、電圧印可により抵抗値が大きく変化します。 チップバリスタは、双方向での静電気保護が可能となります。 TVSダイオードは、以前は方向性のあるものがほとんどでしたが、最近では双方向のTVSダイオードも増えてきました。 しかし、方向性によって異なるケースがあるので注意が必要となります。

図4 I-V曲線

過電圧印可による反応速度

ディスクバリスタなどの初期のバリスタの頃の記憶から、バリスタは反応速度が遅いという話をよく耳にします。 しかし、以下のグラフで示すように、過電圧印可によるチップバリスタとTVSダイオードの反応速度は変わりません。 IEC61000-4-2 HBM +8kV印可により、1ns以内にピークを迎え、400ns後には保護部品にかかる電圧値はほぼ0となります。

図5 過電圧印可による反応速度

静電容量

バリスタとTVSダイオードの静電容量の幅は大きく異なります。 チップバリスタは積層構造を採用しているため、内部電極の層数を増やすことにより、静電容量を増加させることができます。 EIA0805以下のサイズで比較した場合、以下のグラフに示すように、静電容量の最大値は100倍近くの差がみられます。 そのため、MLCCを並列に入れなければいけないラインでは、チップバリスタ単体で対応できるケースもあります。

図6 静電容量

その他の特性

その他の温度特性や挿入損失などは、チップバリスタとTVSダイオードで若干の違いがみられるものの、同スペックで比較した場合は同じような挙動となります。 各データシートにそれぞれの挙動を掲載しているので、TVSダイオードとの比較が可能となります。

図7 その他の特性

コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)における、チップバリスタとTVSダイオードを使用する場合の4つのポイント

コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)では、CAN Tranceiverの保護のため、静電気保護部品が使用されます。 ここでは、CANライン上で静電気保護部品を選定する際のポイントを紹介します。

最大許容回路電圧

コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)シリアル・バス・トポロジーでは、CANH・CANLの信号を使用することで、dominant(ドミナント)、リセッシブ(recessive)のレベル状態をとります。 ドミナント時はCANHのラインに3.5V程度の電圧がかかり、静電気保護部品はこの電圧時に絶縁体として機能しなければいけません。 そこで、今回の場合は、静電気保護部品の最大許容回路電圧が3.5V以上のものを選択する必要があります。

また、静電気保護部品の漏れ電流には温度依存性があり、実使用上の温度環境も考慮する必要があります。 下図は、代表的なチップバリスタとTVSダイオードの漏れ電流の温度特性になります。 高温になるにつれ、漏れ電流が大きくなっていきますが、50uA以下になるように設計されています。

図8 漏れ電流の温度依存性

静電容量

CANは最大通信速度が1Mbpsとなりますが、回路に並列に挿入される静電気保護部品は、この通信を阻害してはいけません。 1Mbps(=0.5MHz)時に、挿入損失が小さい製品を選ぶ必要があります。 下図は、CAN通信に使用可能なチップバリスタとTVSダイオードの挿入損失になり、どの製品も通信に影響を与えないことがわかります。

図9 チップバリスタとTVSダイオードの挿入損失

サージ保護能力

静電気保護部品は、セットで使用されるICや周辺部品を保護するために使用されます。 例として、以下に車載向けCAN TranceiverのESD耐量を示します。

表1 ESD Durabitily of CAN Tranceiver for each IC
Tranceiver Vender 通信速度 Vesd HBM
CANH, L
SPLIT Other
A A社 1Mbps ±12kV ±12kV ±12kV
B B社 1Mbps ±12kV ±10kV ±4kV
C C社 1Mbps ±6kV ±6kV ±4kV

この表から、CAN Tranceiverに4kV以上の電圧がかかってしまった場合、壊れてしまう可能性があることがわかります。 また、以下のTLPデータより、ESD 4kV相当の試験では、CAN Tranceiverに8A相当の電流が流れることがわかります。

図10 TLPデータ

静電気保護部品を使用しない場合、4kVの静電気により8Aの電流がCAN Tranceiverへ流れ、破壊されてしまいます。 一方、以下の図からわかるように、バリスタ、TVSダイオードは、過電圧の印可により、抵抗値が2Ω以下にまで急激に下がります。

図11 TLPデータ

そのため、ESD印可により発生した大部分の電流は、保護部品に流れ、CAN Tranceiverを保護することができます。 TLPデータから、設計時にシミュレーションを用いて、CAN Tranceiverへ流れる電流を確認することができます。 今回は、シンプルな例をしましたが、その他の電子部品の特性値がわかれば、実機試験の前にESD耐量を確認することができます。

ESD耐量

セットとしてのESD耐量が求められているケースが多く、静電気保護部品にも同様の性能が求められます。 製品のESD耐量は、データシートからを確認することができます。

TDKチップバリスタの特徴:繰り返しESD印可によるESD耐量

バリスタの繰り返しサージ耐量は、主成分のZnOに加えられる添加物の種類・組成など、材料系によって大きく異なります。 素材技術を駆使して開発した独自材料を採用しているTDKのチップバリスタは、繰り返しサージ耐量にすぐれるのが特長で、 頻繁なON/OFF動作で使用される電磁弁やステッピングモータなどにおいて、ツェナーダイオードなどとの代替を可能にする製品も提供しています。 詳しくは、こちらの記事『繰り返しサージ耐量にすぐれたチップバリスタ』を参照。

TDKチップバリスタの特徴:小型化

TDKでは、EIA01005(0.4x0.2mm)サイズの小型化を実現しています。 また、車載向けでもAEC-Q200対応で業界最小となるEIA0402(1.0x0.5mm)サイズの製品を量産化しています。

図12 TDKチップバリスタの特徴:小型化

Web上にデータシートを掲載

TDKでは、上記の各データをWeb上のデータシートに掲載しています。 TVSダイオードどの比較に必要なデータを揃えており、データシートを確認することで、簡単な比較を行うことができます。

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