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アプリケーション & 使用例
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アプリケーションノート

車載小型チップバリスタが実現するTVSダイオード置換と高密度実装

自動車の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転の進展に伴い、カメラ、レーダー、マイクなどのセンシングデバイスの搭載が急増しています。高機能機器の増加に伴い、Tier1メーカーでは「高信頼性」、小型化のための「基板面積の削減」、「コストダウン」の3つの大きな課題に直面しています。高機能化において特に静電気(ESD)からの保護は車載通信の安定性を左右する重要な要素です。
こうしたニーズに応えるべく、TDKは車載通信向けESD保護部品として「チップバリスタ AVRHシリーズ」を展開しており、従来のTVSダイオードに代わる新たな選択肢として、より小型で高性能なESD保護を実現しています。
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TVSダイオードとチップバリスタの違いは?

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チップバリスタとTVSダイオードは、過電流・過電圧保護に加え、ESD対策やサージ保護などの過渡現象への対応にも使用されています。チップバリスタは酸化亜鉛を主体としたセラミックの多結晶構造で、高エネルギーサージに強いのが特徴です。積層構造が採用されるケースが多く、ESD対策として小型形状への適用も進んでいます。一方、TVSダイオードはシリコンのPN接合構造で、ナノ秒レベルの高速応答によりESD保護に最適です。

より詳しい内容につきましては、下記の過去記事もあわせてご覧ください。
ツェナー・TVSダイオードとバリスタの違いは?使用するために比較するべき4つのポイント
静電気で電子機器が故障!劣化しにくいチップバリスタの選び方

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チップバリスタ AVRHシリーズ 製品の特徴・メリット

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AVRHシリーズは小型の1005サイズ(mm)を中心にラインナップを揃えており、車載規格のAEC-Q200に準拠しています。車載対応の1608サイズ(mm)と同等の信頼性を備え、従来製品からの代替として使用することが可能です。また、シリーズ最小となる0603サイズ(mm)「AVRH06C270KT200NA7」の開発も完了しました。
量産開始前のデータシートについても本記事下部からダウンロードが可能です。
 

  • 超小型0603サイズ(mm):従来のTVSダイオード比で最大約80%の実装面積削減
  • 高性能ESD保護:±25kVの静電気耐量で、車載通信の信頼性を確保
  • 高耐熱性:最大動作温度125℃で車載環境に最適
  • コストメリット:小型化による部品・実装コストの削減

車載通信向けESD保護にフォーカスしたAVRHシリーズは、2019年に量産が開始され、2025年には約300Mpcs/M以上の出荷が見込まれています。
これまで車載通信向けのESD保護チップバリスタは1608サイズ(mm)が主流でしたが、AVRHシリーズでは特性を維持したまま1005サイズ(mm)への小型化を実現しました。
実装面積削減や小型化によるコスト低減などのメリットにより、多くのお客様に検討いただき、採用いただく機会が増えています。

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AVRHシリーズの販売増加実績推移図
図1:AVRHシリーズの販売増加実績推移図

AVRH-1005サイズ(mm)と新製品0603サイズ(mm)との比較

更なる実装面積削減に貢献するために開発された0603サイズ(mm)の製品は、1005サイズ(mm)と同等性能を維持しつつ、小型化された製品です。

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ESD耐量の評価

  • IEC61000-4-2:Human Body Model(150pF/330ohm)試験
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AVRH-1005mmタイプと新製品0603mmタイプとの比較
図2: AVRH-1005mmタイプと新製品0603mmタイプとの比較
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技術的な詳細・比較

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バリスタ材料は主にBi(ビスマス)系、Pr(プラセオジム)系に大別されます。Bi系材料は、1960年代にPanasonicにより開発され商業化されました。当時はサージ対策のため大形状のディスクタイプなどがラインアップされていましたが、静電気対策などに対応するため小型化・SMD化がすすめられました。一方、Pr系材料は1990年代に開発され商業化されました。この材料は信頼性に優れており、高信頼性が求められる産機・車載向けに適用が進みました。
TDKのAVRHシリーズはPr系材料を採用しており、材料の最適化を行い、非常に高い品質を維持しています。

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1. 他社チップバリスタとの比較データ

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1-1. Bi系材料使用の他社チップバリスタとAVRHシリーズとの比較

下図が示すように、Bi系材料を使用したSMD製品はESD印可により特性劣化が起こします。Bi系バリスタはバリスタ特性発現後の抵抗値が比較的高く、ESD印可などにより発熱がしやすいです。
そのため、一度のESD印可で特性が劣化してしまい、初期特性を維持するのが難しいです。

一方、AVRHシリーズはESD印可により安定した特性を維持しています。
このグラフからわかるようにIEC61000-4-2/HBMの条件で30kVまで特性劣化が起こらないことがわかります。

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ESD耐量の評価

  • ESD条件:150pF/330ohm
  • 印加電圧:±2kV~30kV
  • 印加回数:各電圧10回印加 (接触放電)
  • Criteria:ΔV1mA/V1mA ≦ 10%
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※ESD印加前後のバリスタ電圧を測定し、劣化の有無を判定

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  • <A社製品>
A社製品
  • 2kV以上の印加で特性劣化あり
  • <AVRH10C220YT201MA8>
AVRH10C220YT201MA8
  • 30kVまでの印加で特性劣化なし
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バリスタメーカー車載用途品名バリスタ電圧 V1mA静電容量@C1kHz定格
A社LIN-6.8~10.2V175pFDC5.6V max.
TDKLINAVRH10C220YT201MA8  19~26V160~240pFDC16V
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結果
ESD耐量について

  • A社チップバリスタは2kVでバリスタ特性劣化が確認され、バリスタ電圧変化率は30kV印加前後で最大約50%程度の劣化が見られました。
  • TDKのチップバリスタは30kVまでの印加で特性劣化は確認されませんでした。
  • ESD耐量についてもTDKのチップバリスタの方が強く、より高い電圧、電気的不可に耐え得る実力があると言えます。
     
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1-2. Pr系材料使用の他社製チップバリスタとAVRHシリーズとの比較

下記の評価は、Pr系材料を使用した他社B社製チップバリスタとの比較です。Pr系材料はESD印可に対して安定しており、Bi系材料より特性が安定していることがわかります。しかし、B社製のチップバリスタは30kVでショート破壊されているものが見られます。

一方、AVRHシリーズは、多少の特性の変動がみられるものの、30kVまで特性を維持しています。

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ESD耐量の評価

  • ESD条件:150pF/330ohm
  • 印加電圧:±2kV~30kV
  • 印加回数:各電圧10回印加 (接触放電)
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※ESD印加前後のバリスタ電圧を測定し、劣化の有無を判定

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  • <B社製品>
B社製品

30kVの印可でショート破壊する個体あり

  • <AVRH10C270KT150NA8>
AVRH10C270KT150NA8

30kVまでの印可で特性劣化なし

  • <AVRH10C270KT350NA8>
AVRH10C270KT350NA8

30kVまでの印可で特性劣化なし

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バリスタメーカー品名バリスタ電圧 V1mA静電容量@C1kHz定格 (DC max.)
B社-21.6~32.4V16.5 typ.18V
TDKAVRH10C270KT150NA824~30V10.5~19.519V
TDKAVRH10C270KT350NA824~30V24.5~45.519V
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結果

  • B社の15pF品は±30kVの印加に対してショート破壊する個体がありました。
  • TDKの15pF品(AVRH10C270KT150NA8)および35pF品(AVRH10C270KT350NA8)は±30kVまでの印加に対して劣化はなく、安定した耐久性を示しております。

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2. 他社TVSダイオードとAVRHシリーズとの比較

車載通信向けに使用されるTVSダイオードはESD印可により30kVを耐えるものもありますが、30kVまでの間にショートするものも見られます。TVSダイオードの場合は、徐々に特性が動くことはあまりなく、ある電圧で突然ショート破壊されるケースが多いです。
ESD耐量の評価を行った結果の下記グラフから、AVRHシリーズはTVSダイオード(C社製品)と比較すると多少の特性の変化は見られますが、同程度のESD耐久性を持つことがわかります。

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ESD耐量の評価(バリスタ電圧・ツェナー電圧)

  • ESD条件:150pF/330ohm
  • 印加電圧:±2kV~30kV
  • 印加回数:各電圧10回印加 (接触放電)
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※ESD印加前後のバリスタ電圧・ツェナー電圧を測定し、劣化の有無を判定 合否判定基準:ΔV1mA/V1mA <±10%

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  • <C社製品>
C社製品

28kV時点でダイオードのショートを確認

  • <AVRH10C270KT350NA8>
AVRH10C270KT350NA8

30kVまでの印可で特性劣化なし

  • <AVRH10C270KT150NA8>
AVRH10C270KT150NA8

30kVまでの印可で特性劣化なし

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メーカー / 製品品名バリスタ / ツェナー電圧 V1mA静電容量@C1kHz定格 (DC max.)
C社 / ダイオード-26.2~32.0 V30 pF typ.24 V
TDK / チップバリスタAVRH10C270KT350NA824~30 V24.5~45.5 pF19 V
TDK / チップバリスタAVRH10C270KT150NA824~30 V10.5~19.5 pF19 V
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結果

  • AEC-Q200では25kVが最大レベルと位置付けられているため、最大レベルの耐久性を持つことがわかります。

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3. 基板面積の削減率 0603/1005サイズ(mm)

AVRHシリーズは1005サイズ(mm)になるため、TVSダイオードと比較すると実装面積を大幅に削減できることがわかります。約70~80%程度の削減が可能です。

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TVSダイオードとの実装面積比較
図3:TVSダイオードとの実装面積比較
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また、0603サイズ(mm)は従来の1005サイズ(mm)から約15%の実装面積の削減が可能です。TVSダイオードと比較した場合、最大85%の実装面積の削減が可能となります。

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TVSダイオードとの実装面積比較
図4:TVSダイオードとの実装面積比較
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アプリケーション

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「AVRH06C270KT200NA7」は、すでに以下のような用途で採用が進んでいます:
🚗 車載マイク:音声認識や通話機能におけるノイズ対策
📡 Telematics ECU:通信モジュールのESD保護により、安定したデータ送受信を実現

上記用途のほか、実装スペースが制約される機器におけるノイズ対策およびESD保護用途での採用が増えています。0603サイズ(mm)の小型フットプリントにより基板占有面積を抑えられるため、基板設計の自由度が高まり、多機能化・小型化の実現に貢献します。今後は、ADAS周辺モジュール、インフォテインメント、車内センサーネットワーク、電動車両の高密度制御基板などへの展開が見込まれます。

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Web初公開:量産開始前0603サイズ(mm)車載向けチップバリスタのデータシート&通信ライン用設計デザインガイド

フォームに必要事項をご入力のうえ、「ダウンロード」ボタンをクリックしていただくと、本ページ限定①0603サイズ(mm)の車載向けチップバリスタ(PDF版)のデータシートと②通信ライン用EMIフィルタとESD保護の製品組み合わせガイド資料を入手できます。
automotive-avrh06c270kt200na7_pdf-image.png

[FILE NAME]tdk-apn-automotive-0603-chip-varistor.zip

[CAMPAIGN NAME]dm_t130-automotive-0603-chip-varistor

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