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NTCサーミスタによるLEDフラッシュ基板の温度センシング

NTCサーミスタは温度上昇とともに抵抗値が急減する感熱抵抗素子です。 この性質を利用して、温度センサほか、過熱から回路を守る温度保護素子として利用されています。
NTCサーミスタは、発熱源により近い位置に搭載することで、熱源温度を正確にセンシングすることができます。 しかし基板サイズやパターンレイアウトなどの制約によって、熱源から離れた位置に実装しなければいけないケースもあります。
本記事では、このようなケースを想定し、LEDフラッシュ基板のLEDを熱源とし、LEDとNTCサーミスタの搭載位置に違いよる温度差を、発熱シミュレーションにより確認しました。 また、基板厚みの影響確認も行いましたので、結果をご紹介致します。

目的

NTCサーミスタは、熱源により近い位置に搭載することで、正確な熱源温度のセンシングが可能です。
しかし、基板サイズやパターンレイアウトなどの制約により、熱源から離れた位置に実装しなければいけないケースもあります。
このようなケースを想定し、発熱シミュレーションソフトウェア(PICLS、株式会社ソフトウェアクレイドル製)を用い、LEDフラッシュ基板のLEDを熱源とし、LEDとNTCサーミスタの搭載位置に違いよる温度差を確認します。 また、基板厚みの影響も確認します。

対象セット

スマートフォンのLEDフラッシュ基板の設計をベースに基板のシミュレーションモデルを作成します。

  • 基板寸法:6.5 x 5.0mm
  • LED寸法:1.0 x 1.0mm
  • LED出力:30mW x 4個
図1 対象セット
●基板外形と部品配置
●基板おもて面
●基板裏面
●基板設計
✔ 外形寸法 6.5 x 5.0mm
✔ 2層基板(基材 FR4)
✔ 基材熱伝導率 0.25W/mk
✔ パターン(Cu)厚み 35μm
✔ Cu熱伝導率 398W/mk

シミュレーション条件

シミュレーションの条件は以下の通りになります。

条件1:基板厚み

LEDフラッシュ基板は、おもて面のGNDパターンは、Viaを介して裏面に接続されています。
それ以外の部分にはFR4基板材が使われています。
基板が厚いほど基材の使用量が多くなります。
基板厚みは、0.4mmと1.6mmの2水準としました。

図2 シミュレーション条件1 【基板厚み】

条件2:NTCサーミスタ搭載位置

LEDフラッシュ基板の中央部に1mm形状のLEDが4個実装されています。
そのLEDから離れた位置に0402mm形状のNTCサーミスタを配置します。
NTCサーミスタの搭載位置は、LEDから 0.25mm、1.00mm、1.75mmとしました。

図3 シミュレーション条件2 【NTCサーミスタ搭載位置】

温度測定ポイント

発熱シミュレーション時の温度測定ポイントは、LED表面とNTCサーミスタ表面の4箇所としました。

図4 温度測定ポイント

シミュレーション結果

結果1:基板厚み 0.4mm

LED表面温度・・・92.5℃を示しました。
NTCサーミスタ表面温度・・・LEDからの距離が遠いほど低温を示しました。
NTCサーミスタ表面温度は、LED表面温度に対して温度差が生じました。
基板表面に温度分布があり、導体パターンと基板材にも温度差が生じました。

図5 各温度測定ポイントでのLED & NTCサーミスタ表面温度シミュレーション結果-1
  • ■条件1 基板厚み
  • 0.4mm
  • 1.6mm

結果2:基板厚み 1.6mm

LED表面温度・・・92.8℃を示しました。
NTCサーミスタ表面温度・・・LEDからの距離が遠いほど低温を示しました。
NTCサーミスタ表面温度は、LED表面温度に対して温度差が生じました。
基板表面に温度分布があり、導体パターンと基板材にも温度差が生じました。

図6 各温度測定ポイントでのLED & NTCサーミスタ表面温度シミュレーション結果-2
  • ■条件1 基板厚み
  • 0.4mm
  • 1.6mm

発熱シミュレーション結果まとめ

NTCサーミスタ搭載位置による温度差:
FR4の熱伝導率が0.25W/mk と低いため、LEDの熱が周囲に伝わりにくく、LEDと周囲の温度差が発生します。
LEDから離れるほど、LEDとNTCの温度差が大きくなります。

図7 NTCサーミスタ搭載位置による温度差

基板厚みの影響確認:
基板厚みが厚い場合、NTCは裏面パターンへ伝わった熱の影響を受けにくく、熱源との温度差が大きくなります。

図8 LEDとNTCサーミスタの表面温度差 (ΔTemperature)

Δtemperature:
LED表面温度とNTCサーミスタ表面温度の
温度差を示したものです。

例:
 83.1-92.8= -9.7℃

NTCサーミスタを使った温度センシング回路

基板材質:FR4では、熱源の熱が周囲に伝わりにくいため、熱源と周囲の温度差が発生します。また、熱源から離れるほど、熱源とNTC搭載位置での温度差が大きくなります。 温度センシング回路は、これらの現象を考慮し設計する必要があります。

部品選定の手順

LED表面温度が90℃を超えないように、温度センシングを行う場合:
1) 基板上の発熱源(LED)の位置を確認する。
2) NTCサーミスタの搭載位置を決める。
3) LED表面温度とNTC搭載位置での温度を確認する。 (LED温度90℃の時、NTC温度が80℃ となった場合を想定)
4) 80℃での出力特性が高精度になるよう、センシング回路を選定する。

図9 NTCサーミスタを使った温度センシング回路

■センシング回路

■出力電圧(Vout)特性

NTC温度:80℃での出力電圧(Vout)を確認する。
この場合、Voutが3.5V以上を示していれば、LED温度は90℃以下に維持されている。

結論

基板材質:FR4では、熱源の熱が周囲に伝わりにくいため、熱源と周囲の温度差が発生します。
また、熱源から離れるほど、熱源とNTC搭載位置での温度差が大きくなります。
NTC搭載位置での温度を確認し、出力特性が高精度になるよう、センシング回路を選定することで、NTCサーミスタを使った最適な回路が構築できます。
一般的なLEDフラッシュ(民生機器)/LEDヘッドライト(車載機器)向けのNTCサーミスタ推奨品番を次に示します。

■推奨品番
アプリケーション TDK品番 Case Size Resistance at 25℃ B Value 25/85℃
LEDフラッシュ(民生機器) NTCG044EF104FTBCX 0402mm 100kΩ 4293K
NTCG064EF104FTBX 0603mm 100kΩ 4308K
LEDヘッドライト(車載機器) NTCG104EF104FTDSX 1005mm 100kΩ 4308K
NTCG164KF104FTDS 1608mm 100kΩ 4485K

また、センシング回路とNTCサーミスタの選定は、TDK Web上に公開された、NTCサーミスタシミュレーションツールをご活用ください。