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自動車の電動化とセンサに与える影響

自動車メーカーが内燃エンジン(ICE)からハイブリッドやバッテリー駆動(xEVs)へのシフトを進めるのに伴い、自動車設計におけるセンサの活用範囲は拡大しています。IHS Markitの予測によると、xEVタイプの車種は2030年までに現在の335から約800まで増加すると考えられています。法律の制定、政府の振興策、充電インフラの整備により、今後xEVsへのシフトはさらに加速していくと思われます。各自動車メーカーは、新しいセンサ技術を自社設計に取り入れるため、比較的短期間で関連業界とのパートナーシップを構築することが求められています。TDKセンサは、統一されたポートフォリオを備え、車載アプリケーションに最適なセンサを包括的に取り揃えています。TDKセンサのポートフォリオは、従来のICEだけでなく、xEVsの拡張された要件にも対応しています。TDKは以下のセンサを取り扱っています。

温度
圧力
角度
速度
トルク
電流
マイクロフォン
モーション/慣性
ホールスイッチ
組み込みモーター制御ソリューション
ガス
接触
温度 圧力 角度 速度 トルク 電流 マイクロフォン モーション/慣性 ホールスイッチ 組み込みモーター
制御ソリューション
ガス 接触

自動車にはクローズドループフィードバック機構が設置されており、機械的、電子的、電気機械的な各種プロセスを監視・制御しています。個々または複合のセンサがこのようなシステムへの入力信号を生成し、監視対象のプロセスに関連するデータを提供します。このデータは、例えばホイール、車軸、モーターの場合、回転データとして提供されます。自動車には他にもフィードバックシステムがあり、温度、電流、圧力を制御しています。この場合も、特定のセンサまたは複合センサが、関連する測定データを提供します。

TMRセンサ
トンネル磁気抵抗効果(TMR)センサは自動車の様々な用途に使用されています。このセンサは、ステアリングホイールのトルク・角度、モーター・車軸の位置、eCaliper ブレーキシステム、ワイパーの作動などを検出するために使用できます。TMRセンサの TASシリーズは、高出力、低消費電力、良好な角度精度 、低い温度ドリフトといった優れた特徴を備えています。このシリーズのTMR素子は三層で構成され、バリア層(薄い絶縁体)で磁化固定層と磁化自由層を隔てる構造になっています。自由層の磁化方向は、外部磁界にさらされることにより変化します。2層の磁場が揃っているとき、素子の電気抵抗は小さくなりますが、 逆に2層の磁場が反対になると電気抵抗は大きくなります。

図1.TDK TASシリーズ TMR角度センサ

ホールセンサ
ホールセンサは、半導体内の電流に対して垂直な磁界を加えたときに半導体内で生じる電圧差を検出します。前述の方法により、ホールスイッチは測定された磁界の強さを、あらかじめ定義されたレベルまたはセンサにプログラム可能なレベルと比較します。このレベル(スイッチングポイント)を超えると、センサの出力が変化します。TDKのホールスイッチ・ファミリーでは、このレベルを設定できるオプションと固定されたオプションの2種類を提供しています。ホールスイッチを永久磁石と組み合わせることにより、 回転、速度、距離、圧力、角度、液面レベルなど、各種可変値の間接的な測定に使用できます。TDKの3D HAL®ピクセルセル技術は、多次元磁界測定用HAL 39 xyダイレクト・アングル・センサのコア技術です。このセンサは、外来磁界の影響を受けずに磁界を正確に測定することが可能です。この独特なコンセプトは ホールプレートの配列を基礎としています。例えば、プログラム可能な3D ポジションセンサHAL 3930は、内蔵のPWM/SENTまたはSPI インターフェースを特徴としています。

センサが極めて重要な役割を果たす分野が拡張された典型的な例として、xEVsのバッテリー、充電回路、駆動系部品の熱管理が挙げられます。電気自動車の最大航続距離を伸ばすため、駆動系の重要な部品は異なる温度範囲で動作する必要があります。バッテリーはインバータよりもずっと低い温度を必要とし、モーター内の磁石は高温では強度を失います。これらの部品を冷却するため、最大8つのLINバス制御バルブから冷却液が供給されます。これらのバルブは、組み込み型モーターコントローラーHVC 4223Fと3DポジションセンサHAL 3930の組み合わせによる制御が可能です。HVC 4223Fがアクチュエータを直接駆動する一方で、HAL 3900は制御ループを閉じるための位置フィードバックを提供します。

温度センサ
温度センサは、熱暴走やそれに伴う火災の危険を防ぐため、温度の変化を正確に分析し、迅速に反応することが求められます。BEVの運転時や充電時に発生する大電流は、コネクタ内の接触抵抗のわずかな増加によって内部に壊滅的な温度上昇が発生する場合と同様、重大な結果を招く可能性があります(Pv = I2 R)。 TDKは車載バッテリとインバータの間のコネクタに直接装着する温度センサを開発しました。この場所は、大電流が流れた場合に最も熱くなりやすいホットスポットです。

図2:xEV・DCコネクタ用耐高電圧温度センサ

NTCGシリーズおよびB57xxxV5 シリーズ のセンサは、堅牢で汎用性の高いハウジングに格納され、コネクタのコアの一部となるように設計されています。このセンサは、負温度係数(NTC)素子がセラミック製の外殻の中に取り付けられており、高い動作温度に対応し、高い電気絶縁性を実現しています。センサをこの位置に取り付けることにより、あらゆる温度変化に対する感知速度を最適化することができます。これにより、充電回路や駆動回路が素早く反応し、電流を制限して温度上昇を抑制することが可能になります。

圧力センサ
リチウムイオンセル内の圧力を測定するC43/C44 シリーズなどの圧力センサは、xEVバッテリ管理システム(BMS)において同様の重要な機能を果たします。同シリーズのセンサは、作動圧力を継続的に記録し、異常な圧力上昇があるとBMSに報告します。これらのセンサは、熱によるセル内の圧力上昇を検知して報告するため、温度センサだけの場合よりも迅速な応答が可能です。

自動運転への道

e-mobilityへの移行に伴って自動車設計が劇的に変化しているだけでなく、先進運転システム(ADAS)はさらに高いレベルの自動運転に向けて改善され、信頼性や機能性の面で進化しています。 このようなシステムの完全性において、センサが肝要な役割を果たしており、多くの場合センサフュージョンと呼ばれる複合式センサとして作動し、車両周囲の状況に関して信頼性が高く、正確で、包括的な情報をシステムに提供します。 これらのシステムは車両の振動による影響を受けるため、システムからの出力を電子的に安定化することが必要になります。IAM-20680などの慣性計測装置(IMU)を使用することにより、外部振動がシステムに与える影響を補正し、得られる結果を向上させることができます。各種センサ素子、LiDAR、レーダー、カメラによって生成される画像の質を向上させることにより、システムの精度を高めることが可能になります。また、IMUはV2V車車間通信システムやインフラに正確な位置情報を送ることができます。IMUを使用することにより、トンネル内や人口密集地での走行など、推測航法が必要とされる状況でも位置測定の精度を高めることが可能です。 このようなケースにおいて、従来のGPS/GNSS信号は利用できない、または信頼性が低い場合があります。

図3. IMU (慣性計測装置):IAM-20680

デジタルコックピットによる車内体験

コックピット内でセンサや電子機器を活用することにより、乗員の快適性、保護、安全性を向上させることができます。例えば、各ドライバーに合わせたシートの調整、降雨時におけるワイパーの自動作動、暗い場所やトンネル内でのライト自動点灯などがあります。高性能IMUにより、バックカメラの映像安定化、ドライビング体験の向上、ADASの精度向上が実現できます。各種センサをベースとしたこれらの先進的なシステムは、いずれもドライバーの気が散らないよう助け、集中力を高める働きをします。

ドライバーとマシンをつなぐヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)は変化しています。音声コマンド、ジェスチャーコントロール、触覚応答は、デジタルコックピットの新しいインターフェースの一部を構成しています。自動化レベルが一層進歩する中で、新テクノロジーの先導によって、車内での通知や制御のメカニズムが一新されようとしています。TDKのSmartAutomotive™シリーズは、自動車市場向けに特別に設計、テストされたMEMSモーションセンサとマイクロフォンの製品ラインナップです。MEMSマイクロフォンは、RANC(ロードノイズ・アクティブ・ノイズコントロール)により、ロードノイズを除去し、音声起動システムの信頼性を向上させます。

図4:車載用PiezoHapt™ タッチパネル

PiezoアクチュエータであるPowerHap™は、ドライバーに触感を伝えるもので、触覚(ハプティック)フィードバックとも呼ばれ、車載用タッチディスプレイでの採用が進んでいる技術です。インフォテインメント機能を操作する際、デジタルボタンなどのリアルな感触を向上させ、より信頼性の高い操作性を実現します。また、タッチテクノロジーはディスプレイを見るときにドライバーの注意力が散漫になる恐れがありますが、超音波センサを使用したジェスチャーコントロールもあります。

まとめ

現在の自動車設計において電子部品やセンサの果たす役割は急速に拡大しています。電気自動車では、充電/駆動系回路での電流や温度の制御が求められ、新たな領域でセンサが使用され始めています。

TDKでは、車載用アプリケーションに適したセンサのフルラインナップを提供するともに、自動車メーカーとTier 1サプライヤの実装を支援するためのガイダンスやサポートも提供しています。TDKは建設的なパートナーシップの構築に努めており、現行のセンサアプリケーションの性能向上や新しいアプリケーションのためのセンサ開発、またはその両方を考慮している皆さまからの問い合わせをお待ちしています。