車載向け48V電源システムのノイズ対策と部品ソリューション

ノイズ（EMC）リスクの増大

電圧が高くなることで、スイッチングノイズや伝導ノイズの発生レベルが上がり、従来以上に厳格なノイズ対策が必要となります。

部品選定・設計の複雑化

48V対応部品には高い定格電圧が求められます。さらに、コモンモード／ノーマルモード両方のノイズを抑制するため、複数段のフィルタや高性能部品の組み合わせが不可欠です。

システム全体の安全性・信頼性の確保

48Vは人体へのリスクも高まるため、短絡や過電流、過電圧保護など安全設計が必須となります。EMC対策と安全対策を両立し、車両全体の信頼性を維持することが求められます。

コスト・スペースへの影響

高耐圧部品や多段フィルタの採用により、部品コストや基板スペースが増加する可能性があります。一方で、ワイヤーハーネスの軽量化や配線コスト低減といったメリットもあるため、全体のバランスを考慮した設計が重要です。

12Vと車載48V電源システムの双方に対応可能なDC/DCコンバータを用いて伝導ノイズ（電圧法）を比較したところ、同じ基板・部品構成でも車載48V電源システムでは12Vに比べて高いノイズレベルが発生することが確認されました（図1参照）。これは、車載48V電源システムの高い入力電圧によってスイッチング時のエネルギーが増加し、ノイズ成分が増幅されるためです。特に低周波から高周波まで幅広い帯域でノイズレベルの差が顕著に現れ、車載48V電源システムを含む車載システム全体のEMC（電磁両立性）対策が重要な課題となっています。そのため、車載48V電源システムではフィルタによるノイズ対策や最適なノイズ制御ソリューションの導入が不可欠です。

図2は車載48V電源システムにおけるノイズ制御用フィルタの搭載例です。車載48V電源システムでは12Vに比べてノイズが増加するため、コモンモード・ノーマルモード両対応の複数段フィルタが効果的です。 表1に各フィルタとソリューションをまとめており、最適なフィルタ選定が車載48V電源システムの信頼性とEMC対策強化に貢献します。

市販のDC/DCコンバータを用いて、フィルタの有無によるノイズ抑制効果を検証しました。 入力電圧や負荷条件を設定し、フィルタ搭載時と非搭載時の伝導ノイズ（電圧法）を比較して、その効果を評価しています。

 

図３：伝導ノイズ電圧法 測定環境

■DCDCコンバータの条件 
・入力電圧：48V 
・出力電圧：12V 
・スイッチング周波数：400kHz 
・出力電流：7.2A  

■測定環境 
・測定場所：3m 電波暗室 
・周波数 : 150kHz-108MHz  

■測定項目 
・伝導ノイズ電圧法

コモンモード・ノーマルモード両対応の複数段フィルタを構成することで、車載48V電源システムのノイズを大幅に抑制できることが実測で確認できました。さらに、各フィルタや入力コンデンサに大容量MLCCを採用することで、ノイズ対策の効果を高めつつ、部品点数や実装スペースの削減も実現しています。これにより、効率的かつ信頼性の高いノイズ制御が可能となり、車載48V電源システムのEMC性能向上に大きく貢献します。

TDKでは48Vライン向けに様々な製品の提供が可能です。 各種部品には定格電圧の規定がございますので、マージンを十分に取った上でご使用をお願いいたします。 

■MLCC 定格電圧100V　車載グレード品

■パワーライン用コモンモードチョーク/フィルタ　車載グレード品

■パワーライン用インダクタ　車載グレード　48V電源システム向け推奨製品

■ESD/保護素子　車載グレード品

車載の48V電源システム化が進むことで、ノイズ制御の課題がより重要になっています。実測事例では、コモンモードチョークコイルやインダクタ、大容量MLCCを組み合わせた多段フィルタによって、広い周波数帯域でノイズを大幅に低減できることが確認されました。さらに、大容量MLCCの採用により、部品点数や実装スペースの削減も実現しています。

TDKは、車載48V電源システム向けの多彩なノイズ対策部品をはじめ、EMC試験サービスや回路設計のご提案など、幅広い技術サポートを提供しています。車載48V電源システムのノイズ対策でお困りの際は、最適な部品選定から評価・検証まで、トータルでご支援します。車載48V電源システムの信頼性向上やEMC性能強化に向けて、ぜひお気軽にお問い合わせください。