車載48V電源システムのCISPR25伝導エミッション対策事例
本ソリューションガイドでは、車載機器のEMC規格であるCISPR25に基づき、降圧コンバータで発生する伝導エミッションについて、入力電圧が12Vから48Vへ上昇した際の影響の検証結果と、48V入力条件におけるフィルタ部品によるノイズ対策事例を紹介します。48V電源システムのEMC対策に課題をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
車載48V電源システムの導入背景と課題
先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)の進展に伴い、車両内の電力需要が大幅に増加しています。従来の12V電源システムのままで供給電力を増やすためには、電流を増やす必要がありますが、電流の増加は電力損失の増大やワイヤーハーネスの重量の増加による車体重量の増加等の課題があります。
この課題を背景として、従来の12V電源システムに代わる「48V電源システム」の導入が進んでいます。48V電源システムは、従来の12V電源システムに対して、電圧を4倍に高めることで、同一電力の供給に必要な電流を1/4に低減することが可能です。これにより、電力損失の低減や、ワイヤーハーネスの細径化・軽量化を通じた航続距離の延伸といった大きなメリットが得られます。一方で、システム電圧の12Vから48Vへの上昇は、スイッチング電源における電圧変動(dV/dt)の増大に繋がり、発生するノイズレベルを押し上げる一因となるため、EMC対策の重要性がこれまで以上に高まることが予想されます。加えて、48Vラインで使用される部品は、従来よりも高い定格電圧が必要となるため、対応部品の選定が必要となります。
車載48V電源システムでのEMC対策と部品ソリューションについては以下の記事も併せてご参照ください。
車載向け48V電源システムのノイズ対策と部品ソリューション | ソリューションガイド | テックライブラリー | TDKプロダクトセンター
12V入力と48V入力における降圧コンバータの伝導エミッション比較
システム電圧の上昇がノイズに及ぼす影響を確認するため、12V入力と48V入力に対応した降圧コンバータを用いてノイズを比較評価しました。
評価はCISPR25規格に基づき、伝導エミッションについて電圧法と電流プローブ法の2つの方法にて実施しました。
EUT(試験体)
同期整流降圧コンバータ(スペクトラム拡散機能あり)
| 構成 | |
| 入力フィルタ | MLCC 4.7μF + L15μH + MLCC 4.7μF×2 |
| 入力コンデンサ | 電解コンデンサ 33μF |
| バイパスコンデンサ | MLCC 4.7μF×2 + 0.1μF×2 |
試験方法
- 規格:CISPR25
- 限度値:Class5
- 測定項目:伝導エミッション
- 電圧法 150kHz~108MHz
- 電流プローブ法 150kHz~245MHz
- 伝導エミッション 電圧法
- 伝導エミッション 電流プローブ法
動作条件
| 条件 | 入力 | 出力 | スイッチング周波数 |
|---|---|---|---|
| 条件① 12V入力 | 12V | 5V / 4A(20W) | 400kHz |
| 条件② 48V入力 | 48V | 12V / 1.67A(20W) | 400kHz |
試験結果
■条件① 12V入力
- 伝導エミッション 電圧法
- 伝導エミッション 電流プローブ法
■条件② 48V入力
- 伝導エミッション 電圧法
- 伝導エミッション 電流プローブ法
比較の結果、伝導エミッションの電圧法、電流プローブ法のいずれにおいても、入力電圧を従来の12Vから48Vへ高めると、ノイズレベルが上昇することを確認しました。これは、入力電圧の上昇に伴って、スイッチング時の電圧変動(dV/dt)が増大したことが一因と考えられます。このように、48V電源システムでは、従来の12V電源システムと比較してノイズレベルの増大が懸念されます。そのため、機器の誤動作防止や信頼性維持の観点から、EMC対策はこれまで以上に重要となります。
48V入力降圧コンバータのCISPR25伝導エミッション対策事例
48V電源システムでは従来の12V電源システムと比較して、ノイズレベルの増大が懸念されることから、48V入力の降圧コンバータのCISPR25伝導エミッションについて、フィルタ部品による対策検討を行いました。入力フィルタの構成は、以下の3パターンで比較評価を行いました。
- フィルタなし
- π型フィルタ
- π型フィルタ+電源用コモンモードフィルタ
EUT(試験体)
同期整流降圧コンバータ(スペクトラム拡散機能あり)
| 構成 | |
|---|---|
| 入力コンデンサ | 電解コンデンサ 33μF |
| バイパスコンデンサ | MLCC 4.7μF×2 + 0.1μF×2 |
試験方法
- 規格:CISPR25
- 限度値:Class5
- 測定項目:伝導エミッション 電圧法 150kHz~108MHz/電流プローブ法 150kHz~245MHz
動作条件
- 入力:48V
- 出力:12V / 5A (60W)
- スイッチング周波数:400kHz
入力フィルタ構成
■フィルタなし
- フィルタ構成
| 製品 | 特性 | P/N |
|---|---|---|
| - | - | - |
■Π型フィルタ
- フィルタ構成
| 製品 | 特性 | P/N |
|---|---|---|
| C1/C2/C3 | 4.7μF | CGA5L1X7R2A475K160AC |
| L1 | 15μH | SPM7054VC-150M-D |
■Π型フィルタ+コモンモードフィルタ
- フィルタ構成
| 製品 | 特性 | P/N |
|---|---|---|
| CMF | 700Ω | ACM55V-701-2PL-TL00 |
| C1/C2/C3 | 4.7μF | CGA5L1X7R2A475K160AC |
| L1 | 15μH | SPM7054VC-150M-D |
試験結果
■フィルタなし
- 伝導エミッション 電圧法
- 伝導エミッション 電流プローブ法
■Π型フィルタ
- 伝導エミッション 電圧法
- 伝導エミッション 電流プローブ法
■Π型フィルタ+コモンモードフィルタ
- 伝導エミッション 電圧法
- 伝導エミッション 電流プローブ法
フィルタなしの場合は、電圧法、電流プローブ法ともに限度値を超える非常に高いレベルのノイズが観測されましたが、π型フィルタを追加した場合、主に電圧法におけるAM帯(0.53~1.8MHz)のノイズを効果的に抑制できることが確認されました。しかし、π型フィルタを追加した後も、電圧法、電流プローブ法ともに70MHz以上の周波数帯域で依然として限度値を超える高いレベルのノイズが観測されました。この70MHz以上の帯域のノイズに対しては、さらに電源用コモンモードフィルタを追加することにより効果的に抑制できることが確認されました。この結果から、48V電源システムの伝導エミッションの対策には、π型フィルタと電源用コモンモードフィルタを組み合わせた多段構成の入力フィルタが有効であることが示されました。
※本測定結果は、特定の試験環境における一例です。最終製品におけるCISPR25規格への適合を保証するものではありません。最終的な適合性は、実使用条件にてご確認ください。
車載48Vライン向け製品ラインナップ
TDKでは48Vライン向けに様々な製品の提供が可能です。 各種部品には定格電圧の規定がございますので、マージンを十分に取った上でご使用をお願いいたします。
■MLCC 定格電圧100V 車載グレード品
| シリーズ | L x W 寸法 mm (EIA) | 通常電極 | 樹脂電極 | メガキャップ (多連型) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| CGA2* | 1.0 x 0.5 (0402) | 0.001 to 0.01 uF | Detail | ||||
| CGA3* | 1.6 x 0.8 (0603) | 0.001 to 0.1 uF | Detail | 0.001 to 0.1 uF | Detail | ||
| CGA4* | 2.0 x 1.25 (0805) | 0.047 to 2.2 uF | Detail | 0.001 to 1 uF | Detail | ||
| CGA5* | 3.2 x 1.6 (1206) | 0.047 to 4.7 uF | Detail | 0.1 to 2.2 uF | Detail | ||
| CGA6* CNA6* | 3.2 x 2.5 (1210) | 1.0 to 10 uF | Detail | 0.47 to 10 uF | Detail | ||
| CGA8* | 4.5 x 3.2 (1812) | 1.5 to 2.2 uF | Detail | ||||
| CGA9* CKG57* CAA57* | 5.7 x 5.0 (2220) | 3.3 to 15 uF | Detail | 10 uF | Detail | 1.0 to 47 uF | Detail |
■パワーライン用コモンモードチョーク/フィルタ 車載グレード品
| 品番 | L x W x H 寸法 mm | コモンモード Z | 直流抵抗 | 定格電流 | 定格電圧 | 絶縁抵抗 |
| |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| at 100MHz | 85℃ | 105℃ | 125℃ | |||||||
| (Ω) min. | (Ω) typ. | (mΩ) max. | (A) max. | (V) max. | (MΩ) max. | |||||
| ACT32P-102-2P-TL01 | 3.2x2.5x2.5 | 750 | 1000 | 150 | 0.8 | 0.8 | 0.7 | 80 | 10 | Detail |
| ACM55V-701-2PL-TL00 | 5.5x5.5x3.5 | 500 | 700 | 17 | 4.7 | 4 | 3.1 | 80 | 10 | Detail |
| ACM70V-701-2PL-TL00 | 7.0x6.0x3.5 | 500 | 700 | 15 | 5.5 | 4.8 | 4 | 80 | 10 | Detail |
| ACM90V-701-2PL-TL00 | 9.0x7.0x4.5 | 500 | 700 | 10 | 8 | 7 | 5 | 80 | 10 | Detail |
| ACM90V-152-2PL-TL00 | 1100 | 1500 | 16 | 5.4 | 4.5 | 3.6 | 80 | 10 | Detail | |
| ACM12V-351-2PL-TL00 | 12.0x11.0x6.0 | 240 | 350 | 2.9 | 16 | 14 | 10 | 80 | 10 | Detail |
| ACM12V-701-2PL-TL00 | 500 | 700 | 6 | 11 | 11 | 8 | 80 | 10 | Detail | |
| ACM12V-172-2PL-TL00 | 1200 | 1700 | 12 | 7 | 6 | 4.8 | 80 | 10 | Detail | |
■パワーライン用インダクタ 車載グレード 48V電源システム向け推奨製品
| シリーズ | L x W 寸法 (mm) | T (Max.) (mm) | 定格電圧 (V) max. | 直流抵抗 (mΩ) typ. | インダクタンス (μH) | 定格電流(Isat) (A) typ. (ΔL = -30%) | 定格電流(Itemp.) (A) typ. (ΔT = 40℃) | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SPM7054VC* | 7.5 x 7.0 | 5.4 | 80 | 4.3 to 334 | 1.0 to 100 | 3.4 to 26.8 | 1.8 to 16.2 | Detail |
| SPM10065VC* | 10.5 x 10.0 | 6.5 | 80 | 2.3 to 114 | 1.0 to 68 | 7.3 to 49.8 | 3.4 to 23.0 | Detail |
| SPM12565VC* | 13.0 x 12.5 | 6.5 | 120 | 2.1 to 30.4 | 1.0 to 22 | 14.5 to 58.9 | 6.9 to 25.4 | Detail |
■ESD/保護素子 車載グレード品
品番 | L x W 寸法 mm (EIA) | 許容回路電圧 (V) | バリスタ電圧 (V) | 静電容量 (pF) | サージ電流 (8/20us) (A) | エネルギー耐量 (10/100us) (J) | ESD耐久性 150pF/330Ω 接触 (kV) | 使用温度範囲 (℃) |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| AVRM1608C720KT750M | 1.6 x 0.8 (0603) | 53Max | 72 (64.8 to 79.2) | 75 (60 to 90) | 40 | 0.1 | ±25 | -55 to +150 | Detail |
| AVRM2012C720KT201M | 2.0 x 1.25 (0805) | 53Max | 72 (64.8 to 79.2) | 200 (160 to 240) | 100 | 0.3 | ±25 | -55 to +150 | Detail |
まとめ:車載48V電源システムのEMC対策とTDKのトータルサポート
車載48V電源システムは、電力損失の低減による高効率化などのメリットから、今後の普及拡大が期待されますが、ノイズレベルの増大が懸念され、EMC対策がこれまで以上に重要になることが予想されます。実測事例では、インダクタ、MLCC、電源用コモンモードフィルタを組み合わせた多段構成の入力フィルタにより、低域から高域までの広い周波数範囲でノイズを効果的に抑制できることが確認されました。
TDKでは、車載48V電源システムに適したEMC対策部品を幅広くラインナップしています。さらに、EMC測定サービスや回路設計の提案、ノイズ対策支援など、包括的な技術サポートも提供しています。部品選定から評価・検証に至るまでトータルでご支援いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。



