アプリケーションノート モーター/インバーター回路の構成例
⾃動⾞の電動化が進むにつれてモータージェネレータの需要が増えていきます。モーターとインバータとの⼀体化の流れもあり、⼩型、⾼耐熱、耐振動要求も⾼くなっており、部品の⾼信頼性化が望まれています。また、インバータ回路のスイッチング素子には配線のインダクタンスによって⼤きなサージ電圧が発⽣する場合があり、配線やスナバーコンデンサによる対策が不可⽋です。同様にノイズの対策が重要になってきます。目次
モーター/発電機回路構成例
モーターや発電機を駆動するために直流を交流にするインバータ回路が使われています。インバータ回路はIGBTなどの半導体スイッチが使われ、最近ではSiCなどの⾼速素⼦を使い、⾼周波化による⼩型化が進んできています。⼤型モータの駆動には400V以上電圧が必要になり、インバータ回路の前段には昇圧回路が使われ、複数のディスクリートチップを組み合わせたモジュールを使う構成が⼀般的に使われています。モーターが駆動したときには、急峻な電流が流れ、昇圧回路とインバータをつなぐ⾼圧ラインは安定化する必要があり、DC LINKと呼ばれるコンデンサが使われています。
DC Link/Snubberに適したコンデンサ
SiC、Ganなどの⾼速素⼦の採⽤が進み、インバータの⼩型が進みます。高速スイッチングにより、配線のインダクタンスによって⼤きなサージ電圧が発⽣する場合があり、配線やスナバーコンデンサによる対策が不可⽋です。
フィルムコンデンサについて
インバータ回路の入力には、安定したDC電圧が必要となります。モーターは低周波で駆動するため、そのリプル分を吸収するのに比較的大きな容量が必要となります。フィルムコンデンサーは許容リプル電流が大きく、電圧を安定化するの適しています。
高出力対応 B3267x シリーズ |
高密度 B3277x シリーズ |
高温度対応 B3277xP シリーズ |
高信頼性 B3277xM シリーズ |
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誘電体 | 金属化ポリプロピレン (MKP) | 金属化ポリプロピレン (MKP) | 金属化ポリプロピレン (MKP) | 金属化ポリプロピレン (MKP) |
Vdc | 300, 450, 630, 780, 875 | 450, 800, 1100, 1300 | 630, 700, 840 | 450~1600 |
静電容量範囲 / μF | 0.47 to 270 | 1.5 to 480 | 1.0 to 50 | 1.5 to 170 |
動作温度 / ℃ | 105 Max. | 105 Max. | 125 Max. | 105 Max. |
リード線間隔 / mm | 27.5 to 52.5 | 27.5 to 52.5 | 27.5 to 52.5 | 27.5 to 52.5 |
10kHでの電流処理 / A | 5 to 108 | 5 to 79.5 | 3 to 25 | 5 to 36.5 |
気候テスト条件 | 40℃ / 93% RH | 40℃ / 93% RH | 40℃ / 93% RH定格 60℃ / 93% RH 定格 |
60℃ / 95% RH定格 85℃ / 85% RH 定格 |
56日 | 56日 | 1000時間 @ 40℃ 500時間 @ 60℃ |
1000時間 @ 60℃ 1000時間 @ 60℃ |
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AEC-Q200対応 | - | - | 〇 | 〇 |
CeraLink®のスナバー回路への適用事例
モーターが駆動するときに急峻な電流が流れます。急峻な電流の変化は大きなリンギング電圧を発生させ、半導体素子の耐圧劣化、ノイズの発生につながります。CeralinkはSMDでありながら高耐圧高容量を実現しています。SMDの利点をいかしパターンの最適化を図れ、配線の寄生インダクタンス小さくできます。また、素子自身ESLが小さいのでリンギング電圧の発生を小さくすることが可能となります。
IGBT/FET駆動用トランスについて
モーター駆動⽤インバータ回路や⼤電⼒のコンバータにはブリッジ回路が使われます。ブリッジ回路にはHigh side(⾼圧)Low side(低圧)の半導体スイッチで構成され、半導体スイッチを駆動するために安定電源が必要です。特にHigh side側の電圧が⾼く、 ⾃動⾞のモーターでは800Vまで使われ、Low side側とは絶縁された電源が必要となっており、⼩型で絶縁電圧が高いトランスが使われています。また、半導体スイッチは複数個使われ、ゲート電圧がバラツクと素⼦間で信頼性が不均⼀になるため、ゲート駆動電圧の均等化が望まれています。
トランス種類 | 分散型トランス | 集中型トランス |
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回路図 | ||
出力数 | 1 ~ 2 | 3 ~ 6 |
メリット | 小型によるレイアウト自由度高い 重量が軽いため耐振動に有利 |
トータルコストで分散型より安い |
デメリット | 出力あたりのコストが集中型より高い | 形状が大きくレイアウト制約出やすい 分散型に比べ、各NS巻線とNFの結合ばらつきが出やすい 重量が重く耐振動に不利 コプラナリティ精度が分散型に比べると不利 |
製品 |
VGT10SEE-200S2A5 VGT12EEM-200S1A4 VGT15SEFD-200S1A4 VGT15EFD-200S3A6 |
VGT15SEFD-250S4A7 VGT22EPC-200S6A12 |
IGBT/FET駆動用トランス使用事例
大電力のインバータや昇圧回路にはIPM(Intelligent Power Module)が使われます。IPMはPower MOS FETやIGBTなどのパワー素子と駆動回路、自己保護機能を組み込んだ電力用半導体素子です。
IPMを駆動するための電源電圧は15V±10%が要求されています。電力素子との絶縁をとるためにトランスが使われますが、トランスの特性が悪いと電圧安定度が悪くなります。また、絶縁の信頼性を確保するために使用される線材も重要になり、高温化での信頼性を確保した線材を使っています。スペースやコスト重視であれば集中型トランス、配置の自由度と電圧の安定性重視であれば分散型トランスが使われます。